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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.114

2009/12/03

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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
産学連携による雇用の創出
[今月のレポート]
休載
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  ■今月の一言■
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産学連携による雇用の創出

1.フィンランドとイギリスの事例

フィンランドは1990年代初頭に深刻な経済危機に陥ったが、10年と
いう短い期間に産業構造の転換に成功し、2002年には世界競争力ラ
ンキングで第2位に位置付けられるまでになった。その成功の背景に
は、世界的な通信機器メーカーとなったノキア社の飛躍と、フィンランド
各地にみられるクラスターの存在があると指摘されている。ここでは、
山崎朗編の「クラスター戦略」(有斐閣選書)等の資料から、フィンラン
ドのビジネス・インキュベーションを取り上げてみたい。

フィンランドでは、1994年にCOE(Centre of Expertise)プログラムとい
う地域産業振興のための施策を導入した。この施策は、それぞれの地
域の有するポテンシャルを最大限活用し、どの産業を振興するのか、
産業振興をいかなる方法によって行うべきかを地域自らが主体的に考
え、実践に移していくという新しい考え方にもとづいた、地域アイデンテ
ィ重視の施策である。

この施策では、フィンランド全体で14の地域ごとに、重点的に振興する
1〜5の産業・技術分野が選択されている。それぞれの地域で、地域の
行政、大学、産業界、産業支援組織等の関係者からなる協議会が設け
られ、そこで重点産業分野が決定される。どの機関がCOEプログラム
を行うかといった運営面も協議会で決定されている。
フィンランドにおける産学の協力関係が大きく転換したのは、1990年代
初頭の深刻な経済危機がある。この時期、大学の予算を大幅に削減す
る一方で、産学共同研究を促進すべく、TEKES(技術庁)の産学協同プ
ロジェクトの予算は大幅に増設された。そこで、当初大学予算の削減に
憤慨していた大学関係者も企業と共同研究によって、研究費の確保を
図ろうとするようになった。

「クラスター戦略」によると、フィンランドにおいては、大学のある町には
必ずといってよいほどサイエンス・パークがあり、そこにはインキュベー
タがいる。日本のインキュベータと異なり、フィンランドのインキュベータ
では、ソフト面のサービスが充実しており、とくに入居者がさまざまなア
ドバイスを受けることができる、インキュベーション・マネージャー機能
が存在している。フィンランドのインキュベータ入居のインセンティブは
、このインキュベーション・マネージャーのコーディネートであり、大学
との連携、政府の補助金獲得の支援や、経営に関する助言といった
ソフト面のサービスを受けやすくなっている。

政府、自治体等は、インキュベータの設立時には、SITRA(研究開発基
金)、株式会社への出資という形態で支援を行っているが、インキュベ
ータの運営に関しては、補助金、税制上の恩恵を与えていない。一方
で、インキュベータ入居者向けの政府の補助金制度が充実しており、
資金の無いスタートアップ企業であっても充実したインキュベーション
・サービスを受けることができる。

「クラスター戦略」が取り上げているオウル市の事例では、1982年にサ
イエンス・パークとインキュベータを運営するテクノポリス社がオウル市、
SITRA、民間企業等の出資により設立されている。テクノポリス社は
COEプログラムも担当しており、スタートアップ企業への支援のほか、
産学あるいは企業と企業を結ぶネットワーキングの役割を果たしている。

オウル地域のCOEプログラムにおいては、選定した5つの産業・技術
分野のうち3つが通信技術、エレクトロニクス、ソフトウエアとIT関連分
野である。1990年に約2,500人だったオウル市におけるハイテク産業へ
の雇用者数は、IT産業の発展により、94年頃から急増し、2000年には
約1万2000人にまで増加しているとのことである。

松島克守他著の「クラスター形成による「地域新生のデザイン」」(東大
総研)によると、先にあげたテクノポリス社は元来、技術やビジネス面
で人的支援を行うことを役割としていたが、現在ではオウル地域にお
ける企業支援全般をリードする役割を担っており、過去にも多くの企業
をテクノポリスから生んでいる。また、1994年に、テクノポリス社の子
会社として設立されたインキュベータであるオウルテック社では、事業
の開発、シード段階における金融支援などによって起業家を支援して
いる。

