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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.062

2005/08/04

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   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
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★2005/08/04 No.062    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
加熱水蒸気と亜臨界水の工業的利用
[今月のレポート]
ネットワーク型ベンチャー経営論
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  ■今月の一言■
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加熱水蒸気と亜臨界水技術の工業的利用

1.加熱水蒸気の工業的利用

7月18日と19日の日経新聞に、「変わる産学、広がる連携」の連載記
事が載っている。冒頭に、シャープの大ヒット商品となった新型オープン
「ヘルシオ」が取り上げられ、開発のきっかけは大阪大学との産学連携
だったと紹介されている。

ヘルシオは、高温の水蒸気を使って調理し肉などの脂や塩分を落とす
のが特徴で、もとになったのは同大学の宮武和孝教授が取り組んでい
た水蒸気で猛毒のダイオキシンを分解する装置。「小さなオーブンにこ
の技術を詰め込むのは難しかった」とのこと。

このいきさつをDND(大学発ベンチャー起業サイト)事務局の出口さんが
シャープ広報の飯澤潤子さんから取材し、DNDメルマガで次のように報
告している。

「過熱水蒸気のシステムは、業務用としてすでに存在していて、山口県
の産業技術センターが過熱調理の技術を使って、フグの一夜干しを大
量に仕上げていました。そこにシャープの開発者らが出向いて、試食す
ると「外はパリッとしていながら、内側はジュウシーでふっくら、とてもお
いしい」ことに気づき、この技術を一般家庭用に応用できないか?との
発想から、シャープの開発者の一人で、電化商品開発センター室長の
井上隆さんが、普段からお付き合いのある母校の大阪府立大学を訪ね、
前工学部助教授の大西忠一さん、そして開発に大きな功労があった宮
武教授らとさっそく共同研究の提携を結び、一般家庭用調理への応用
システムを確立し、脱臭機能、食品成分変化などを大西先生や宮武先
生らと実験を繰り返してきたという」

100℃の飽和水蒸気をさらに300℃まで過熱すれば乾いた蒸気となり、
蒸気温度を高温まで上げることができる。過熱水蒸気は無色透明、見
えない気体なので、湯気はでない。「オーブンの中で、ただ肉が焼けて
いく」という。それを業務用から100ボルトの家庭用調理器で実現する、
という試みが新発想であり、世界初らしい。

加熱システムは蒸気ボイラー、スーパーヒーター、加熱コンベアの3装
置の組み合わせで構成されている。この高温の乾燥水蒸気(加熱水蒸
気)は熱効率が高いこともあり、食品加工における加熱媒体として利用
できる。この「加熱水蒸気による食品の加熱」効果については、山口県
にある農水省の水産大学<http://www.fish-u.ac.jp/>食品化学科の浜
田盛承教授による、殺菌効果、油脂低減化効果などの報告がWEBに
載せられている。

この分野の研究者検索をすると、下記のような研究者が検出された。大
阪府立大学の宮武教授、吉田弘之教授(廃棄有機物の資源化)。大阪
市立大学の野邑泰弘教授(衣類や食品の乾燥、食品加工、殺菌処理)、
伊興田浩志講師。大阪産業大学の山田修教授(ダイオキシン類等で汚
染された土壌の処理)。

なお、東芝コンシューママーケティングが、セ氏300度の水蒸気で加熱
するスチームオープン「石釜オープン」を8月1日に発売すると発表した。
加熱水蒸気気流式減菌法はすでに多くの企業で使われており、横浜の
ベンチャー企業で加熱水蒸気乾燥装置を活用したおからパウダーの開
発を行っている。

2.亜臨界水・超臨界水技術

水は固体・液体・気体の3つ状態で存在する。水を密封容器に入れて
加熱していくと、気体の密度は増加し、ついには気体と液体の密度が
等しくなり、その境界が消失し、水(液体)でも水蒸気(気体)でもない状
態となる。この状態を超臨界、この流体を超臨界水、境界が消失する
点(温度374℃、圧力22.1MPa)を臨界点という。また臨界点に近い領
域の水を亜臨界水という。亜・超臨界水中では、物質の分解(加水分
解・熱分解)、酸化(酸化剤共存下)、再結合、重合など多様な反応が
起こるが、温度・圧力・共存物質などの操作により特定の反応を優先さ
せることができる。亜臨界水の特徴は、有機物の溶解作用と強い加水
分解作用がある。この亜臨界水の性質を利用することで、環境にやさし
い廃棄物の再資源化が可能である。

