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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.078

2006/12/07

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   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
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★2006/12/07 No.078    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
日本に残る国内工場
[今月のレポート]
大前研一 新・経済原論
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  ■今月の一言■
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日本に残る国内工場

1.日本の擦り合わせ型ものづくりの立地論

日経ものづくり誌は経済産業省の協力を得て、「ものづくり立国支援フ
ォーラム2006」を2006年6月26日に開催したが、その概要が、同誌
2006年8月号に紹介されている。その中で、東京大学大学院研究科
ものづくり経営研究センター研究デレクター・助教授の新宅純二郎氏が、
アジアの製造業の中で日本をどう位置付けていくのか、四つの視点か
ら分析したと、次のように紹介している。

第一の視点が、日本とアジアの貿易構造、同氏は、日本や韓国、台湾
などの企業が中国で生産し、それが米国市場に流れているという構造
の中で、生産が日本に残るもの、残らないものにすみ分かれていくと
指摘する。この点を分析するのが第二の視点、アーキテクチャと技術
移転である。例えば光ディスク装置。「モジュラー化」が進んだために
シェアが低下したが、光ディスク装置でも、心臓部の光ヘッドは違う。
高度な材料開発、高度な加工技術開発が必要になり、標準部品の組
み合わせだけでは造れない。これが「擦り合わせ型アーキテクチャ」。
2003年のCD−ROM向け光ディスク装置のシェアがわずか5%であ
るのに対し、光ヘッドのそれは90%を超える。

そうとはいえ、日本は光ヘッドだけをやっていればいいというわけでは
ない。次の技術が出てこなくなるからだ。やはり何らかの形で、光ディ
スクという完成品事業を手がけることを考えなければならない。それが
第三の視点、国際アライアンスである。具体的には、知的財産権を持
つ企業と、量産技術にたけた企業のジョイントベンチャーを指す。

そして最後の視点が、日本の擦り合わせ型ものづくりの立地論だ。同
氏は、日本に残る国内工場を、(1)設備集約/技術集約で改善効果が
大きい先端技術工場(典型はシャープの亀山工場)、(2)技術を伝承し
競争力を維持する、海外量産工場のためのマザー工場(典型はミネベ
ア)、(3)付加価値の高い製品を短いリードタイムで生産する国内市場
対応型工場、(4)擦り合わせ型部品を世界のモジュラーメーカーに売る、
海外への部品/材料/設備供給拠点(典型は村田製作所)―と四つ
に分類/整理した。

2.日本に残る国内工場

アジアにおける製造業のネットワークと日本の位置付けについては、
東京大学21世紀COEものづくり経営研究センターホームページの、
ディスカッションペーパー<http://www.ut-mmrc.jp/dp/index.html
に、新宅氏が「東アジアにおける製造業ネットワークの形成と日本企
業のポジショニング」と題した資料を載せている。

まず、東アジアの貿易構造から、東アジアの国際分業構造がどのよう
になっているのかを、いくつかのパターンにまとめている。第一の分業
パターンは、日本で擦り合わせ型の部品・材料・設備を生産し、それを
使って台湾・韓国が液晶パネルなどの中間製品を作り、中国で完成品
になるという流れ。第二のパターンは、間に韓国・台湾を挟むことなく、
日本で作られた擦り合わせの部材設備が中国で加工されて完成品に
なるという流れ。第三のパターンは、日本の擦り合わせ部材設備がア
セアンで加工されるというパターン(日系企業の工場で加工されること
が多い)。

以上のような東アジアの貿易構造と日本企業が擦り合わせ型の部品
や材料に強みがあることを前提にすると、いくつかの戦略類型が見え
るとして、四つの戦略にまとめている。第1の戦略は、擦り合わせの部
品をしっかりと社内に抱え込んで、その競争力で完成品として競争す
るという戦略(シャープ亀山工場の液晶テレビ)。第2の戦略は、より単
純なもので、国内で作った擦り合わせ部品を積極的に輸出するという
戦略(村田製作所のコンデンサ)。

第3の戦略は、第2の戦略の生産立地が国内ではなく、海外になった
ケースである。擦り合わせ製品を日本(マザー工場)で開発設計し、海
外で量産展開する(光ピックアップ)。第4の戦略は、擦り合わせ部品
を作って、それをひろく一般の完成品メーカーに売るのではなく、有力
な完成品メーカーに売るというビジネスモデル(光ディスク産業におけ
る日立とLGの合弁)。