「地域新生のデザイン」ではイギリスの地域クラスター形成についても
述べているので、簡単に紹介したい。これはフィンランドのCOEをモデ
ルとしたもので、地域における大学や産業などのリソースの賦存状況
に基づきクラスター化に向けた地域戦略の立案を促しつつ産業クラス
ターの効果的な形成を目指すものである。地域ごとに重点化する技術
分野を割り振ることによって、開発技術支援の重複ロスを軽減する効
果も期待されている。

1997年以降、労働党政権が推進する地方分権政策により、地域主導
型の経済開発への取組みが活発化した。1998年、環境、運輸、地域
開発の各省は、地域開発局法令に基づき、9地域ごとに地方開発公社
(RDA)を設立することを決定した。

法律に定められたRDAの目的は、「地域企業の事業効率を向上させ、
地域への投資を推進し、競争力増強、雇用促進、職業技能の開発・応
用の推進、持続的発展」へ寄与することである。また、その具体的な活
動内容は、「地域戦略の策定、地域の復興、政府による各地域の競争
力改善政策の推進、地域内投資の促進、雇用市場のニーズに合わせ
た技能訓練を内容とする地域別スキル・アクション・プランの策定、欧
州資本の誘致における主導的役割」とされている。

1999年4月以降、各RDAは地域のパートナーと精力的に協議を重ね、
1999年10月にそれぞれの地域戦略を政府に提示した。副首相、蔵相、
教育雇用相および貿易産業省は、政府がRDA予算を弾力化し、2003
年をめどに財源を各省合同予算に一本化することに合意しており、RDA
代表をメンバーに加えた各省庁の合同作業グループによって準備を進
行している。クラスター形成にあたるRDAの具体的活動は、概ね、
(1)ビジネスの振興、(2)地域再開発、(3)スキルの強化および雇用対策、
(4)インフラ整備、(5)イベント誘致、観光戦略の実施などによるイメージ
の向上の5つに分類できるとしている。
 
2.両国の事例から見たクラスター形成の特徴

先に紹介した、フィンランドと英国の事例に見られるクラスター形成の
特徴として、次の点があげられよう。

1)地方分権の推進による、地域経済圏の戦略目標の明確化と重点化
2)国の関連各省の連携による地域開発公社への支援と、各省合同予
算の一本化
3)地域開発や雇用促進を視野に入れた、戦略的で総合的な振興政策
4)戦略目標に向けた産学官の意識の共有と協働文化の形成
5)サイエンス・パーク、ベンチャーキャピタル、インキュベータなど多角
的な政策リソースの用意
6)インキュベータ入居企業に対する、インキュベーション・サービス利
用などへの直接的な補助金制度
7)大学、公的研究機関(VTT)から地元企業への技術移転

また、イギリスの地域開発公社(RDA)の具体的な活動のうち、地域再
開発、スキルの強化および雇用対策、インフラ整備は、文部科学省、
通商産業省などの各省が個別に行っている縦割り行政の、日本のク
ラスター戦略には見られないものである。最終的な目的として、地域開
発や雇用促進を視野に入れた戦略的で総合的な振興策を、各省の枠
組みを超えた合同予算に一本化して実施している点が注目される。

民社党新政府の大臣のインタビューで、農林水産大臣が農業製品の
付加価値の向上を、国土交通大臣が観光産業の振興を、環境大臣が
25%CO2削減の目標に向けた新しいライフスタイルの開発や普及
について述べている。この場合も、金太郎飴のように同じような地域
を日本中に展開しようとしても効果的ではない。各地域の有するポテ
ンシャルを最大限に活用した、地域主導型の経済開発への取組が、
今こそ必要とされているのではないだろうか。

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 ■今月のレポート■
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休載

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