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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.072

2006/06/01

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   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
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★2006/06/01 No.072    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
改革を成功させるファシリテーション
[今月のレポート]
発明家たちの思考回路―奇抜なアイデアを生み出す技術―
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  ■今月の一言■
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改革を成功させるファシリテーション

1.ファシリテーション型リーダー

日経情報ストラテジー2006年6月号に、「改革を成功させるファシリテ
ーション」特集が載せられている。自らけん引役になるのではなく、触媒
となって組織が持つ潜在的な力を引き出し、変化を促進(ファシリテート)
する。こんなリーダーショップを持つ経営者が注目を集めている。戦略
策定や改革実行のプロセスにおいて、社員が本音を納得さるまで話し
合う場を運営し、上意下達ではなく、「自らが当事者」という意識を社員
に感じさせることで改革を成功に導く。この特集では、このようなファシリ
テーション型リーダーを紹介している。

最初に、経営が悪化して2004年に民事再生法の適用を申請した古牧
温泉渋沢公園の再建を手がけた、星野リゾート社長の星野佳路氏を取
り上げている。星野氏は、父が経営していた軽井沢町星野温泉の経営
改革を成功させた手腕をもって、破たんした大型リゾートを再生させて
きた。

古牧温泉渋沢公園の従業員有志からなる「コンセプト委員会」では、メ
ンバーがリゾートの今後のあるべき姿を探るために議論を戦わせる。
再生委員会の主役は社員。星野氏は社員の意見を板書きしたり、現
状分析に必要なデータを提供したりするものの、自分の意見を打ち出
したり、アドバイスしたりといったことはしない。「経営者が自分の目指
す場所に社員を無理やりつれていこうとしても、社員は動かない。大事
なことは、「自分たちが本当にこうなりたい」という像を社員が描けるよう
にすること。それができる場を提供するのが自分の役割だ」と星野氏は
話す。社員自らがリゾートのコンセプトを描き出せば「あとはほっていて
もうまくいく」。

特集では、ピープルフォーカス・コンサルティング(PFC)の松村取締役
の、「上意下達型のリーダーシップに対し、ファシリテーションは「触媒
型」のリーダーシップと位置付けられる。多様な人材による「協働」活動
を促進することで、各人のパワーを最大限に引き出す役割を担う」との
指摘を紹介し、典型例として日産自動車の事例をあげている。日産が
2001年から取り組んでいる業務改善活動「V-FAST」では、部署が抱え
る課題の解決策を1日の集中討議で解決する。この場で活躍するのが
社内研修で育成されたファシリテーターだ。「上司に遠慮したり、その意
見に流されたりせずに、各メンバーが本音で討議することを促進するた
めにはファシリテーションが不可欠だ」としている。

経営トップがファシリテーターとしての役割を果たすとき、その効果はさ
らに大きくなる。まず戦略策定において、ファシリテーションを活用する
ことで全社の人材から様々な視点を取り込み、最適解を見つけ出せる
ようになる。ファシリテーション型リーダーシップのもう一つの効用は、戦
略策定や改革に参画するメンバーに当事者意識を醸成することである。
また、ファシリテーションを実行するためのスキルとしては、「場をデザイ
ンするスキル」「対人関係に関するスキル」「構造化のスキル」「合意形
成のスキル」の4つが挙げられるが、この中で経営トップが特に重要な
役割を果たすのが、「場作り」だ。メンバーが本音で話し合える「場」を作
るには、経営トップが自由な発言を保障することが不可欠となる。ルー
ルの設定や、場合によっては組織や権限の見直しも併せ、トップダウン
で環境を整備することが求められると指摘している。

星野社長はリゾート再生に当たって、まず根本的な組織改革を敢行し
た。古牧温泉のケースでは、全社を60ユニットに分け、ユニットディレ
クターの給与はすべて均一にし、年齢やかっての役職による上下関係
を排した。コンセプト委員会のキックオフに当たって、「言いたいことを
言いたい時に言いたい人に言う」「そのために必要な経営データはすべ
て公開する」の2つのルールを打ち出す。場つくりにおいては、目標を
明確にしてメンバー全員が共有することも重要だ。星野社長は目標とし
て、「お客に喜んでもらえるサービスを提供すること」を掲げる。

2.ウエルチのファシリテーション

トップダウン型の経営者といわれるGEのジャック・ウエルチ前会長もフ
ァシリテーションを活用した経営者の一人である。著書「ウイニング・勝
利の経営」によると、同氏のビジネスに対するアプローチの基礎をなす
原則は四つある。揺るぎないミッションと具体的なバリューの重要性、
経営のすべての面で求められる率直さの絶対的な必要性、能力主義
に基づく選別システムの力、そして個人が発言する機会を得て敬意を
持って接することのできる価値の四つである。