私はフォーラムの講演を聴いてないが、上記の四つの戦略を、講演の
「擦り合わせ型ものづくりの立地論」の「先端技術工場、マザー工場、
国内市場対応工場、擦り合わせ部品工場」と比較すると、講演では、
上記の第4の戦略が擦り合わせ型に組み入れられ、また講演では、
(3)付加価値の高い製品を短いリードタイムで生産する国内市場対応
型工場を新たに付け加えているが、両者はほとんど同じ視点にたった
分析である。

さて、日経ものづくり誌の同じ8月号では、「最新VIP工場 国内だから
極める価値創造、即時性、生産性」特集を組んでいる。工場の国内回
帰の声が聞かれ、工場の建設ラッシュを迎えている日本。単に生産を
国内回帰させただけではない。それらの工場は、海外とは異なった新
しい役割を持つ。付加価値(Value)(付加価値の高い製品を迅速に市
場に投入)の高い製品を造る。即時性(Immediacy)(国内需要を中心
とした多品種少量化の波に即時に対応)を持って顧客ニーズに合わせ
て造る。生産性(Productivity)(生産性を高める挑戦としてのマザー工
場)を高めながら造る。これらVIPを極めているのが、日本の工場だ。
このように要約して、それぞれの事例を紹介している。

新宅氏の講演と比較すると、先端技術工場と擦り合わせ部品工場をま
とめて付加価値型(市光工業藤岡製作所、ソニーマニュファクチャリン
グシステムズ本社工場、日本電産コパル郡山工場)とし、国内市場対
応を中心に即時性型(トヨタ自動車九州苅田工場、バンダイホビーセン
ター、河西テック本社工場)、マザー工場を生産性型(三菱ふそうトラッ
ク・バス川崎製作所、ローランドディー・ジー都田事業所、ツガミ長岡工
場、安川電機八幡西事業所)でまとめていると考えればわかりやすい。

勿論、片方は日本とアジアの貿易構造の視点から見た分析であり、一
方は国内回帰する工場の特徴あるものづくり技術という視点から分析
したものである。両者の分類がそのままあてはまるわけではないだろう
が、VIPなどの分野で何らかの強みがないと、世界のものづくりネット
ワークの中で、重要な役割を演じることができないということなのであ
ろう。

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 ■今月のレポート■
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大前研一 新・経済原論

1.本書の構成

本書は2005年3月に米国で出版された The Next Global Stage の日
本語への翻訳である。著者が「日本語版へのまえがき」で述べているよ
うに、本書は、1)グローバル企業の戦略展開の舞台がどのように変化
したのか、2)その中でなぜ中国が台頭し、それは企業にどのような戦
略の変化をもたらしているのか、3)著者の大前研一自身はこうした世
の中の変化にどのように対応しているのか、という三部作の第一作目
となる予定であった。しかし書き進めていくうちに1)と2)は不可分であ
るということになり、本書では中国、そしてインドなどがグローバル企業
にもたらす影響についてかなりくわしく扱っている。

大前氏は、「世界で繁栄しているところを見れば共通項があることがわ
かる。それは大国の場合には地方自治体への分権が進んでいるとこ
ろ、またしっかりした政府をもつ小国である」と指摘している。前者が米
国、中国、インドであり、後者はフィンランドやデンマークのような北欧
諸国にアイルランドやシンガポールが続くとしている。

またボーダレス・エコノミーに関して、「20世紀が国民国家の時代とす
れば、21世紀は明らかに地域国家の時代である。20世紀の繁栄は
国家が自らつくりだすものであった。21世紀の繁栄は世界から呼び込
むものである」。「日本ではまだ繁栄のために政府は何をなすべきか、
という議論をしているが、政府がすべきは世界から繁栄を呼び込むた
めの邪魔をしないこと、安全で快適な生活環境をつくること、優秀な人
材の育成、すぐれた情報・通信および交通のインフラをつくることであ
る」。「日本の政党も政策要領で道州制を唱え始めたが、世界から企
業や資金、そして情報や人々を呼び込むための新しいアイデンティテ
ィの確立、勝負できる産業の確立、欲しくなるような人材の供給、など
の概念はどこを探しても見当たらない」と指摘している。

