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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.079

2007/01/04

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   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
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★2007/01/04 No.079    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
安全設計の道標
[今月のレポート]
世界に格差をばら撒いたグローバリズムを正す
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  ■今月の一言■
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安全設計の道標

1.回転ドア死亡事故の「真相」

日経ものづくり誌の2005年5月号の「事故は語る」に、「回転ドア死亡
事故の「真相」、進歩の過程で希釈された安全思想」と題した記事が載
っていた。2004年3月26日、当時6歳の男児が自動回転ドアに頭を
挟まれ死亡した。これを受け、工学院大学教授で「失敗学の提唱者で
もある畑村洋太郎氏が、「真の事故原因を究明しなければ、同じ事故
が繰り返される。しかし、責任を追及するための調査では、関係者が
すべてを語ることは期待できないので、再発防止に役立つ情報が得
られない。純粋に事故原因究明を目的とした調査も必要」と考え、個人
で「ドアプロジェクト」を設立した。

こうした同氏の呼びかけに多くの企業や個人が応じ、プロジェクトに参
加した。事故の当事者である森ビルと三和タジマもメンバーに名を連
ねる。そして、死亡事故から約1年が経過した2005年3月27日、実
験結果や調査の報告と事故防止策の討論を兼ねた「ドアプロジェクト
シンポジウム〜ドアに潜む危険と安全への提言〜」を開催した。

プロジェクトで調査したのは自動回転ドアだけではない。社会に広く普
及するさまざまなドアを取り上げ、安全性を検証した。調査対象はエレ
ベータ、自動スライドドアなど、多岐にわたる。安全性の指標はドアに
挟まれた際に生じる荷重(はさみ力)とした。

挟み力の測定には「予察実験」「精密定量化実験」「ダミー人形実験」と
いう三つの段階を踏んだ。まずは予察実験として丸めた新聞紙やペッ
トボトル、一定加重で壊れる木材を使い、荷重の値や方向を推測した。
次に、精密定量化実験として3軸力センサ内臓の荷重計を使い、実際
に挟み力を測定した。この時、衝突速度も計っている。

精密定量化実験で判明したのは常識を覆す意外な事実だった。多くの
自動ドアは挟み力が1000N以下だったのに対し、手動ドアは挟み力が
1000Nを越えていたのだ。衝突速度についても、ほとんどの自動ドア
は速度があまり出ない設計になっているが、自動回転ドアだけがほか
の自動ドアに比べても速く、挟み力も8000N以上と非常に大きい。プ
ロジェクトでは、子供の頭部が破壊される挟み力がおよそ1000N、大
人はおよそ2000Nと仮定していた。

一連の実験から、衝突速度を低く抑えるなど安全設計が徹底されてい
るはずの自動ドアで、回転ドアだけが安全設計思想から外れているこ
とが判明した。畑村氏は、「2.7tという非常に重いものがあれほど高速
で動いていたこと自体、不思議でならない。過去から現在に至るまで
の技術の系譜を探る必要を感じる」と述べている。なお、プロジェクト
の調査で、その欧州の回転ドアは質量が約0.9tということが分かった。
日本製は比重が約3倍のステンレス鋼を使用していた。

自動ドアの設計に携わる技術者が参加したプロジェクトで判明した、自
動ドアに関する暗黙知がある。これを工学院大学の畑村氏は「10J則」
と名付けた。ほとんどの自動ドアは、運動エネルギが10J以下になるよ
う設計されているという。

2.製品安全リスクマトリックス

先に紹介した、回転ドア事故の原因究明記事を改めて読んだのは、同
じ日経ものづくり誌の2005年11月号に、安全設計の道標「R−Map」
手法という記事が載っており、そこで、回転ドア死亡事故を例に、開発
者がR−Mapの概要を解説していた記事を見たからである。製品の安
全設計は永遠の課題であり、これを効率よく実現するには、リスクを正
しく評価し最適な対策を講じる必要がある。R−Mapは、製品のリスク
を評価し、社会的に受け入れられないリスクに対して対策レベルを明
確化すると同時に、対策後のリスクに関してはその安全レベルを定量
化できる特徴があるとのこと。

