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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.102

2008/12/04

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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
農業経営におけるIT活用
[今月のレポート]
休載
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  ■今月の一言■
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農業経営におけるIT活用

1.新福青果とワタミファーム

朝日新聞のエンターテイメントサイト「どらく」のフロントランナーインタ
ビューに、新福青果の新福秀秋社長の紹介が載っていた。
http://doraku.asahi.com/hito/runner/071221_02.html

新福青果は、宮崎県都城市にある農業生産法人で、都城を中心に82
ヘクタールの農地でサトイモやゴボウなどの根菜類を中心に、野菜を
大規模に栽培(有期栽培を含む)している。さらに、宮崎県、鹿児島県
の契約農家600戸以上から集荷し、これらの野菜は生協などに直接
販売している。青果と加工品約60種類を作り、年商は約15億円。
グループで80人が働く<http://www.shinpukuseika.co.jp/>。

その規模の大きさだけでなく、日本の農業では珍しい情報技術(IT)を
使ったハイテク経営が特徴だ。作業内容、肥料、農薬などの情報を農
場の携帯用パソコンから入力。データはリアルタイムでサーバーに蓄
積され、迅速に外部に提供できる仕組みになっている。詳細なデータ
を蓄積することで、農場ごとに生産情報から原価計算まで管理できる
システムになっている。

このように生産履歴を管理することで、例えば農薬や肥料の使用状況
が正確に分かり、有機野菜を売り込みやすくなる。原価も管理でき、
価格交渉をする際の武器にもなった。また、スタッフの労務管理に役立
つほか、過去の作業実績が見られるため、スタッフの生産技術の標準
化も一定程度可能になる。

消費者は商品のQRコード(二次元バーコード)から携帯で同社ウエブ
サイトにアクセスし使用農薬や肥料などを知ることができる。こうした生
産情報をウエブサイトで紹介している商品は珍しくなくなったが、同社
は農場から出荷までをシステム化し生産情報の透明性を高めている。

秀秋氏は農家の次男に生まれ繊維メーカーに勤めていたが、脱サラを
決め、両親の農業を手伝うことにした。約2ヘクタールと地元ではほど
ほどの規模の家族経営だったが、妻の助力を得て原価管理を徹底、経
営の基礎をつくった。ITはその青果の一つだ。農協を通さない販路を
広げようと、産直やユーザーとの直接取引を始めた。現在、全国の大型
小売店、生協やレストランなど約70店に売っている。

インタビューで、ITを使った経営について、「従来の農業では、自分で
作物の希望価格も示せず、売値は市場任せになる。大規模な経営も
難しい。企業として経営するにはコスト計算が欠かせない。そこでITを
持ち込んだのです」「データの記録で、畑ごとの収支、決算ができます。
その後、前年のデータをもとに価格交渉ができることがわかりました。
納入前に契約すれば、毎年の作柄などに左右されにくく、安定した収
入につながります」「また、肥料や農薬のデータを資料として添付した
り、詳しい情報をホームページ上で公開したりするようになり、食の流
通経路を明視するトレーサビリティが可能になりました。こうした「副産
物」が信用となり、大型小売店などとの直接取引が実現しました」と云
っている。

同社では、GAP認証を取得すべく、各管理農地の審査が行われており、
ホームページで報告されている報告によると、まもなく認証されるとの
こと。農産物は生産段階において、各種の病原微生物や、重金属汚染、
残留農薬、カビ毒、異物混入などの危害が生じる可能性がある。これら
の危害要因を分析して、栽培から収穫までの工程だけでなく、洗浄、選
果、保管、出荷、輸送にいたるまでの各段階で対策を講じ、管理する
方法をとりまとめたものが、GAP(Good Agricultural Practice)といわれ
る適正農業規範。

IT活用といえば、大企業の株式会社が土地利用型農業に参入した事
例として注目されているワタミの子会社ワタミファームは、機動的な規
模拡大・多角化と共に、従来難しいとされていた有機農産物の低コスト
大量生産を強みとしている<農業中金総合研究所の調査研究、
http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/r0505in1.pdf>。

