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「措置入院」精神病棟の日々(6)

2017/02/25

「措置入院」精神病棟の日々(6)
“シーチン”修一 2.0

今冬は天気が良過ぎて冬物衣料の売れ行きが悪いらしい。わが家ではオデンとか鍋物を食べる気分にはならないから、紀文は「いい気分」ではないだろう。暖か過ぎるのだ。バカ過ぎる小生には頭を冷やす氷雨が似合うに違いない。

この「過ぎる」というのはあまり良くない。美人過ぎる、頭が良過ぎる(ともに嫉妬されたり嫌われたりする)、人が良過ぎる(騙されたり裏切られたりする)、金持過ぎる(人間不信になったり子育てを間違う)・・・

波乱万丈、I'm Banjo Haran, nice to meet you! 何か人名みたいだが、エキセントリックな小生が収容された3F急性期(閉鎖)病棟の患者は15人。老人は6人(うち女1人)、あとの9人(男4人、女5人)は20〜30代。ヂヂババが多数派で「50歳は若い」とされる普通の病院とはずいぶん違う。若いのに精神病・・・気の毒という他ない。

何しろ「精神病は基本的に完治しない」のだ。市の精神保健福祉センター職員にそう言うと最初はびっくりし、そして苦笑いしていた。措置入院させたばかりの患者からそんなことを言われたのは初めてだろう。これが残念ながら真実で、入院患者の半分以上、多分3分の2は「常連さん」だ。伊豆半島天城の山に囲まれた「浄蓮の滝」は結構だが、「常連の患者」はいただけない。

ナースは「常連さん、いらっしゃい」とも「毎度おおきに」とも言わない。なんと言うか。「なんでこんなになるまで放っておいたのよ、早く治療を受けていればこれほど悪くはならなかったのに!まったくもーっ」。

そうなじられている男は32、3歳あたりか。普通なら最前線でバンバン仕事をし、寝る間を惜しんで遊んでいるだろうに、彼は背を丸め、足もヨボヨボしている。風呂を利用してはいるが、上手く洗えないのだろう、非常に汗臭い。手が震えて薬も上手く飲めずにこぼしたり・・・家族からも見離されているのだろう、面会者はいなかった。そういう患者は少なくない。

若いのに人生 The End、まったく残酷過ぎる。

見るからに統合失調症(統失、精神分裂病)の2人はともに男。1人は数秒ごとに顔の表情が怒、痛、喜に変わり、まるで仮面(マスク)を瞬時に取り替えて百面相を客に披露する中国の大道芸「変面」みたいだった。通称“マスクマン”。

彼は30代後半。周囲を注意して見るという能力も衰えているようで、椅子の足にしょっちゅう引っ掛かり転んでいた。お盆を持ったまま転んだときは皆びっくりしていたが、すぐに静かになった。他者を心配する余裕なんて皆ないのだ、自分のことで頭がいっぱいなのである。

もう1人の統失は30歳前後で、ときどき凄まじい憎悪の表情をし、何だか恐ろしいから誰も近寄らない。通称“ゾーオ”。ほぼ壊れている“ゾーオ”や“マスクマン”が接客業に就いたらまず間違いなく客足が減るだろう。

通称“オトーサン”は78歳ほどか。いかにも「職人してました」という渋い顔つきをしており、ホールで同じテーブルに着いていたので「もしかしたら職人さん?」と話掛けるといろいろ語ってくれた。

――ご出身は?

熊本出身で地元の高校を出てJTの工場に勤めていたんだけれどね、仕事は機械の保守点検。その後大阪の工場に移って、定年退職したんだけれど、横浜の娘から「一緒に暮らそう」と言われて同居した。でもね、娘の連れ合い、つまり婿さんと折り合いが悪くてね、結局はこうなっちゃって・・・

――婿さんと喧嘩?

うん・・・誰にも言わないで欲しいんだけれど口論して・・・

――売り言葉に買い言葉?

そうそう、それ・・・で、俺が短刀をかざすと婿が言うんだ、「刺せるのかよ、やれるもんならやってみろ」って・・・でブスリとやっちゃった。措置入院でアチコチの病院を渡り歩いて、着いたところがここよ・・・

――僕は酒でしくじったのだけれど、刺したときは酔っていたの?

いや、もともと酒はやらないから・・・まったくバカなことをやってしまった・・・

“オトーサン”は大いに反省するのだが、娘さんたちは“オトーサン”につくづくウンザリさせられたのだろう、一度も見舞いに来なかったし、病院側も小生のような犯罪未遂者と実際に傷害事件&殺人未遂の犯罪者とは明確な線引きをし、外面は好々爺然としていても閉鎖病棟から出さなかった。

“オトーサン”はやり過ぎたのだ。なかなか難しいが、エキセントリックもほどほどにしないと「波乱万丈過ぎ」で無惨な晩年になってしまう。小生は入院中に「これからは“借りてきた猫”でいくしかないなあ」と思い続けていたが、いつしか自分の意思と異なる場面になると「ニャー」とつぶやくようになって自分でもハッとする。鳴き&泣き入りの晩年・・・困ったニャー。(つづく)2017/2/25


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創刊日:2017-02-04  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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