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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNO.077

2006/11/02

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   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
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★2006/11/02 No.077    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
人間と機械の融合
[今月のレポート]
戦略プロフェショナル、シェア逆転の企業変革ドラマ
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  ■今月の一言■
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人間と機械の融合

1.機械の手が頭の中で自分の手と同化

2005年11月に放映されたNHKスペシャル「立花隆最前線報告 サイ
ボーグ技術が人類を変える」に関連した取材資料やリンク集が、東京
大学立花隆ゼミによって運営されているウエブサイト「SCI」で公開され
ている。ウエブ(http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/sci/)にあるリンクをア
クセスすると、最初に、「NHKスペシャル「サイボーク技術が人類を変
える」を作りながら考えたこと、作ってから考えたこと」が記されている。

二ヶ月かけてアメリカを二周し、カナダイギリス、中国も取材したこと、
日経BPのページに、「立花隆のメディア・ソシオ・ポリティクス」というコ
ラムを不定期に書きつづけているので、まず、それを読んでいただくと、
取材の流れがわかるとの説明があり、そのコラム(第28、29、51、
54、55回)へのリンクがついている。

第54回のコラム「「脳とは何か」を解き明かすサイボーク研究最前線」
ではNHKスペシャル番組「サイボーク技術が人類を変える」の内容を
解説している。番組のはじめのほうに出てくるサリバンさんという腕を
失った電気工が、肩につけたロボット・アームで、飲料水のビンをふり
まわす場面がある。そこで、使い慣れるに従って、機械の手が頭の中
で自分の手と同化していってしまったと立花氏は次のように解説して
いる。
サリバンさんが、「自分の腕の使い心地」というか、「頭の中の認識」を
問われて、「頭の中には、自分の腕がそこにあるのです。頭の中でそれ
が見えてくるのです。あなたが自分の手を開くときと同じように、私も自
分の頭の中で自分の手を開くとロボット・アームの手が開くのです」と答
える場面がある。これは、東大工学部の横井浩史助教授の研究室で
作られた5本の指が全部開く精巧なロボット・ハンドをつけることになっ
た、手を事故で失った患者の笠井ヒロ子さんが、そのハンドを自宅に
持ち帰り、しばらく使っているうちに生じた感覚、「自分の手がそこにあ
る」という感覚とそっくりである。

「SCI」ウエブで、「考えただけで、その通りにロボット・アームが動くのは
なぜか」という点について次のように解説している。まず、「考えただけ
で我々の手足がその通りに動くのは、脳の運動野から、運動指令が発
され、それが「脳→脊髄→身体各部の抹消神経へ」伝わり、神経の末
端が各部の筋細胞に接続され、筋肉を指令通り伸縮させるからである。
この指令をどこかで盗み取り、筋肉の代わりに、筋肉の動きをしてくれ
るロボット・アームのモーターにつなぐことができれば、ロボット・アーム
は動く。

番組で紹介したシェーピン教授のラット実験や、シュワルツ教授のサル
の実験は、どちらも脳に中に電極を入れて、脳の運動野から信号を盗
み取ったわけだが、サリバンさんの場合は、脳に電極を入れていない。
抹消の筋電位から、信号を取っている。この筋電位を、モーターに結び
つければ、考えただけで、思った通り動くロボット・アームやロボット脚
(レグ)を作ることができる。番組で紹介された東大横井研のロボット・
ハンドも筑波大山海研のロボット・スーツも筋電を利用することで、頭
で思ったまま、ロボットを動かしている。なお、サリバンさんの場合は腕
の筋肉から筋電位を取ることができないので、切断された神経を大胸
筋のところに導いているとのことである。

このように福祉機器に使えば、無限に近い広い応用が考えられるこの
技術も、軍事的に利用すれば、強大な力と速さをもつサイボーク・ロボ
ットを自在に操ることができ、考えるだけで飛行機の操縦もできれば、
ミサイルの発射もできるようになる。このような可能性を見込んで、ア
メリカの国防先端研究局(DARPA)が、この領域の研究に大きな予
算をつけるようになったというのは複雑な心境である。

2.ロボット開発の目標と条件

人間の脳に電極を埋め込むDBS(脳深部刺激療法)という画期的な
治療法が、パーキンソン病をはじめとする難病に苦しむ多くの患者に
希望を与えている。視床下核など大脳既定核と呼ばれる部位が発す
る異常信号によって、肉体に異常なふるえ、硬直状態、ねじれなどが
もたらせるのがパーキンソン病、ディストニアなどの病気だが、それが
脳深部刺激法によって病的症状が著しく軽減されることがわかってい
る(健康保険まで適用されることになっている)以上、そこに、その医
療に対する論理的問題性は何も発生しないと立花氏は考えている。

DBS療法に関してはこのウエブで、番組にも登場したDBSの世界的
権威である日本大学医学部の片山容一教授に、「DBSによる脳治療
の可能性」と「危険性」について質問している対談のほか、DBSの世
界的権威であるクリーブランドクリニックのリザイ医師との対談や、ア
ルツハイマー病を緩和できたロナルド・リトルさんとの対談が載せられ
ている。

