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「措置入院」精神病棟の日々(20)

2017/03/30

「措置入院」精神病棟の日々(20)
“シーチン”修一 2.0

「またやっちゃった・・・」

JR駅からたった150メートル、街の中心を東西に流れる清流は両岸を桜並木に飾られ、桜が開花する春には住民はもとより近隣の人々で賑わう。かつては駅前通りには書店が二つ、古書店が一つあったが、今はすべて廃業してしまい、文化の香りがまったくしない街にとって、清流は住民の自慢の種、誇り、憩いの場、吟行の散歩道であった。

商店街のSさんが嘆く。「この街は暮らすには最高だが、商売にはまったく不向きだよ」

北は多摩川に、南は多摩丘陵に遮られ、東と西にはJRと交差する小田急線、東急電鉄の駅があり、そこにはそれなりに繁華な小都会があるし、30分も乗ればデパートの林立する町田、新宿、渋谷、横浜などにも行けるから、地元で買うのはほとんどが食品くらいだ。Sさんの嘆きは商店会の嘆きでもある。

その清流と桜並木が街の発展を阻害しているとして、古からの地主が代々議員を務めている町議会と町長が「清流の暗渠化(地下に水路を造る)と桜並木の整備(事実上の伐採)によりショッピングセンターやオフィスビルを誘致し、街の発展を促す再開発計画」を決議したのは昨年の夏だった。

「桜堤保存会」「多摩の自然を守る会」の人々などが反対の声を上げたが、いつしか切り崩しにあったのだろう、小生が酒乱発狂で精神病院から退院したこの春の今では誰も表向きには反対を唱えなくなった。

ペットロスの影響もあり、小生は愛犬とともに毎日のように散歩した桜堤が消えることを悲しみ、やがて密室で再開発計画を進めてきた町長や議長、そしてゼネコンの走狗となって議員や有力者(皆大地主)を買収あるいは懐柔してきた地元のM建設社長を激しく憎むようになっていった。

彼らが再開発を云々すること自体が矛盾している。彼ら地主が駅周辺を占拠し、建物が朽ち果てようが放置したままで、デベロッパーが土地を売ってくれ、貸してくれと何十年もアプローチしたものの、かたくなに節税のために拒否し続けていたのだ。中には門柱に「不動産関係者立入禁止」の看板を掲げている旧家もある。

それが急に「再開発」に乗り気になったのは、わが街の不動産ミニバブルが影響している。そのお陰で路線価が上がり、今が売り時、貸し時、しかも大手デベロッパーが「自己資金ゼロでOK、30年間、土地を活用してビルやマンションを建てれば弊社が30年間借り切ります、賃貸料保証」と煽りに煽ったからだろう。

その先鞭をつけたのはわが家の本家である。小生は記者時代、旅行産業という限られた世界ではあるとはいえ、凄まじい数の人間に接したが、自分より頭がいい奴、「コイツには勝てないな」と思ったのは10人ほどだろう。彼らは知識、知恵(智謀、先見の明を含む)、度胸(山っ気、断行力)という3つの面でとても歯が立たないという人なのだが、そのうち2人は東大出(東大出はバカが多いが、たまには優秀でまともな人もいるということ)、同じく2人は本家の惣領(そうりょう・総領)3代目と4代目である。

その4人は必ずしもいい人というわけではなく、特に本家の3代目(小生の従兄。小生の父の兄=小生にとっては伯父さんだが、伯父さんも優秀な起業家だったものの時代の先を行きすぎ、資金繰りが上手くいかずに50歳ほどで自殺した。小生の母方の一番仲良かった従兄も10年ほど前に自殺しているが、小生は両親からそのマイナス遺伝子を受け継いでいるようだ)と4代目(3代目の長男、税理士資格保持)はともに外面(そとづら)は悪い(小生は苦手だし、2人とも愛嬌がない)が、実に利に聡く、慎重すぎるほど慎重だが起業家精神にあふれ、小生が知っているだけでマンション2棟、大駐車場2か所を経営し、数日前にはわが街で初めてオフィスビルを竣工した。