ミッションは方向性を正確に示し、バリューは、その目的に到達するた
めに取るべき行動を表現する。ウエルチによれば、効果的なミッション・
ステートメントは、基本的には次の問いかけに回答を与えるものである。
「私たちはこのビジネスでどうやって勝とうとしているのか」。GEのミッシ
ョンは、「世界でもっとも競争力のある企業になる。そのためにすべての
市場でナンバー1かナンバー2になる。その可能性のない事業はテコ入
れするか、売却するか、閉鎖する」。ミッションを作るのは経営トップの責
任だ。

ミッションと違い、バリューに関しては全社員が発言の機会を持つべき
だと次のように指摘している。バリューの内容を決めるのは、どうして
も反復作業となる。最初の原案は役員クラスが作ることになると思うが、
それを社員全員に発表して、繰り返し、細かに吟味・詮索してもらう。コ
メントを出して会社に貢献するのが社員の役割だと思わせるような雰
囲気づくりに、役員は全力を尽くすべきだ。GEのバリューは、「垣根を
越えて行動しよう。どこから出てきたアイデアかにこだわらず、一番よい
アイデアを探し、採用しよう」「官僚主義を許すな」「変化は成長をもたら
す新たな機会と捉えよう」などというものだ。

ウエルチは、発言権と尊厳に関して、職階にかかわらず、みんなが自由
に発言できるような環境を作り出さないといけないと認識し、ワークアウ
トを始めた。「ワークアウト」とは、「無駄な仕事(work)を追い出す(out)」
ために、組織横断的な小チームを作って業務改善案を募り、現場主導
で素早く具現化するというプロセスを繰り返すというもの。30人から100
人の社員が集まり、外部のファシリテーター(進行役)を招いて、どうすれ
ば仕事が改善されるか、官僚的な部分、障害を取り除くにはどうしたら
よいかを話し合う。各セッションの冒頭にトップがなぜワークアウトをす
るのかを説明し、ボスはそのセッションの終わりまで姿を消して、オープ
ンな会話の邪魔をしないようにする。最後にふたたび戻って、ワークア
ウトででた提案の決断をしていく。

その手法はかつて日本に広く普及したTQCにヒントを得ているが、解
決案が直接トップに提示され、それをその場で判断するという点が特
徴である。そしてこのワークアウトが組織に浸透することによって、直接
的な問題解決だけでなく、官僚制を打破し企業の風土を変革することま
でが可能だという。GEのどのセクションでも、ワークアウトは画期的な
生産性向上をもたらしたとのこと。ウエルチは、私の時代にGEが変わ
った最大の理由は、一つにはワークアウトにあると信じているこのこと
である。

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 ■今月のレポート■
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発明家たちの思考回路―奇抜なアイデアを生み出す技術―

1.全体の概要から3章まで

発明とイノベーションの戦略を企業にアドバイズしている、クリエティブ・
ジュースLLC社長のエヴァン・I・シュワルツが書いた本書((株)ランダム
ハウス講談社発行)のねらいは発明家の戦略的な発想パターン、つ
まり発明の出発点である「わかった!」の瞬間を探ることにある。本書
では、古今の発明家たちの心に入り込み、発明にいたるまでの過程で
彼らがどのように奮闘し、実現させたかを描き出している。どんな動機
から問題に取り組むことになったのか、どんな判断をし、どんな機会を
とらえ、どんな知識をもって臨んだのか。さらに、まちがいや障害として
どんな知識を捨て去ったのか。

本書の帯に、「超音波診断装置」「ハイブリッド自動車」「スロットマシン
付き薬ビン」「セグウェイ」「発光ダイオード」が事例として書かれている
ように、現役の発明家を中心に取り上げている。本人にインタビューで
きることがその理由であるが、興味深い事例であること、時代を先取り
する発明であることも重要視して選んでいる。また、比較するために過
去の事例も併記している。著者は、学校では発明の実際を教えられる
ことはほとんどないが、発明とは一連の発想戦略をツールとして生まれ
るもので、料理や演技やセーリングのスキルと同じように、教え、学び、
実行できると述べている。

本書は、第1章「可能性を創出する」、第2章「問題をつきとめる」、第
3章「パターンを認識する」、第4章「チャンスを引き寄せる」、第5章「
境界を横断する」、第6章「障害を見極める」、第7章「アナロジーを応
用する」、第8章「完成図を視覚化する」、第9章「失敗を糧にする」、
第10章「アイデアを積み重ねる」、第11章「システムとして考える」か
ら構成されている。

