企業

「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

全て表示する >

「情報と中小企業」メールニュースNo.069

2006/03/02

=======================
   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
=======================
★2006/03/02 No.069    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
◇----------------------------------------◇
 //ISSF//      // ISSF//      //ISSF//
情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
◇----------------------------------------◇
もくじ
[今月の一言]
コンセプトとロードマップ主導の製品開発
[今月のレポート]
ブルー・オーシャン戦略
◇----------------------------------------◇
◇--------------------◇
  ■今月の一言■
◇--------------------◇
コンセプトとロードマップ主導の製品開発

1.コンセプト主導のイノベーション

経営コンサルタントの織畑基一氏が著書「ラジカル・イノベーション戦略
―新市場を切り拓くプロダクト革新(日本経済新聞社発行)」で、欧米に
おける実証的な研究と日本におけるプロダクト・イノベーションの実例か
ら、イノベーションを起こす定型的なプロセスを追求している。

商品に対する新しい視点として、フランスの哲学者、ボードリアールの
言葉を引用して、人々は一つのものを買うときに、そのもの単体の機能
や価格を買うのではなく、自分のライフスタイルの一部品としての機能
や価値を買っている。また、商品戦略では「差異化」がカギになるのに
対し、イノベーション戦略においては「市場創造」がカギとなると指摘し
ている。イノベーション戦略においては、自らが先行者であるがゆえに、
厳密には競合品が存在しないからだ。

そして、技術主導か市場主導かという議論は、その根底において、供給
者主導か消費者主導かという二項対立的なものだ。現代企業は、この
二項対立を超越しなければならないとして、ニーズと技術の融合を主張
している。技術と市場の結合を論じたクラークは、イノベーションのパタ
ーンは製品技術のみに依存するのではなく、製品の内部的なロジックと、
顧客要求の進化との間の相互作用にも依存するとした。そしてイノベー
ションの初期における技術と、顧客嗜好に関する不確実性とが商品開
発を促すとした。
織畑たちの注目点は、1)イノベーション時において、「供給者―市場間
の相互作用」から出る成果物とは何か、2)その成果物はどのように創
造されるか、にある。このうち1)については、「供給者―市場の相互作
用」の成果物として、「研究者―マーケター間の合意→製品統合性→
需要表現」という概念的進展が見られるが、この概念的進展の根底に
あるのは、技術と市場ニーズの緊密化であり、融合であると指摘している。

このことから、技術革新を起こしながら、潜在化している市場ニーズに
も適応するためのアプローチについて次のように述べている。「プロダ
クト・イノベーションを起こすための二つの条件がある。それは、潜在化
する市場ニーズの洞察と競合障壁の構築である。前者は、市場調査
によってじかに市場ニーズを把握することができない。市場調査を超え
た、何らかの洞察が必要である。後者は、その主たる役割は技術が担
っており、まねされるまでに戦略的に有効な時間がかかる技術を開発
しなければならない。この競合障壁となる技術的先行性は2−3年であ
ると言われている」。

そして、商品開発戦略の類型は、「市場ニーズの洞察」という次元と、
「技術革新」の次元が創る空間のなかに位置づけられるとして、四つの
象限に相当する商品開発戦略の分類を示している。右下の象限(市場
ニーズの洞察は深いが技術革新は小さい)はニーズ主導型、逆に左上
の象限(技術革新は大きいが市場ニーズの洞察は浅い)は技術主導型、
左下の象限(独自に市場を開発することや独自に技術を開発すること
が少ない)に相当する戦略カテゴリーは類似品開発型、右上の象限(市
場ニーズの洞察が深く技術革新も高い)はコンセプト主導型である。この
コンセプト主導型の領域は、もっとも理想的な商品開発戦略のカテゴリ
ーであり、新しい需要を開拓する確率が高く、技術的な競合障壁も高い
ので、高収益を確保しやすいと強調している。

花王の常盤元社長は、「ニーズは市場に聞いて把握するものではなく、
イノベーテェブな商品によって創りだすものだ」と明言し、キャノンのレー
ザービーム・プリンターの開発チームリーダーは、「技術は商品コンセプ
トを実体化するために革新される」と語った。織畑たちの研究グループ
が企業の成功事例から発見したアプローチも、「ニーズ主導」でも「技術
主導」でもなかった。予備調査において、多くの優れた技術をもちながら、
成功する商品を開発できずにいるメーカーを発見したが、それらのメー
カーに共通して観察されたことは、優れた技術を商品に統合する商品コ
ンセプトの不在であったと指摘している。そして、この商品開発における、
商品コンセプトの役割または機能とは、1)統合性、2)イノベーション・ド
ライブ、3)技術開発に目標を与える、4)マーケティングに目標を与える、
であるとしている。