高温高圧の水(亜臨界水)には、誘電率の減少による有機物の溶解作
用と、イオン積の増加による加水分解作用がある。水熱反応はこの亜
臨界水の性質を利用した反応で、高分子の有機物が低分子化されるこ
とで、固形分が液状化され、難分解性物質が易分解性物質となり、種々
の後処理が可能となる。湿式酸化や好気処理との組合せにより、有機
物を水と炭酸ガスに分解でき、嫌気処理と組合せることにより、バイオ
ガス(メタンガス)を回収できる。また、無機物を含む廃棄物の処理では、
水熱処理後の液を固液分離することにより、無機物を回収できる。亜臨
界水の廃棄物分野への適用は、1930年代にF. J. Zimmermanが湿式
酸化法(Zimmerman Process)を用いてパルプ廃液からバニリン(香味
料)を生産する方法を開発したことに始まるとのこと。

宇部日報紙によると、従来の処理ラインに、有機性廃棄物を低分子化す
るシステムを加え、課題を克服したのが宇部工業高等専門学校の村上
定瞭・物質工学科教授「有機性廃棄物のエネルギー・資源回収型処理
プラント」研究開発。経済産業省の03年度地域新生コンソーシアム研究
開発事業に採択された。例えば、生活排水は好気性微生物を用いて浄
化されるが、その際に汚物を食べて微生物が増殖して廃棄物となる。こ
れが汚泥と呼ばれるもので、亜臨界水で処理し、次にメタン発酵により
バイオガスに変換してエネルギーを回収する。実は微生物や植物の細
胞壁は、セルロース鎖でがっちり連結された分解がやっかいなもの。従
来のメタン発酵では数十日を要し、分解率も50%程度と効率が悪かった。

村上教授が目をつけたのが、セルロース鎖を切断する能力のある亜臨
界水を使い、有機性廃棄物を単糖、アミノ酸、脂肪酸、リン酸などの低分
子にする方法。水を226気圧下で温度を374度まで上げると、水でもな
い蒸気でもない均一の流体になる。この臨界点より少し温度、圧力が低
い熱水が亜臨界水と呼ばれる。これこそが、有機物の分子を低分子化
する“魔法の水”である。簡単に言うと、固形の食べ物を胃や腸で順次
消化して吸収するには時間がかかるが、いきなり栄養液を飲むとすぐに
体内へ吸収されるようなもの。汚泥を、亜臨界水で“スープ”にしてやるこ
とで、発酵は数日で、分解率も約95%に上げることができた」と村上教授。
従来の焼却方法に比べ原油換算で年間260万トンの省エネになり、処
理コストも半減。実用化後は、3000億円と言われる有機性廃棄物処理
市場の半分以上のシェアを確保すると試算する。

大学の研究としては、大阪府立大学の吉田弘之教授「亜臨界加水分解
技術を応用した魚のあらからの再利用技術」、「有機塩素系廃溶剤の脱
塩素・再資源化技術」「食品廃棄物の高速メタン発酵パイロットプラント」。
なお、大阪府立大学の21世紀COEプログラム(拠点リーダー:科学工
学分野吉田弘之教授、http://www.chemeng.osakafu-u.ac.jp/)「水を反応
場に用いる有機資源循環科学・工学」は、亜臨界・超臨界、過熱、超音波、
電磁波、放射線などの各種技術の利用がテーマ。熊本大学の後藤元信
教授の「亜・超臨界流体を利用した天然物からの有価物または有害物の
抽出・分離技術の開発」。豊橋技術科学大学の藤江 幸一教授「高温高
圧水反応による廃棄物資源化技術の開発」などがある。