第1章「可能性を創出する」で、新しい可能性を創出するときには、解
決しようとする問題が新しいものでなくともかまわない。新しくなければ
ならないのは、問題のとらえ方だとして、電話のベル、電球のエジソン、
飛行機のライト兄弟のいずれもその基本のアイデアを最初に思いつい
たわけではないと説明している。そして、「重要な疑問は、他者が満たそ
うとしない需要や必要にことさら取り組もうとする人たちがいるのはなぜ
かということだ(技術史家のカルロ・チポッツラノ)」、「新しいものを創造
するのは知性ではなく、内的必然からはたらく遊びの本能である(心理
学者のカール・ユング)」を紹介して、「この遊びの本能こそ、本書で紹
介する発明家たちが求め続けているものだ。発明家は全員が余人に
ない才能のひらめきを見せる。そして、その才能は好奇心を引かれた
もので遊ぶ子供のような気質にその根があるのだ」と説明している。本
章では、事例としてウディ・ノリスの超音波診断装置をあげている。

第2章「問題をつきとめる」で、発明家というと問題の解決がうまい人と
思われがちだが、それよりも問題の発見が得意な人と考えたほうがよ
い。このように説明して、ノーベル賞物理学者のアルバート・マイケル
ソンの「概していえば、取り組みがいのある問題を知ることは、取り組
みを進めるよりも重要である」という言葉を紹介している。事例としてウ
オーカー・デジタルの創立者のジェイ・ウオーカーのスロットのスロット
マシン付き薬ビンなどを取り上げている。

第3章の「パターンを認識する」では、発明というと、説明のつかない想
像力の飛躍から生まれたものだと思われがちだ。しかしよく観察してみ
ると、すばらしいインスピレーションは見かけほど不可思議なものでは
ない。新しい解決策は、新しいパターンを認識することからも導かれる。
パターン認識とは発想のツールなのだと強調している。事例として、エ
ジソンの蓄音機や映写機、個人が個人に対して電子メールで送金でき
るペイパルを開発したレプチンを取り上げている。

2.4章から11章まで

第4章の「チャンスを引き寄せる」では、新しい発明は、一面から見れ
ばそのほとんどが偶然のように見える。だが別の面から見ると、少しも
偶然などではない。発明につながった過失やアクシデントは、ふさわし
いときに、ふさわしい場所で、ふさわしい人に起こっているのだ。このよ
うに説明して、パスツールは「偶然は準備のできている者だけに訪れる」
といっていると紹介している。事例として、ヘテロ接合バイポーラトランジ
スタを発明したバーナード・バーニー・マイヤーソン、ゴムの加硫法を発
明したチャールズ・グットイヤーを取り上げている。

創造性の世界には、二つの世界をまたぐことを的確に表した言葉があ
る。「境界侵入」とよばれることもあるが、「バイソエーション(双連性)」
ともいう。後者は、二つないしそれ以上の平面で思考する創造性あふ
れる活動を区別するためにケストラーが使った造語で、一見して関連
のなさそうな二つのアイデアを結合することをさす。第5章の「境界を
横断する」では、発明と発見の多くは観察と経験を通じて新しいパター
ンに目をとめたときにひらめくものだが、そのパターンはしばしば分野
の交差したところにかたちづくられる。事例として、DNAシーケンサを
発明したリー・フッドとビル・ドライヤーを取り上げている。

第6章以降は、ページの都合で箇条書きで紹介するにとどめる。
●第6章「障害を見極める」:障害やそれによる不安を切り抜けるには、
同じ問題に取り組んだものが試みて行き詰った原因を知ることだ。
●第7章「アナロジーを応用する」:問題の解決(ターゲット)に、過去の
類似した経験や知識(ベース)を利用するのがアナロジーの応用である。
●第8章「完成図を視覚化する」:人間の知的能力のうち充分に活用さ
れていない最たるものは、おそらく視覚化の能力だろう。発明にしばしば
必要とされるのは、目を閉じて外部のいっさいを遮断し、大脳の前頭連
合部に自分だけの映像を映し出すことなのである。
●第9章「失敗を糧にする」:失敗はなにごとにもつきものだ。そしてど
んな失敗もムダにはならない。目標の達成に成功した人は忍耐強さが
秘訣だとよくいうが、忍耐強さと並んで求められるのは、失敗を糧にす
ることである。失敗は前に進むための原動力になる。失敗が教えてくれ
ることに耳を傾けよう。
●第10章「アイデアを積み重ねる」:問題というのは、一つ解決すれば
また次が生じるものだ。すばらしいひらめきも、一つだけではブレークス
ルーや変革の引き金になるには不充分だ。将来性のあるアイデアを考
えるのは大事だが、もっと重要なのはそれを補強し支えるアイデアがあ
とにつづくかどうかである。
●第11章「システムとして考える」:発明はそれだけで独立して存在す
ることはありえない。アイデアがどんなにすぐれていても、できあがった
ものがどんなにすばらしくても、その発明が生き残るか消え去るかは、
ほかの技術とどれだけ調和し、社会環境にどれだけ溶け込めるかにか
かっている。最もすばらしい発明はシステムの発明なのだ。

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