「措置入院」精神病棟の日々(34)

2017/05/07

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「措置入院」精神病棟の日々(34)
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“シーチン”修一 2.0

「本(含新聞、除マンガ/雑誌)は読むけれどテレビはあまり見ないなあ」を読書派、「テレビは見るけれど本はあまり読まないなあ」をテレビ派とすれば、読書派とテレビ派は拮抗しているようだ。しかし読書派は年々少なくなっており、47%ほどと半数を切っているようだ(参考:2014年文化庁による16歳以上の3000人調査)。

読書派でも小生のように「テレビをほとんど見ない」(2011/3/11の大震災以降、6年間で60分ほどだから「まったく見ない」と言っていい)という極端な人は、全体の極一部、多分2、3%くらいかもしれず、一方で読書をほとんどしない人もそれくらいいるのではないか。もっとも痴呆症の母は本やテレビその他(季節にも!)にまったく関心がなくなったが、それは別の話。本稿では健常者について書く。

現役時代に接した人たちの多くはテレビを話題にしなかった。小生の皮膚感覚で言えば、メインストリームの人々(全体の20%)はテレビはニュースとか論説は見ることはあっても、娯楽番組はまず見ない。

その代わりに日経を中心に内外の新聞から情報を得ることが多かったと思う。テレビからまともな情報はまず得られず、「お前ビジネスマンだろ、それなら最低でも日経ぐらいは読んでおけよな」という空気だった。

逆に言えば、80%の人々はテレビからメインの情報を得ているのだろうが、「タケシが、サンマが、トコロがどーしたこーした」といったジャンク情報ばかりだから、おしゃべりのネタにはなっても仕事や生活にはおそらく何の効用もないのではないか。

《経済広報センター2013年8月調査:生活者が一般的な社会の動きを知ろうとするときに利用する情報源としては、「テレビ」(84%)と「新聞」(82%)がそれぞれ8割を超える。「インターネット」も79%に上り、この3つが情報源の柱となっている》

講談社の創業者である野間清治は「おもしろくて、ためになる」を社是(キャッチフレーズ)にし、それはナント今でも引き継がれているが、テレビは基本的に「ただ面白いだけ」だろう。ためになるどころか「浮薄の普及」(斎藤緑雨)「一億総白痴化」(大宅壮一)そのものだと小生は思っている。

小生の尊敬する山本夏彦翁は幽冥界(さかい)を異にする病床にあって、付き添いの娘さんに「テレビを消してくれ」と小さな声で言ったと、息子の伊吾氏が書いていた。翁は「銭形平次」と「水戸黄門」がお気に入りだったようだが、「結末がいつも同じだから心が休まる」のか、BGMとして流していたのかもしれない。

テレビの想定視聴者が中学2年生だということは何回も紹介しているが、だからテレビをいくら見たところで中2以上にはならない、だから時間の無駄。

そんなことを思うのは多くて20%の人々で、圧倒的大多数の80%の人々はそんなことはまったく思わず、「面白ければそれでよし」と今夜もゲラゲラ笑ったりするのだろう、「えーっ、ウソッ!オッカシイ!」と、時には随喜の涙を流しながら。それとも腹をよじって痛くなったのか?

民のカマドから炊煙が上がり、ゲラゲラ笑い声が聞こえるのが「治まる御代」ならば、「この世は生きるに値しない」などと世をはかなんで死ぬ人がいるのは当然のことかもしれない。それは哲学的な選択なのだが、統計上は「病気による自殺」になっているのだろう。ナンカナーという感じだが、所詮この世はこんなもの、と諦めないと精神を病む。

承前「心理検査報告書」から。【 】は小生の感想。

<実施した心理検査:2)WAIS-?>

*検査所見

2時間以上にわたる検査でしたが、どの問題にも時間をかけながら集中して取り組まれていました。

全体としてIQは120(平均は100)と、高い能力をもっていることが示されています。ただし、グラフ(略)を見てわかるとおり、能力間にバラつきが見られ、得意不得意の差が激しいこともうかがえます。

言語表現力、理解力は突出しており、言葉を用いて自分の考えを伝えたり、あるいは物事を理解するなども得意ですし、知識や常識も豊富です。そうした知識、説明力の高さゆえに、言葉で説明を求める課題では、たびたび話がスケールの大きいものに拡大する様子も見られました。

こうした言語理解と比較して、処理速度は50以上下回る不得意分野といえるでしょう。物事をスピーディーにこなす力は他の能力に比してかなり低く、この点についてはアルコールや病状等による能力の低下が生じている可能性も推察されます。