また、進化的イノベーション・システム(EIS)は、シャープの事例(電卓・
電子システム手帳・情報携帯端末)から、「スピンサイクル」と「潮流」に
よって構成されていると定義している。スピンサイクルには、ラジカル・
イノベーションに相当する「探索型スピンサイクル」と、漸進的イノベーシ
ョンに相当する「改良型スピンサイクル」があるが、探索型スピンサイク
ルにおけるポイントは、1)共感によって潜在ニーズを察知すること、2)新
商品コンセプトを創造すること、3)ニーズを潜在化させるためのプロトタ
イプを早く製作すること、の三つである。

この探索型スピンサイクルは、改良型スピンサイクルと同様に、商品開
発、デリバリー、使用・普及、誘発の四つのプロセスから成り立っている
が、閉じた輪をつくってなく、また、誘発プロセスから始まる点が異なっ
ている。この誘発プロセスは、環境潮流からはじまり商品コンセプトで終
わる、「情報」または「知」の流れである。環境潮流のもつ脈路が商品開
発者によって解釈・意味づけされ、商品の意味する内容に結晶されるプ
ロセスである。

2.イノベーションの源は技術か?市場か?

2月初旬に、早稲田大学客員教授(参議院議員)の藤末健三氏の講演
を聞いた。「中小企業振策」と題した中小企業の直接金融からの資金調
達と、「アイデアを形に」と題したコンセプト主導の開発の話であった。

コンセプト主導の開発では、先に紹介した織畑氏の著書「ラジカル・イノ
ベーション戦略」を引用して市場ニーズの洞察と技術革新からなる4象
限の図を紹介し、ケンブリッチ大学の「Technology Roadmapping」の資
料を引用して、様々な部門から参加するメンバーによる4つのワークシ
ョップ(Market、Product、Technology、Charting)を通じての、コンセプトか
ら製品への流れの説明があった。

この事例としては、富士フィルムの「写ルンです」のケースをあげて、コ
ンセプト(レンズ付フィルム、簡便に“良いプリント”の写真が取れる)→
マーケティング(きれいな画像、誰でも使える簡単な操作等)→プロダ
クト(シャッターを押すだけの簡単な操作、高感度・高画質画面等)→テ
クノロジー(低価格・高機能プラスティックレンズ、二重構造素子による
高感度微粒子化技術等)→営業と販売結果、という流れを説明された。

このほか、キャノンのレーザービーム・プリンター(LBP)、AppleのiPOD、
PIXERAの井手社長の話、VHS対ベータ等、コンセプト主導製品の事
例を紹介された。「消費者からニーズを拾うのではなく、新しい商品コン
セプトを創造し、それを市場に普及する」というコンセプト主導の話であ
る。井出社長の、「最初に「こんな製品があればいいなという製品のコン
セプト」があって、これにマーケティングや必要な技術を分析する」「テク
ノロジー(のロードマップ)が予測できるので、将来のテクノロジーをもっ
てどのようなものができるかコンセプトを開発できる」との話の紹介が印
象的であった。

コンセプト主導の話を聞いたときは、「そのようなことは当たり前の話で、
いまどきイノベーションは技術のみで生まれるとか、顧客からの情報の
みで生まれるなんて考えている人はいないのでは」と思ったが、コンセ
プトを製品にまとめあげるワークショップの流れや、コンセプト開発チー
ムの話は、織畑氏の著書に欠けている実用化のためのノウハウを補う
という意味で参考になった。

また同時に、企業技術ロードマップの作成を行うと、経営者が技術をわ
かっていないという課題が解消され、社内のテクノロジー的な意思統一
が図れる。将来を見すえたコアの構築やコンセプト主導の製品開発の
スケジュールを組み立てることもできる。藤末氏は、わが国で携帯市
場のベンチャー企業が少ないのは、政府が規制のロードマップを公開
してないからであると話されたが、規制のロードマップだけでなく、政府
が支援する技術開発において、そのコンセプト(ビジョン)やロードマッ
プが広く公開されていないのも課題であろう。