基本になるのはリスク評価で、その際に使用するのが横軸に「危害の
程度」を、縦軸に「発生頻度」を取った「PS(Product safety:製品安全)
リスクマトリックスである。このPSマトリックスの特徴は、家電製品や
電気機器に多い発煙や火災のリスクを考慮し、横軸の危害の程度に
「発煙」「火災」といった項目を入れた点である。

危害の程度は、0:無傷、1:軽微、2:中程度、3:重大、4:致命的。
また発生頻度は、0:考えられない、1:まず起こり得ない、2:起こりそう
にない、3:時々発生する、4:しばしば発生する、5:頻発する。

PSマトリックスでは安全レベルに応じて「A」「B」「C」という三つの領域
を提示している。C領域は「危害の程度や発生頻度は低く無視できると
考えられるリスク領域で、流通する製品は基本的にC領域まで下げて
いく。右斜め情報にあるA領域は「受け入れられない(耐えられない)リ
スク領域」で、死亡や重傷、あるいは後遺症を生じるような障害の発生
確率が社会的に受け入れられないレベル。A領域とC領域に挟まれた
B領域は「危険/効用基準、この領域のリスクが残ることは許されない
が、危険と効用をてんびんに掛けた場合に効用が上回るもの、危険の
対策のコストが大きすぎて実現性がないものについては許容される領
域。A領域からC領域まで下げるには、3から5セグ分レベルを低減す
る必要がある。

安全対策レベルは、
(1)リスク除去(本質安全:製品自身でリスク低減):運動などのエネル
ギや放射性物質などが及ぼす影響を、人体に危害を加えるレベル以
下にする。これを実施すれば最大4セグ分リスクを低減。

(2)リスク低減(本質安全:製品自身でリスク低減):a.発生頻度の低減
(故障やミスをしても直ちに危険状態に至らない設計等)、b.危害・障害
の程度の低減(使用/発生エネルギの低減等)。最大3セグ分リスクを
低減。

(3)安全装置・防護装置:危険状態を早期に検出して遮断する等。最大2
セグ分リスクを低減。
(4)警報:警報装置作動など。最大1セグ分リスクを低減。
(5)取扱説明書、注意銘板。最大1セグ分リスクを低減。
(6)対策せずともよい

報告では、若手技術者たちに、問題の自動回転ドアにいかなる追加対
策を実施すべきかを検討させた結果も紹介しており、接触センサの追
加、回転エネルギを減少するために軽量化するなどの対策によるリス
ク低減効果を評価していた。技術的な分野が異なるためか、提案する
対策やその評価結果にはいささか疑問があり、安易な考えを助長させ
ることがないように、慎重な運用が要求されるが、このリスク評価手法
そのものは興味深い。

前述のドアプロジェクトの報告では、10J則のほか、羽根が何かと接触
したら羽根が待避するなどの本質的な安全を確保するための改良も提
案していた。回転ドアのように人体に重大な危険を与えない安全性の
高い別方式の開閉ドアがすでに実用化されている分野で、それでも新
たに回転ドアを製品化するというケースでは、リスクの完全な除去、ま
たは非常にレベルの高いリスク低減対策がなされた場合にのみ、社会
的に受け入れられる製品になるといえるではないだろうか。

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 ■今月のレポート■
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世界に格差をばら撒いたグローバリズムを正す

1.不平等を軽視して経済効率を重視する人々

「昨今、日本では「格差社会」という言葉が声高に喧伝されている。格
差の拡大は、何より社会基盤そのものを揺るがせる結果につながる。
格差は国民の結束を蝕み、ひいては社会的な対立を誘発する。社会
全体で格差を埋めていく努力をするということは、極めて重要なことだ」
「実際、わたしが本書の中で主張しているひとつの大きなテーマは、「
グローバル化が進むと、富めるものと貧しい者との格差が拡大せざる
をえない」ということである。だからこそ現実世界で進行する不公正な
グローバル化を、われわれは阻止しなければならない」本書(ジョセフ
・E・スティグリッツ著、徳間書店発行)の著者が「日本の読者へ」で強
調している言葉である。