片山教授との対談で、「技術的には、これからのDBSはどのような方
向に進んでいくか」との質問に、「オンデマンド方式になっていくと思い
ます。今は、あらかじめ医師がプログラムしたとおりにしか電気刺激を
送ることができません。これをオンデマンド、すなわち体内に小さなコ
ンピュータを入れ、患者さんの脳から出る電気信号をパルス発生器に
直接入力するようなシステムにして、必要なときに必要な強さの電気
刺激だけを与えるような自律的な仕組みのDBSに、次世代にはなる
でしょう」、「これは単に失われた神経回路の代替物である以上に大き
な意味があります。つまり、体内に設置されたコンピュータが脳内の電
気信号を処理するだけでなく、そのコンピュータによって脳が再学習す
ることにもつながるからです。脳とコンピュータが作用しあうという意味
では「融合」といってもいいでしょう」としている。

立花氏は、「人間と機械の関係が新たな局面に突入したと感じています。
これからは人間と機械を融合した、「ハイブリッド型」のサイボーグ人間
がどんどん世の中に登場してくるでしょう。重要なことは単に肉体の一
部を機械に置き換えるだけではなく、肉体や脳に機械を埋め込むこと
で、その人の脳もまた変化していくという点にあります。さらに言えば、
埋め込まれた機械そのものが人間を機械系の一部として取り込む。こ
れまで「マン・マシン系」として発展してきた文明が、いま「マン・マシン・
ハイブリッド系」の文明に変化しようとしているということだと思います」
と指摘している。

第55回のコラム「うつ病治療にも道を開くサイボーク技術の是非を問う」
で、「人間の脳には、大きく分けて「身体脳」と「人格脳」ともいうべき相
違なる機能を受け持つ部分があり、そのどちらかによって、脳の取り扱
い方、脳とは何かを考えるときの基本的考え方がちがってくるはずだ。
人格脳の部分は、故障を起したからといって、簡単にそこにメスを入れ
て除去する。あるいは手を加えて改変してしまうのどということは許さ
れるはずもあるまいが、こと身体脳に対しては、そういうことをしても許
される」と述べている。

定義としては、「人格脳」とは、その脳の動きが人格の形成と直結する
故に、脳のその部分に手を加える(破壊してしまう)と、その人の人格
を改変(破壊)することになってしまう部分である。「身体脳」とは、その
動きがもっぱら身体各部の機能維持にかかわる部分で、そこが改変
(破壊)されると、身体的支障は引き起こすが、それが直ちに人格の改
変(破壊)につながらない部分であるとしている。もっとも、「身体脳」
でも、障害を有する人が日常の生活を満たす目的で、機能維持のため
に足りない部分を補うためや、その介護者が機能を補助する目的で改
変するのはよいが、普通の人間が出せないような超能力を持たせため
の改変は、その利用分野によって制限されるのであろう。

7月10日に放送されたNHKスペシャル「危機と戦うテクノクライセス第
2回」では、「ロボット技術の軍事転用の戦慄」として、自動車、ヘリコプ
ターなどの軍用ロボットが紹介されていた。軍事研究だけでなく、民生
用技術を転用して、無人の軍用ロボットが米国などで開発されている。
最近では、人間と会話し、癒しの効果があるコミュニケーションロボット
や、ロボット・スーツ、義手などの自立支援ロボットが開発され、実用化
されるものもでてきた。人間の役に立つロボットの開発を目標に研究し
ている多くの技術者たちの研究が軍事転用される可能性に対して、ど
のような対応を取ることができるのであろうか。

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 ■今月のレポート■
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戦略プロフェショナル、シェア逆転の企業変革ドラマ

1.実践的戦略プロフェッショナル

本書(三枝 匡著、日経ビジネス文庫)は、ダイヤモンド社より刊行され
た「戦略プロフェショナル」(1991年3月初版)の最新版を文庫化したも
のである。10年以上前に初版されたものであるが、現在でも参考にな
る内容なので、紹介させていただく。なお、取り上げたものは、2006年
6月発行の第14刷である。

本書は、もともと経営者向けの戦略トレーニング・セミナーの教材として、
ダイヤモンド社の支援の下で作られたものがベースになっており、本当
にあった話をもとにしているとのこと。機密上の差しさわりを極力さける
ため少し古い話をとりあげ、それを最近のビジネス環境に合わせて書
き直したものである。新しい競争のルールを創り出し、市場シェアの大
逆転を起こした36歳の変革リーダーの実話をもとに、改革プロセスを
具体的に描く迫真のケースストーリーとメモのかたちでまとめた戦略ノ
ートから成り立っている。

本書の主人公広川洋一は、日本で有数の鉄鋼メーカー第一製鉄の新
事業開発部の36歳の主査である。入社して8年目にハーバーと大学
への派遣留学生に選ばれ、BMA(経営学修士号)をとっている。事業
提携したメディカル関連企業、新日本メディカルの社長に誘われて、常
務取締役で出向することになった。経営トップが使える「時間」には、限
りがある。広川はまず自分の仕事の優先順位(プライオリティ)をはっき
りさせ、社長と合意しておこうとした。日本メディカルには、医療機器事
業部、プロテック事業部があるが、粗利益率の高さなどから、米国プロ
テック社の商品を販売するプロテック事業部の業績アップに取り組むこ
とにした。