生産マニュアルはあるが地域ごとにアレンジしており、また外食のマネ
ージメントシステムにのっとり、週単位で損益分析や栽培計画を行い、
また人事管理の徹底により人件費をコスト全体の約35%に抑えてい
るという。有機農業をビジネス化するためにコストを下げていく生産管
理や物流コスト節約の仕組みが、ワタミファームのビジネスモデルの核
心部分となっているとのことである。

2.営農支援ソフト

中・小規模の農業における生産管理システムには、アグサネットの「サ
クサク」<http://www.agsunet.jp/sakusaku.html>、グットテーブルズの
「畑のあしあと」<http://www.yamaken.org/ashiato/>、造園情報シス
テムの「営農支援システム」<http://www.elips.co.jp/>、ソリマチの
「農業日誌」<http://www.sorimachi.co.jp/products/farmer/nisshi/
などがある。ここでは、この四つのソフトをメーカーの資料を引用して簡
単に紹介するが、畑のあしあとは公式サイトからダウンロードでき、他
の三者には体験版CDがあるので、ご自分で評価していただきたい。

「サクサク」は、日報形式で入力できる、工程は品目ごとに作成できる、
工程に必要な資材をあらかじめ計画できる、1つの画面で工程・圃場・
労務・機械・資材の管理ができる、GAP手法に対応している、などの特
徴を持つ営農管理ソフトである。

使い方は、まず作業に必要なデータを入力する。品目、権利者、生産
者、圃場配置、工程情報、作付パターンと作付計画、作業担当者、資
材情報などである。工程情報では、作物ごとに年間の工程を入力する
が、工程に必要な資材をあらかじめ計画できる。作付計画では地図上
の作業で面積や作付品目を設定する。次に作業計画は、人材や機械
の性能から「1日」の作業量を、圃場や地図上で選ぶことにより設定す
る。そして、作業予定を立てる日から労務工程記録を開き、作業内容
と作業する圃場を選ぶ、担当者と使用する機材を入力する、指示書を
作成する。

作業実績は、その日の作業を記録し、計画の確認と見直しをする。作
業実績をたてずに実施した場合でも、作業実績を入力できる。手順は、
作業実績を入力する日から労務工程記録を開いてパターンを選ぶ、
作業内容と作業した圃場を選ぶ、作業した人と作業内容にチェックを
入れて作業時間を入力する。

「畑のあしあとfor W−ZERO3」は、農業へのIT導入コンサルティン
グなどを行っている(株)グットテーブルズが公開している、中小規模農
家向けの栽培管理システムを構築できるフリーソフトである。自宅や事
務所に設置するPC(パソコン)と、畑に持って行き、実施した農作業を
その場で記録するPDA(情報端末)を組み合わせて使用する。農作業
の行程を細かく記録することで農作物のトレ−サビリティを向上し、農
業の効率化を図る“GAP”に対応した各種書類を作成できる。現在、本
ソフトの専用ページからダウンロードできる。

最初にPC上で、圃場の区切り、作業を行う人、作付けする品目・品種、
作業の内容、使用する肥料・農薬などを定義する。農薬の定義では、
農水省の農薬登録情報を利用し、登録番号から農薬の詳細を呼び出
す。定義が完了したら、PCとW−ZERO3(Windows Mobileを搭載し
たPDA)を接続して同期させる。後は、実際に作業を行う人が圃場に
出て作業しながら、「何時に、誰が、どこで、何を、どうした」ということを
W−ZERO3に記録していく。こうして記録したデータを、自宅PCに接
続して同期すると、PC内のデータベースにバックアップが作成される。
この記録が蓄積されて、畑や品目ごとの履歴として検索・表示・出力す
ることが可能になる。