街の大地主たちは3代目がマンション経営に成功すると皆マンションを建てた。皆モノマネばかり。今回の再開発計画も、もしかしたら本家が発信源かもしれない。

いずれにしても「町長と議長は絶対許さない、絶対白状させる」と決意し、父が二重金庫の奥深くに隠していたU.S.M1カービン自動小銃(父が米軍座間キャンプの警備員(Security Guard)、憲兵隊補助員(Military Police)をしていた時、軍需物資の横流しもしていたから、その際にブローニング拳銃とともに護身用に入手したのだろう。当時、キャンプ座間周辺では黒人兵の強姦事件が多く、母によるとわが家も襲われそうになったそうだ。黒人兵用の慰安所が整備されていなかったのかもしれない。なお父は金庫の番号を跡取りの小生にだけは教えた)を持って朝食時に桜堤に面した町長宅を襲撃、バラバラっと天井を連射し、全員を床に伏せさせると、町長に議長を電話で呼び出させ、2人揃ってから家人を解放するや高塀の屋敷は機動隊に囲まれた。

2人を後ろ手錠と腰縄で拘束し、ビンタをくらわしてから今度は床に連射して脅し、再開発計画の一部始終を白状させた。“越後屋”は菩提寺の庫裏新築工事で味をしめたM建設だったが、背景は分からなかった。地価の高騰とビル/マンション経営を促進するためで、特に農地転用が公共事業の場合は有利になるからだという。

小生は金嬉老事件(寸又峡事件)を真似て屋敷内でマスコミ相手の記者会見を開き、“お代官様”にすべてを喋らせたが、テレビでは臨時ニュースとして報じられていた。海千山千の記者の質問攻撃で、贈収賄事件も発覚した。ここまでやれば「再開発計画の白紙撤回」という所期の目的は達成されるだろうと、越後屋の後頭部から銃口を下げたとたんに記者を装った警察官4人が覆いかぶさってきた。1人が叫んだ、「監禁、器物損壊、傷害で容疑者逮捕、11時28分!」と叫んだ。

小生は手錠、腰縄で拘束され、頭にジャンパーを被せられたときは「俺は顔を隠すようなことはしていない、正々堂々と出ていく。シートで隠すのも止めろ、それがダメなら舌を噛むぞ!」と言うと、ジャンパーははずされ、シートも地面に置かれた。道路へ出ると桜堤は人出でごった返していた。彼らは小生に拍手を贈ってくれ、そして女性は小さな女児に「あのお爺さんが街を救ってくれたのよ、忘れちゃだめよ」と教えていた・・・

今日もまた一日が始まるなあ、今日も鉄格子とにらめっこか・・・「またやっちゃった・・・ビョーキだな・・・でも今回はカミサンは許してくれるかもしれない・・・ああ、このまま眠っていたい・・・」

目を開けると、「ン? 鉄格子が見当たらない・・・ここはどこか・・・あっ、俺の部屋だ、夢だったのだ、ああ、夢で本当に良かった」、小生はホッとし、同時にぐったりした。発狂と入院は小生のトラウマになっているようだ。病棟日記から。

<【2016/11/16の続き】10:00〜11:00、初めてのOT(作業療法)で、自由工房にてプラ製のクワガタを作る。細かい作業でとても面白く、いろいろな人が見物に来たので言葉を交わした。OTは月水金の週3日やることにしたが、作業療法師から「目標を設定しましょう」と言われたので、「人付き合いの練習をする」にした。

おしゃべり苦手で、「孤高の人」「寡黙な考える人」を目指していた小生が「人付き合いの練習」だなんて、苦笑するしかない。そのうち、眠っているとき以外は喋りまくっていた松岡洋右みたいになるのか・・・「静かな晩年」は夢のまた夢になりそうで、複雑な気持ちだ。

夕食後“ボス”とその友人“ポール”とビートルズをテーマにおしゃべり。彼らは40歳前後だが、世代を越えて語り合える流行歌はビートルズくらいではないか。やはりビートルズはすごいと思う。“ポール”はビートルズの曲をカバーするライブが仕事のようだ。こんなにお喋りしたのは生まれて初めてだ。「人付き合いの練習」初日は大成功か。(つづく)2017/3/30






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創刊日:2017-02-04  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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