プロテックの主力商品は臨床検査薬といわれるもので、病院で患者の
血液や尿などを検査するときに使う検査薬のことである。プロテック社
ではジュピターという新製品を出してきた。これまで人の手でやってい
た検査を自動化できる画期的な機械であるが、日本での機械の売り上
げが伸びないので、プロテックの副社長から日本メディカルの経営姿勢
を問いただしてきていた。広川が見るところ、新製品ジュピターがプロテ
ック事業部の市場ポジションを飛躍的に改善できる救世主である可能
性は強いと思われたが、競合メーカーが同じ様なものを出してきたらチ
ャンスの窓は閉ざされてしまう。

広川がその後の四ヶ月に戦略検討のプロセスを第4章の「戦略ノートー
戦略はシンプルか」を参考に箇条書きすると次のようになる。(1)仕事
の優先度、(2)全体市場の俯瞰、(3)戦略製品の抽出、(4)製品の差
別化能力の確認、(5)価格と利益構造のチェック、(6)戦略ロジックの
策定、(7)組織の強み弱み、(8)市場ターゲットの絞り、(9)戦略展開
の時間軸、(10)価値観の「混乱化」、(11)新戦略と実行プログラム。

なお、ここで打ち出された新戦略プログラムは、アドオン・プログラム(
ジュピターを無償で納入し、検査薬は定価に機械代金を加えたアドオン
価格で販売する)、組織変更(スペシャリスト制廃止)、機械の直販化(
検査薬は従来どおり代理店ルートで販売)、販促ツールの整備、提案
書の作成、営業インセンティブの実施。

2.絞りと集中

本書で取り上げた経営戦略の要諦は「絞り」と「集中」である。もし事業
に絞りがなければ、組織のエネルギーを統一して集中することはでき
ない。ここでは、第5章の「戦略ノート—絞りと集中」から引用して、
その概要を紹介しておく。絞りと集中の道具として有効なものはセグメンテ
ーションである。セグメンテーションは「市場のなかを同じ様な購買性
向を持った顧客グループに分ける(セグメントする)ことである。この手
法をどんな時に使うかと言えば、二つの正反対のアプローチがある。
一つは「先に商品ありき」で、もう一つは「先に市場ありき」である。

「先に商品ありき」というのは、すでに手元に何か商品があって、それを
どんな人に売ろうかと対象を絞る場合であり、広川たちが直面したのは
このケースである。「先に市場ありき」というのは、これから新しく商品開
発や事業開発をする時に問題になる。まず市場を見る。顧客の購買動
機や特性の変化を分析し、すでに世に出ている商品で満たされていな
いニーズ(製品空間)を見つけ、それに狙いを絞って開発を行う。

セグメンテーションの作業では、広川たちは皆でワイワイガヤガヤとブレ
ーン・ストーミングでやった。そしてマトリックス(四角形を区切ったもの)
を使っている。普通の人間が頭のなかで扱える分類マトリックスは、せ
いぜい3×3の九コマが限界だと著者は思っているとのことで、ストーリ
ーのなかで広川たちはマトリックスを単純化するために二段階方式を
使っている。すなわち、一つ目のマトリックス上でA,B,Cという第一次
のランクづけ(絞り)を行い、その結果を、二つ目のマトリックスの縦軸
にもってきて、最終のランクづけ1,2,3を行った。

セグメンテーションは、コンセプト(概念)レベルで戦略的に組み立てる
だけでなく、さらに、各地区別、営業マン別に当てはめ、彼らの行動や
実績の把握を同じ考えの下で行っている。さらに大切なことは、しっか
りとしたモニターと管理である。広川はこの点を明確に認識しており、
進捗状況のコード化をした彼なりの報告システムを作ったのである。コ
ードはF(まだ何もしていない)から、E,D、C(デモおよびその後の訪
問)、B1,B0(価格など条件交渉及びその後の訪問),A1,A0(売上
)までと、Z(アプローチ中止)からなる。

最後に、第4章の戦略ノートに、リーダーであると同時に参謀である実
践的「戦略プロフェッショナル」の条件が書かれているので、紹介してお
こう。(1)トップとして、強いリーダーシップを発揮する覚悟があること。
その目標がなぜ達成されなければならないかを部下に説得し、士気を
鼓舞し、創意工夫を促し、「共に考え、共に戦う気概」を見せなければ
ならない。(2)新しい戦略を考え出す作業手順をマスターしていること。
作業のステップごとに、どんな選択肢があるのかきちんとチェックし、責
任者として自分でそれを詰めていく「緻密さ」を持っていること。(3)だれ
もやったことのない新しい戦略を実行に移そうというのだから、多少の
リスクは気にせず、また何があっても「夜はグーグーとよく眠れる」性格
であること。

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「情報と中小企業」メールニュース
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