◇--------------------◇
 ■今月のレポート■
◇--------------------◇
ブルー・オーシャン戦略

1.ブルー・オーシャンを創造・支配するのに欠かせない分析のツール

 「差別化、低コスト、コア・コンピタンス、ブランディング・・・。これまで数
々の「戦略」がもてはやされてきたが、ライバルと同じ市場で戦うかぎり、
どれほど巧妙に戦略を練ったところでいずれ消耗戦を強いられることに
なる。血みどろの戦いが繰り広げられるこの既存の市場を「レッド・オー
シャン(赤い海)」と呼ぶのなら、いま企業がめざすべきは、競争自体を
無意味なものにする未開拓の市場「ブルー・オーシャン(青い海)」の創
造だろう」。本書(ブルー・オーシャン戦略、W・チャン・キム+レネ・モボ
ルニュ著、有賀裕子訳、ランダムハウス講談社発行)のカバーにこのよ
うに紹介されているように、ブルー・オーシャンとは、いまはまだ生まれ
ていない市場、未知の市場空間すべてをさす。

ここ25年というもの、戦略研究は主として、レッド・オーシャンでの競争
に焦点を当ててきた。既存業界の経営構造をどう分析すればよいか。
低コスト・差別化・フォーカスといった戦略のどれを選ぶべきか。競合
他社との比較はどうするのか・・・。ブルー・オーシャンをめぐる議論も
皆無ではないが、そもそもブルー・オーシャンをいかに創造すべきか、
という点については、実用的な指針はほとんどないのが現状である。
著者はこのように指摘し、ブルー・オーシャンを追い求め、掴み取るた
めの実践的な枠組みと分析法を示している。

本書の第2章「分析のためのツールとフレームワーク」では、オースト
ラリアのカセラ・ワインズの新ワイン<イエロー・テイル>等の例をあげ
て、ブルー・オーシャンを創造・支配するのに欠かせない、「戦略キャン
パス」、「四つのアクション」、「アクション・マトリックス」というツールやフ
レームワークを紹介している。アメリカのワイン業界は、各社とも同じよ
うな味をもとに、風味や香りに深みを持たせている。オーストラリアのカ
セラ・ワインズは、ビール、アルコール飲料、カクテルなどの代替産業を
見渡して、ワイン業界はこれまで意識していなかった課題を抱えている
のではないか、と思いいたった。「だれでも気軽に飲める、これまでにな
い楽しいワインをつくるという課題である。

 「四つのアクション」は、「取り除く」「減らす」「増やす」「付け加える」と
いう四つの問いを通じて、業界のこれまでの戦略ロジックやビジネスモ
デルに挑むことである。カセラ・ワインズは、四つのアクションをすべて
実践して、競争のない新しい市場空間の扉を開いた。発売したイエロ
ー・ワインは、価格、うたい文句、マス・マーケティング、ヴィンテージ、
伝統や格式、香りや味わい、品種は、デイリーワインと同等で、飲みや
すさ、選びやすさ、楽しさや意外性を加えたのである。横軸に上記の
ような項目をとり、縦軸に高低(レベル)をとって、視覚的に比べたもの
が「戦略キャンパス」である。

次に、ブルー・オーシャンの創造に欠かせない第三のツールは「アクシ
ョン・マトリックス」という、四つのアクションを補う分析手法である。この
マトリックスに四つのアクションを具体的に書き込んでいくと、差別化と
低コストの同時追求など、アクション・マトリックスをどう活かせばよいの
か、そこから何がわかるのかが垣間見えるとしている。

2.ブルー・オーシャン戦略をうまく策定・実行するための指針

第2部の第3章から6章では、ブルー・オーシャン戦略をうまく策定・実
行するための指針を示すとともに、それを分析手法と併せてどのように
実地に応用すればよいかを述べている。優れたブルー・オーシャン戦略
を策定するための指針は、大きく四つに分けられるが、第3章から第6
章ではそれらを一つずつ説明している。