スティグリッツは、95年よりクリントン政権の大統領経済顧問委員会委
員長に就任し、アメリカの経済政策の運営にたずさわった。97年に辞
任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを努めた。2001年
「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル賞を受賞した。グロ
ーバル化には、先進国と途上国の双方に巨大な利益をもたらす潜在
力があると著者は信じているが、その潜在力は発揮されるに至ってい
ないとし、本書では、問題がグローバル化自体にあるのではなく、グロ
ーバル化の進め方にあることを示している。

本書は、序と、第1章から第10章からなっている。序「不平等を軽視し
て経済効率を重視する人々」では、著者は本書執筆の基礎となった経
験と本書の関係について語っている。第1章「不公平なルールが生み
出す「勝者」と「敗者」」では「アメリカモデルの押しつけ」を取り上げ、第
2章「発展の約束—ワシントン・コンセンサスの失敗から学ぶ」では、ワ
シントン・コンセンサスの処方箋として、アジア、アフリカなど各国のグ
ローバル化への対応の経緯を論じている。

この序と1章、第2章が全体的な問題を扱っており、第3章から第9章
では、「アメリカを利する不公平な貿易システム」、「汚染大国アメリカと
地球温暖化」などのタイトルで、それぞれ個別テーマを取り上げている。
そして最後の10章「民主的なグローバリズム」で、グローバル化の改
革の鍵となる政治的な論点を論じている。

著者によれば、所得の不平等にあまり重きをおかないエコノミストたち
は、政府の格差是正の試みはコストがかかりすぎて割に合わないと考
えがちで、政府の介入がなくても市場は充分に効率的である、という信
念をもっている場合が多い。そして、彼らにとって最善の貧困対策とは、
経済全体を成長させることで、成長によって得られた利益は、おこぼれ
(トリクルダウン)効果によって最下層の貧困者までしたたり落ちていく、
と信じこんでいる。また、不平等と貧困の解消に重きをおく人々は、お
しなべてその根源を“運”に求めるが、軽視する人々は、富を勤勉さの
ご褒美とみなす。そこで、所得の再分配は労働と貯蓄のインセンティ
ブをそぐだけでなく、個人から正当な報酬を奪うという点で非道徳的で
さえあるのだ。こうした人々は、社会正義、環境、文化の多様性、医療
分野でのユニバーサルアクセス、消費者保護などを軽視する傾向が
あると批判している。

第1章「不公平なルールが生み出す「勝者」と「敗者」」では、「アメリカ
モデルの押しつけ」を取り上げている。アメリカモデルの開発戦略は、
政府の役割の最小化に主眼をおき、民営化(政府系企業を民間セク
ターへ売却する)と、貿易の自由化(輸出入と資本の流出入にたいす
る障壁を取り除く)を重要視した。実際、ワシントン・コンセンサスは公
平性に重きをおいていなかった。アメリカモデルの推進者には、トリク
ルダウン理論を信奉する者もいれば、公平性は経済でなく政治の領
分だと主張する者もいた。

筆者が支持している別の立場では、開発促進の面でも、貧困層保護の
面でも、より大きな役割を政府にあてがっている。繁栄している経済の
中心には必ず市場が存在するが、産業界を成長させて雇用を創出す
るには、そのための環境を政府が整えてやらなければならない。必要
なのは、物理的なインフラと、制度的なインフラだ。

2.ワシントン・コンセンサスの失敗から学ぶ

第2章「発展の約束—ワシントン・コンセンサスの失敗から学ぶ」では、
「東アジアが学んだ教訓」、「ラテンアメリカの幻滅」、「旧共産諸国のシ
ョック療法」、「アフリカの誤った道のり」、「教育に投資しつづけるインド」、
「GDPが上がっても、貧しくなる生活」、などのテーマでワシントン・コン
センサスの問題点を指摘している。

「東アジアが学んだ教訓」では、「東アジア諸国の政府は、経済成長の
恩恵を少数だけにふりむけず、国民全体に広くいきわたるよう手段を
講じた。彼らはグローバル化をゆっくりと、自国の実情に合わせて進
める一方、慎重ながら毅然とした態度で経済に介入した。最先端技術
を吸収できる熟練労働者集団を養成するため、初等教育と高等教育
を同時に拡充した。また、計画立案と技術進歩の面では決定権を市
場に丸投げせず、重点的に育成する分野をみずから選択した」