「営農支援システム」は、栽培履歴(作業日誌)の記録・保管義務を最
小限の時間とコストで実現させ、さらにトレーサビリティ等のための栽
培履歴の管理や、出荷情報等の作業支援への資料提供を実現する
ために開発された。本システムでは、複数作物が同時平行的に栽培
され、その初期段階から履歴管理開始し、計画、播種〜出荷段階で
発生する複数作物に対する各種作業を作業日報として登録する。そ
の結果、「作物名」を指定すると、圃場の付帯情報、農薬防除の日付
・種類・散布量、施肥の日付・施肥量、播種・移植・定植の経過等を記
載した栽培履歴表(栽培日誌)を検索・印字することができる。

また、作業支援機能では、出荷作業に必要な「出荷指示書、品揃え」
票、出荷実績表、納品書、請求書」などを作成し、出荷作業の支援を
行う。これら一連の作業を行うことで、自動的に品目毎の在庫残を算
出、「出荷情報」の作業日誌への記載などの関連情報が自動的にリン
クする。

提供されている機能は、勤務記録、作業記録(栽培日誌)、作付け情
報、出荷作業支援、農薬・肥料情報、環境情報、資料作成、人事給与
などである。「作業記録」は、作付け計画で登録された作物名を選択す
ることで、系統化された構造で記録される。各作業の詳細は、画面に
表示された索引を選択して、その作物の圃場、播種、定植、農薬散布、
施肥、収穫、出荷などの各詳細を登録する。「作付情報」は、「作付基
本情報」「月間作業日誌」「作業日程の照会」からなっており、「作付基
本情報」は、作付け計画の段階でその内容を登録する。「農薬情報」は、
農水省の農薬情報システムを取り込み、検索を行う機能である。

「農業日誌」は、農程管理、作業日誌、販売管理、集計、などの機能を
持つソフト。農程管理では、作業の予定と実績、気象情報や栽培管理
の記録と集計ができる。作業日誌では、天気、作業内容、労働時間、
機械稼働時間、資材投下量など、毎日の作業管理が行える。データを
もとに、「作業日誌集計」や「栽培履歴書」を作成できる。出荷時にどの
ような農薬を使ったかなどの栽培履歴書を添付することができるので、
生産物の信頼性・安全性を高めるトレーサビリティ対策になる。

販売管理は、JA、市場、卸売、産直など、あらゆる販売形態に対応。
「受注、商品発送、請求書発行、入金」という一連の流れを管理する。
集計は、作業日誌で入力された情報を集計し、表やグラフを作成。作
業日誌の入力データから、日給と時給の給与計算を行うことも可能。

3.IT活用の極意

日経情報ストラテジーの2008年3月号の特集で、「IT活用の極意は
3つの力にあり」をして、課題創造力、戦略実行力、巻き込み力をあげ
ていた。IT(情報技術)を活用するうえでも、短期的に成果の出る省力
化だけでなく、事業変革や構造改革を加速させる戦略的な仕組みを
作り変えなければ、競走優位の実現に貢献できなくなってきたが、企
業調査から、好成績を実現し成果を出している企業のCIO(最高情報
責任者)は、「自社の戦略に関する理解」や「IT技術の方向性に関する
理解」などに長けているとの結果が出たというのである。

従来はCIOの重要スキルと思われた「IT用語の理解」「プログラミング
の理解・経験」などは業績との相関が低く、全社を見渡し、戦略的視点
で問題意識を持っているかどうかが重要だとしている。そして、堀場製
作所、松下電器産業など7社への取材を通じて、変革を円滑に進める
ための極意として、課題創造力、戦略実行力、巻き込み力が浮かび上
がったとして解説している。

農業や中小企業分野においても、新福青果やワタミの事例にあるよう
に、原価管理の徹底やユーザーとの直接取引きによる物流コストの削
減、有機栽培における肥料や農薬データの提示によるトレーサビリティ
の実現など、事業変革や構造改革を加速させる戦略的視点で問題意
識を持っているかどうかが重要なのであろう。

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