第3章「市場の境界を引き直す」では、既存の枠組みにとらわれずに
多彩な業界の枠を集めて、競争のない市場空間を体系的につくり出し、
探索リスクを減らすための道筋を示す。具体的には、1)代替財や代
替サービスを提供する業界に目を向ける、2)さまざまな戦略グループ
を見渡す、3)従来とは異なる買い手グループに目を向ける、4)補完
財や補完サービスを見渡す、5)機能志向あるいは感性志向を問い直
す、6)時間軸を長くする、などである。

ブルー・オーシャン戦略の第一原則は、市場の境界を引き直して競争
を迂回することである。筆者たちは、市場の境界を引き直してブルー・
オーシャンを創造する体系的な方法があるかどうかを探った。その結
果、主として6種類のアプローチがあるとわかり、これらを六つのパス
と呼ぶことにした。六つのパスは、多くの企業が戦略のよりどころとする
下記の六つの前提を問い直す。これらの前提を無条件に受け入れ、戦
略を築くことで、たいていの企業はレッド・オーションの泥沼にはまって
いると指摘している。

パス1:「代替産業に学ぶ」。ネットジェッツは、一般の航空会社のフライ
トや航空機のチャーターという代替産業と比較して、ジェット機の短期リ
ース事業を立ち上げて、ブルー・オーシャンを創造した。

パス2:「業界内のほかの戦略グループから学ぶ」。テキサスを本拠と
する女性専用のフィットネスクラブ、カーブスは、従来型のヘルスクラブ
と家庭向けエクササイズ・プログラム、両方の決定的な利点を取り入れ、
その他のすべての要素をそぎ落とした。

パス3:「買い手グループに目を向ける」。デンマークの製薬会社ノボは、
糖尿病患者が血糖値を下げるために用いるインスリン分野で、カートリ
ッチの使いやすさを追求したインスリン注入器や使い捨て注入ペンを
発売し、ブルー・オーシャンを創造した。

パス4:補完財や補完サービスを見渡す、パス5:機能志向と感性志向
を切り替える、パス6:将来を見渡す。

第4章「細かい数字は忘れ、森を見る」では、それまでの延長を抜け出
してバリュー・イノベーションを実現するためには、戦略策定プロセスを
どう組み立てればよいかを示している。そこでのねらいはプランニング・
リスクを低減させることである。ビジュアルを用いた、四つのステップか
らなる戦略策定プロセスを提案している。

第5章「新たな需要を掘り起こす」では、ブルー・オーシャンを最大化す
るための方法を論じている。各企業は従来、既存顧客の嗜好によりよく
応えようとして、市場セグメンテーションに工夫を凝らしてきたが、本書
では逆に、需要をかき集める方法を示そうというのである。具体的には、
顧客ごとの違いでなく、非顧客層の大きな共通点に着目して、ブルー・
オーシャンの最大化をめざす。

第6章「正しい順序で戦略を考える」のテーマは、数多くの買い手にき
わめて大きな価値をもたらし、しかも利益を上げながら成長するための
頼りになるビジネスモデルを生み出すために、いかに戦略を組み立て
るか、である。ここではビジネスモデルにまつわるリスクの低減をめざす。

第3部の第7章と第8章では、ブルー・オーシャン戦略を効果的に実
行するための指針に話題を移している。特に第7章「組織面のハード
ルを乗り越える」ではティッピング・ポイント・リーダーシップを紹介。第8
章「実行を見すえて戦略を立てる」で扱うのは、実行を通じて得た教訓
を戦略プランニングに活かす、というテーマであり、主に公正なプロセス
という概念である。

本書の帯で、日産自動車のカルロス・ゴーン社長が、「本書を読むと、
企業間競争についての見方ががらりと変わるだろう。創造性をテコニし
て争いとは無縁な戦略を追及している本書は、ビジネスに携わる人々
の必読書である」といっているが、たしかに読みごたえのある戦略経営
の実践書である。

=======================
「情報と中小企業」メールニュース
発行:降旗清司
E-MAIL:furihata@techcm.co.jp
[技術創造マネジメント] http://www.techcm.co.jp/
[issf;情報と中小企業] http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
アドレス変更/配信停止 http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
本メールマガジンは下記のサービスで発行しています。
インターネットの本屋さん「まぐまぐ」http://www.mag2.com/
マガジンID:0000037775
メールマガジン「melma!(メルマ!)」http://www.melma.com/
マガジンID:m00019936
=======================

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2000-10-07  
最終発行日:  
発行周期:月刊  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。