なお、超臨界状態に保たれた燃焼炉に家畜排泄物を投入し、燃焼させる
と、燃焼後は灰と水、窒素ガスなどに分解される。処理時間は30分ほど
という。現在排泄物の処理に使われる発酵では処理が済むまでに1ヶ月
以上かかるうえ、廃水処理が必要だった。この分野では、静岡大学佐古
教授と(株)東京衡機との「高効率超臨界水酸化処理装置の開発」がある。

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 ■今月のレポート■
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ネットワーク型ベンチャー経営論

1.ネットワーク型組織への段階的発展

 「シリコンバレー[知識核融合]のメカニズム」という副題がついたこの
本(末松千尋アドバンズ・コンサルティング・ネットワーク代表・千本倖生
慶応義塾大学教授著、ダイヤモンド社発行)は、シリコンバレーが実現
するネットワーク型ベンチャーのビジネス・モデルを解き明かすことを目
的としている。シリコンバレーの企業群を表すキーワードは、「ベンチャ
ー・ビジネス」と「ネットワーク」の二つであるが、本書においてはこの二
つを網羅した「ネットワーク型ベンチャー・ビジネス」という用語で統一し
て使用している。ネットワーク型“ベンチャー・ビジネス”の差別性は「組
織」(カルチャー、価値観、構造、システム、人材、スキルなどが含まれ
る)というビジネス・モデルに依存する普遍的なものであり、本書はこの
「組織」に焦点を当てて扱ったものである。

本書においては、前記の「組織」問題について、まず第2章で「組織原
理(組織が最も基本とする考え方、価値観)」に関して、第3章で「人的
資質」について、第4章で「カルチャー」について説明し、第5章でそれ
らの根幹をなすキー・スキルとしての「システム思考」について解説して
いる。第7章では、ベンチャー・ビジネスやベンチャー・キャピタル、大学、
自治体などインキュベーターがネットワーク型ベンチャーを実現する上
での具体策について提案を試みている。ここでは、第2章と第7章を簡
単に紹介したい。

第2章の「ネットワーク型組織への段階的発展」では、著者の一人(末
松)が提起している組織モデルを適用して、四つのステージに分けて組
織モデルを説明している。このモデルにおいて、四つのステージ(「自然
発生」→「集中」→「分散」→「統合」)の最終段階(「統合」)に位置するネ
ットワーク型組織は、前三つの各ステージの経験、学習、理解、卒業を
経て最後に到達することになる。各ステージで学習すべきものは「組織
原理」であり、表面的に組織形態だけを模倣することも意味を持たない。
その上位移行が困難だからこそ、その組織事態が決定的な差別要因と
なり、さまざまな領域での戦略を成功させるのである。

組織が生まれた最初の段階である「自然発生の段階」においては、通
常1人、あるいは少数のリーダーによりあらゆる意思決定が行われる。
「自然発生的」に生まれた直後には、人的資源に枯渇しているケースが
圧倒的であるために、この形態は特別に意識しないでも必然的に起こり
うることである。この段階では、組織規模が比較的小さく、人数も限定さ
れるために、「だれが何をするかといった役割分担」を過度に進めること
はかえって非効率をもたらす。また「自然発生」の段階において、その
未熟な管理機能を補うためには、同質性の維持が極めて重要になる。
この組織原理は組織が小さい期間においてのみ機能するが、組織が
拡大した時点では、明らかに対応が困難、あるいは不可能になる。

システムに対する理解が芽生え、活用するノウハウが蓄積し、拒絶感
覚がなくなれば、それは「集中の段階」に移っていると考えることができ
る。外部機関へのアウトソーシングを実行するにも、システムは不可欠
である。アウトソーシングの真の成功の条件は、アウトソーシングする
業務を完全にシステム化してアウトソーサーを十分に管理できる状態に
置くことである。このアウトソーシングを活用する能力は、ネットワーク型
組織の形成において、極めて重要になる。全体の統一のために活動や
思考を拘束する側面があるシステムに対して、拒絶感が発生することは
人間に共通する感覚として避けられない現象であり、組織内の多くがそ
のような価値観を持っている「自然発生」の段階を「集中」の段階に移行
させることは、システムを拒絶する風土を変えることになり、大変な組織
エネルギーが必要となる。