本書で、著者はまず世界の置かれている状況を概観し、それをどう理
解すればよいのか、という問題から始めている。「第一部 舞台」では、
爆発的な成長を遂げている地域をいくつか観察し(「第1章 世界旅行
」)、グローバル・エコノミーの特徴を確認している。その後で、この新時
代生誕の地をふり返っている(「第2章 初演の夜」)。第一部の最後で
は、グローバル・エコノミーを理解する目的で伝統的経済学または経済
学者の失敗を検証している(「第3章 経済学の終焉」)。

「第二部 演出」では、グローバル・ステージに出現してきている主要ト
レンドを考察している。「第4章 劇作家」では、まず国民国家に何が起
こっているかを概観している。そして、著者が「地域国家」と名づけた、
グローバル・エコノミーの中でも最も有益、かつ、強力な経済組織の力
学を考察している。続いて「第5章 進歩のためのプラットホームでは、
「プラットホーム(英語、ウインドウズ、ブランド、米国ドルなど)という概
念を紹介している。そして最後に、はっきりと姿を現しつつある新たな
経済システムと歩調を合わせるには、ビジネスのどの部分を変えてい
かなければならないのかを考察している。こうした変更を強いられる部
分には、ビジネス・システムとプロセス(「第6章 彷徨」)、そして製品、
人材、ロジスティックス(「第7章 連鎖を断ち切る」)が含まれる。

「第三部 脚本」ではこうした変化やトレンドが各国の政府(「第8章 政
府を再設計する」)、また企業や個人(「第9章 未来を先取りする」)に
どのようなインパクトを与えるかを分析している。そしてグローバル・ス
テージを越えて、さらに進んだ世界をかたちづくる経済的な原動力とな
りうる地域をいくつか観察している(「第10章 ネクスト・ステージ」)。
最後の章では、グローバル・ステージで企業戦略を考えるためのフレ
ームワークには変更が求められるのかどうかを考察している。

2.地域国家の経済組織

ここでは、印象に残ったいくつかの章の内容を簡単に紹介したい。すで
に紹介したように、第4章では著者が「地域国家」と名づけた、グローバ
ル・エコノミーの中でも最も有益、かつ、強力な経済組織の力学を考察し
ている。まず、「地域国家を定義する」では、人口規模(ただし柔軟に考
えるべき)、国際空港、国際貨物を扱える機能を備えた港、良好な域
内交通インフラ、よい学生を惹きつけることができるいくつかの大学お
よび研究施設が存在することも非常に重要な要素であるとしている。
地域の成功に必須の要件としては、外の世界への開放度(投資の制
限、反外国的規制、生活環境の整備等)が最も重要であり、多様性(流
入してくる人が多く、その人たちの背景やスキルが多様、各種のサービ
ス)が好循環を呼ぶとしている。また「地域は発展のために何をすべき
か」では、とがった特徴を身につける、柔軟性を身につける、地名をブラ
ンドにする、成功を求める意思を強調している。

変更を強いられるビジネス・システムとプロセスを扱った「第6章 彷徨」
では、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を紹介している。こ
の10年間に起きた最も重要な変化は、国境を越えたビジネス・プロセス
・アウトソーシング(x−BPO)であり、x−BPOには二つのタイプが存在
する。特定機能分野のオペレーションを海外に移転するもの(コールセ
ンター)と、支援機能や間接業務を移転するもの(GE,シティバンク、ア
マゾン)である。

最後の章(第11章 追記)では、グローバル・ステージで企業戦略を考
えるためのフレームワークには変更が求められるのかどうかを考察し
ている。著者が以前に「企業参謀」(プレジデント社、1975年)で提案し
た戦略的思考に関する多くのコメント、アプローチ、そして思考ツール
はいまでも役立つものではあるのだが、三つのCを使った戦略の定義
そのものがいまではあてはまらなくなってしまった。この三つのCによ
る戦略とは、企業(Company)のもつ長期的に維持可能な、競合
(Competition)に対する相対性優位性を最大限活用しながら、顧客
(customers)のニーズを満たすというものであった。

今日のグローバル・ステージでは、企業も、競合も、顧客も、簡単に定
義できなくなってしまったとして、コダック、デル、ソニーの事例をあげて
いる。そして、「グローバル・ステージに登ろうとするにつけて、3C(企業、
競合、顧客)を定義するのが困難なことになっているが、戦略の策定す
る第一歩がその三つを明確に定義することなのだ。1980年代には、
戦略の策定とは三つのCの関係を定義することだったが、いまでは戦
略とはそれぞれのCが何なのかを定義し、時間の経過に応じて臨機応
変に三つの関係を定義することなのである」と指摘している。

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