実際、処理速度以外の課題、たとえば積み木を用いて模様を作る課題でも、時間が間に合わないことでの失点がほとんどでした。

このように、言語的には多くのことを理解し、また表現できる方であるものの、実際の作業においての処理速度は、本人の理解に追い付かないため、“頭ではわかっているのにスムーズにこなせない”という不全感につながりやすいことが予想されます。

時間をかければ理解できても、限られた時間の中で適切に理解、判断していく必要が出てくる現実状況では、能力が発揮されにくくなると思われます。

*今後のために
自分のペースで考えたり、判断することができる環境では、かなり高い能力を発揮される方と考えられます。そのためにはあまり急かされたりすることのない環境が好ましいでしょう。

また、言語表現力は非常に高い方ですので、時には“端的にまとめて話す”ということを意識すると、より相手に伝わりやすく、また相互にとってよいコミュニケーションができるかもしれません。

以上のとおりご報告致します。

【WAIS-?は成人用のウェクスラー式知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale、通称ウェイスの第3版)のこと。「言語性IQと動作性IQといった測定概念を用いて、個人の得意不得意の測定を試みたという点が大きな特徴」だそうだ。IQは100が並、120が秀才、150は天才か狂人らしい。

小生の言語性IQは130でかなり上位だが、記者が仕事なのだから当たり前である。動作性IQは103で、これは並。ところが処理速度は75とガクンと落ちている。

これには思い当たるフシがある。小生が会話、話しが苦手なのは「長考」する癖があるからで(囲碁では16時間、将棋では5時間という長考記録がある)、そこで会話はストップし、3時間、6時間は考えることはしばしばだ(ちょっと考えて解が見つからないときは「そのうちいいアイディアが浮かぶだろう」と思考停止にするのだが、脳の無意識層で勝手に考えてくれるので長考はさほどというかまったく疲れない)。

結局、朝カミサンに訊かれたことを夕方になって「うん、やっぱりアレはこうした方がいいんじゃないか」などと答えると、カミサンは「え、何のこと?」と、彼女は質問したことも覚えていないということになる。これはしょっちゅうだ。

思考回路がそういう風になっているから処理速度はすこぶる遅く、当意即妙とは全くいかないが、いいこともある。何しろ無意識層が処理してくれるから一度に3つ4つのテーマを与えることができ、3〜6時間後にはどういうわけか一挙に解が「はい、お待ちどおさま」と出てくるからとても便利である。

記者は何本も原稿を抱えているからいろいろ考えなくてはならないのだが、締め切りに合わせて一本の記事に猛烈に集中するから、他の記事について考えるゆとりはない。それに代わって無意識層があれこれ考えて、顧客が満足し、自分も納得し、一番楽な近道(小生はそれらを「ショートカット」と呼んでいた)を示してくれるわけだ。

今は専業主夫だが、小さなこと、たとえば朝の炊事が終わった後、パイプ煙草、コーヒー、キャラメル、ガム、トイレ、音楽、洗濯干し・・・自分の現在位置、手間暇などを考えてどれからすべきかを決める。

これは無意識層を動かすほどの問題ではないけれど、「緊急性があるのはトイレで、たばことコーヒーで一休みし、ガムと音楽を楽しみながら洗濯物を干す、最後にキャラメルだな、などと決める。性格だから今さら変える気にはならない。

結局、即断即決とはいかず、処理速度は遅くなる、ために間に合わずに粗相をしたりする。わが街の知能障害のお兄さんは歩行中に時々立ち止まり、両足をそろえて左足から歩き出す。多分そうしないと心が晴れないのだろう。

「無くて七癖」、読者諸兄姉に問う、「♪あんたのお癖は何アンなんの」、トニー谷、か・・・古い話だから今では話題にもならないが、先日、カミサンはCD屋で上記のお兄さんから初めて声をかけられたそうだ、「ジャズが好きなの?」と(小生へのお土産を探していた)。「あなたは?」と聞けば「舟木一夫」。

お兄さんは40歳ほどだから、ときどき見かける母親は僕ら夫婦より少し上、つまり「高校三年生」の世代だ。お母さんの影響で彼も「♪クラス仲間は いつまでも」と歌っているのだろう。彼は小学2年生、ボクは高校2年生、「♪道はそれぞれ 別れても」知的障害という点では同じだな】(つづく)2017/5/7






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創刊日:2017-02-04  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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