 「分散」の段階においては、「集中」の問題を解決するための施策とし
て、「システムの開発・運用管理の責任と権限」を積極的に委譲すること
が不可欠という組織原理が浸透している。そしてそのためには現場の
能力(「経営判断力」「経営者の感覚」「個の確立」など)が十分に開発さ
れていることが必要であると認識されている。「分散型組織」においては
利益責任と権限が徹底的に明確化されている。極めて明確な責任と権
限により、各ユニットは高いモチベーションで活動にのぞみ、現場にお
いて迅速かつ的確な意思決定が行われるようになる。分散ユニットの形
態のもう一つの利点は、ユニット間で競争が起きることである。分散は、
各ユニットが事業の推進に必要なあらゆる機能を完備することにより完
成する。

 「分散」と「統合」の最大の違いは、前者がシステムの開発・運用管理
における部分最適しか実現できないのに対して、後者は各分散ユニット
の合意のもとに全体最適をも実現できることにある。合意形成のプロセ
スがあることが「集中」とは異なるポイントであり、そのためには極めて
高い合意形成能力が前提となる。「統合」の段階において実現すべき全
体最適とは、具体的には各ユニット間の「資源共有」「機能分散」「負荷
分散」の三つである。「統合」のネットワーク型組織は、「分散」の大企業
が上位「移行」して形成することも可能だが、「集中」「分散」「統合」の組
織原理を習得した個人やグループが、それぞれのなんらかの経験と知
識からベンチャー・ビジネスのネットワークとして「始まり」から形成する
ことがあり、特にシリコンバレーではその後者が一般的である。

2.ネッワーク型ベンチャー構築への提言

分散の段階においては、「競争」「多様性」「独立、自律、自立」が徹底さ
れなければならない。「大量生産大量消費型市場」が存在しない場合は、
変化の方向性は予測することができないため、全体が一つの方向に突
き進むことは、集団絶滅のリスクを限りなく増大させることになる。それを
回避し、低成長市場において、生き残っていくためには、ユニット分散、
多様化させ、それぞれがシステムを構築し、競争し、環境に合致したユ
ニットが生き残っていくという「分散の原理」の導入が必要になる。その
際に問題となることは、子が親から独立しようとするときのものとまったく
同じであり、「独立、自律、自立」を徹底することが重要である。大企業の
“優秀な”人材を活用すべしという意見もあるが、そもそも日本の大企業
に人材は豊富であるとは考えないほうが無難である。日本の大企業では、
たしかに自然発生、集中の原理における“優秀な”人材は多いが、それ
が集中、分散、統合の組織原理においても有能であるという保障はない。
人材の判断の基準としては、集中、分散、統合をすべて理解しうる「シス
テム思考」能力が高いか否かにつきる。

ネットワーク型ベンチャーは、集中、分散の原理を確実に学習した上で、
「独立した組織間のシステム化」という難題に取り組む。統合の原理を
確実に実行できる組織のみが実現できるものであり、高いシステム思
考能力を有するメンバーが、長期的互恵、コラボレーション、オープンと
公平性、創造性と付加価値などの、極めて困難な協調的組織活動を行
う。

ネットワーク型ベンチャーを支援する組織・個人の役割や意義は小さく
ない。しかし決して甘えの構造に立脚しない支援を心がけることが重要
である。シリコンバレーは自然発生的に有能な人材が集まり、自然発生
的に統合段階の環境が生まれ育ったのであるが、それを人為的に管
理することにより、より迅速な実現が可能となる。統合段階の環境は、
集中や分散の段階の原理から発生する価値観により、容易に破壊され
るものである。第三者として、統合の環境を整備、維持する以下のよう
な役割は大きいと考えられる。1)的確な人材の選別・投入・紹介、不適
格な人材の排除。人材は極めて厳格に選別されるべきだが、その絶対
数を多くする努力も必要である。2)人材の集中化(全員でなく一部の人
間のみ、特にキーパーソン)、3)ネットワーク環境の構築。

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