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「措置入院」精神病棟の日々(4)

発行日:2/23

「措置入院」精神病棟の日々(4)
“シーチン”修一 2.0

通常の入院は本人・家族の意思による「任意入院」で、公的補助があるとはいえ医療費負担が重いが、「措置入院」は法定伝染病同様に公権力による強制的な入院であるから基本的に無料か低額負担である。

一方で「措置入院」とは治療方法はまったく同じだが、本人・家族が医療費を負担する「医療保護入院」というのがある。再び「精神保健福祉法の知識」から引用する。

<「医療保護入院」:病状的な問題で患者本人に入院治療契約を交わすだけの理解力、同意能力がない場合に限って、家族等の保護者・扶養義務者の同意によって成立する入院です。つまり、入院治療契約を病院と交わすのは家族等の保護者・扶養義務者ということになります。

これは、場合によっては患者の自由意志に反して強制的に入院治療に入らせてしまうことになるために、対象となる患者が本当に精神疾患のために入院の必要があるのか? 入院治療契約を交わすだけの理解力・同意能力がないのか? といったことを法律によって定められた「精神保健指定医」が診断しなくてはいけないことになっています。

つまり、医療保護入院となる条件としては、

・精神疾患のために入院治療が必要な状態であること。
・しかし病状のために、それをしっかり理解し自ら入院契約に同意する能力が現時点ではないこと。
・それらのことが精神保健指定医の診察の結果確認され、確かに医療保護入院が必要であると診断されること。
・家族等保護者あるいは扶養義務者の書面による同意があること>(以上)

医療保護入院だからといって待遇が措置入院よりいいということはなく、症状によって拘束・拘禁もあるから、患者にとっては苦痛であることは免れない。

実は小生が措置入院であったのはたった1日で、2日目からは家族と医師の同意で医療保護入院になった。なぜか。

社会保障費が増加する一方なので、公権力(国・自治体)は医療費を削りたい。患者・家族に負担能力があるのなら「できる限り負担してくれ」と、小生が公務員ならそう思う。「親方日の丸と頼るなよ、自分が国にどう貢献できるかを考えよ」とかケネディは言ったそうだが、良識ある堅気は大体それを納得する。

病院にとっては「公的であろうが私的であろうが、治療費を払ってくれれば措置入院でも医療保護入院でも“患者様”」なのだから、どちらでも良さそうなものだが、公権力から「できる限り措置入院を減らせ」と指導されているだろうから、それに沿って家族を説得する、「医療保護入院にしてくれ」と。

普通の営利企業は行政指導に盾突くことはしない、できない、したくない。魚心あれば水心、持ちつ持たれつ、いずこの業界も「護送船団方式」が大好きであり、クロネコヤマトや出光は「村八分」というイジメに遭ってもひるまなかった例外的な成功例で、普通の企業ができることではない。みんな所管官庁が「右向け右」と指導すれば、それに従う。運輸省航空局と観光部担当記者の小生は、業界人から「霞が関のメインストリートは『(官僚の)おっしゃる通り』と言うんだよ」と聞いたことがある。

病院としては、措置入院は“新患集め”としては大いに歓迎だろうが、そうした場合、相模原殺傷事件のように、患者が退院後に事件を起こそうものなら「なぜ退院させたのか」と社会的非難を浴びるリスクはある。また、措置入院=家族負担ゼロだと、これ幸いと患者を“捨てる”家族が増える、つまり治療に当たって家族からの協力が得られないために治癒できないというケースも増えてしまいかねない。

結局、「措置入院を減らそう、医療保護入院を増やそう」ということで官民の利益は一致するわけだ。

かくして小生も医療保護入院になったのだが、江戸時代の牢屋には「借牢」という、牢屋を賃借する制度があり、松陰先生は形式上、実父からの申し入れで野山獄に送られた。まるで医療保護入院そっくりなのだが、松陰先生は名を残し、今なお敬愛されているが、小生は汚名を残し、妻子から軽侮されているという大きな違いがある。

どこでどう間違えたのか・・・今さら悔やんでも“too late”、人知れず苦笑いして「ま、これが天命か」と納得するしかない。(つづく)2017/2/23

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