また、資本市場の自由化に関しては、「アジアの二大巨頭、インドと中
国は、長期投資向けに市場を開放しても、短期の資本移動には制限
を掛け続けた。貯蓄率の高い東アジア諸国には、さらなる資本調達の
必要はほとんどなかった」。「しかし1980年代になると、おそらくはIMF
とアメリカ財務省の圧力に屈して、(タイ、インドネシア、韓国などの)多
くの国が市場を開放し、自由な資本移動を認めてしまった」。このよう
に述べて、その後に起こった通貨危機、銀行危機と、(不安定な投機
マネーの流れに生身をさらす形のグローバル化は経済の荒廃をもた
らすという教訓を学び)、各国は公平性と貧困救済策にさらに重きをお
くようになったことを指摘している。

一方、中国以外の途上国では、過去20年間に貧困は悪化した。世界
人口65億のうち、およそ40パーセントが貧困状態にあり、8億7700
万人、すなわち6人にひとりが極貧状態におかれている。アメリカモデ
ルはGDP値でみればうまく機能したが、国民の寿命の延びや、貧困
の縮小度や、生活水準を保っている中流層の割合など、ほかの指標で
は検討したとは言いがたいと指摘している。

具体的には、「世界の最貧国の一部は、世界銀行やIMFや日米欧か
らの援助を得るために、さまざまな条件を無理やり押し付けられており、
たとえ東アジアの成功を見習いたくても、経済政策を選択する自由さ
えない」「例えば、貿易協定はときとして約束どおりの機会拡大をもた
らさず、不公平な競争の場をつくり出してきた。世界中の国々から天
然資源を奪い、環境破壊の爪痕を残して去っていく企業と、このような
行為を野放しにする世界共通の法的枠組み、地球温暖化への対応を
こばむ富裕国と、破滅的な影響をまともにかぶりそうな最貧国」。この
ように述べて、途上国の貧困や格差拡大の原因を指摘している。

本書の最終章では、「本書であつかうのはグローバル化の経済的な側
面だが、問題のかなりの部分は、経済のグローバル化が政治のグロ
ーバル化に先行してしまっていることにある。グローバル化の改革は、
政治の領域に属することなのだ」。このように論じて、鍵となるいくつか
の政治的な論点を取り上げている。具体的には、非熟練労働者の将
来とグローバル化による不公平の拡大、先進国の運営に対する国際
経済機関における民主制の欠如、急速にグローバル化する経済の中
にあってもなお根強い局地的な考えかたの壁などである。

非熟練労働者の将来については、「完全に統合されたグローバル経済
のもとでは、世界はひとつの国のようになり、非熟練労働の賃金は世
界中どこでも同じ額になる」と著者は指摘している。過去を振り返ると、
発展途上国における資本不足や先進国と途上国のあいだの知識の
差が、賃金格差の存続に大きな役割をはたしてきたが、賃金均一化へ
のこれらの障害が、いま消えつつある。グローバル化と貿易の自由化
は総所得を増大させるが、平均所得がふえて、賃金、特に最下層の賃
金が停滞もしくは下降すれば、所得格差は拡大することになるのだ。

著者は、このような難題に、先進工業国としては三つの対応のしかた
があるとしている。ひとつは、問題点を無視して、不公平の拡大を受け
入れるやりかただ。二つ目の対応のしかたは、公正なグローバル化
を阻止するというものだ。すなわちゲームのルールを永遠に自分たち
に有利なものにするということだ。

しかし上記の二つの対応は受け入れられないので、「のこる選択肢は
ひとつしかない。グローバル化と正面から向き合い、その軌道を修正
することだ」。このように述べて、グローバル化のあるべき姿を著者は
次のように論じている。先進工業国は、ひきつづき自国の労働者の技
術向上をはかる必要があるが、その一方で、労働者たちの安全ネット
を強化し、所得税の累進性を増大させなくてはならない。また、研究へ
の投資もまた重要だ。

また民主制の欠如では、「ゲームのルール作りとグローバル経済の運
営を託された国際機関(IMF,世界銀行、WTO)は、先進工業国の利
益のために、もっと正確に言うなら先進国内の特定の利権のために
動いている」と指摘して、アメリカとその他の先進国の政策を批判し、
グローバルな協調行動と世界の準備金制度を提案している。

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