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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.061

2005/07/07

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   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
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★2005/07/07 No.061    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
燃料電池の産業化と中小企業
[今月のレポート]
経営のための実践的MOT
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  ■今月の一言■
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燃料電池の産業化と中小企業

1.広域関東圏ナノテクビジネス交流会
6月10日に行われた第3回広域関東圏ナノテクビジネス交流会(〜
ニーズからつかめ新産業創造戦略を!〜、関東経済産業局ほか主催)
に参加した。燃料電池の分野で中小企業が進出するテーマにはどの
ようなものがあるのかという関心があったからである。基調講演として、
山梨大学クリーンエネルギー研究センター長の渡辺政廣教授の「燃料
電池の産業化に於けるナノテクノロジーの必要性」〜ナノテクノロジー
で燃料電池をひもとく〜と題する基調講演と、(株)東芝、東京ガス(株)、
(株)本田技術研究所、日本電気(株)の研究開発部門の担当者による
大手企業ナノテク技術プレゼンテーションがあった。

渡辺教授は、序論(燃料電池への期待、その原理・構成)、実用化への
課題と技術ロードマップ、山梨大学に於けるナノテクからのチャレンジ
について講演された。最初に、燃料電池の種類を説明した後、固体高
分子型燃料電池(PEFC)を取り挙げて、燃料電池スタックの構造、燃料
電池システムの構成、PEFCの用途、燃料電池技術開発ロードマップ
概要版を紹介された。

ロードマップは、第2回燃料電池・水素技術ロードマップ委員会の資料
が、NEDOのホームページ
http://www.nedo.go.jp/iinkai/gijutsu/gijutsu/roadmap/2/gaiyou.pdf
に公開されている。講演では、概要版のPEFC(定置用)技術開発の展
開、PEFC(自動車用)技術開発の展開、DMFC (メタノール直接型、PC,
携帯用)技術開発の展開、SOFC(固体酸化物型、定置用)技術開発の
展開等を紹介された。

後半では山形大学の研究について説明された。次世代燃料電池プロジ
ェクトの研究開発項目には次のようなテーマがある。

1)高性能・低コスト高温運転型燃料電池材料の開発と実用性評価
課題:燃料水素製造・精製用触媒、高温作動電解質膜、新型膜/電極
接合体(MEA)、高分散・高活性合金電極触媒、小型単セル試験、材料
の耐久性評価、模擬スタック試験・評価

2)メタノール直接型燃料電池材料開発と実用性評価
課題:高導電率/低燃料透過電解質膜、新型膜/電極接合体(MEA)、
高分散・高活性合金電極触媒、小型単セル試験、材料の耐久性評価、
模擬スタック試験・評価

電池効率アップ・触媒の低減、排熱除去・利用効率の向上、電解質の
低コスト化を目的とした高温作動電解質膜の開発、システム管理の簡
素化、低コスト化を目的とした無加湿・低加湿電解質膜の開発。高効率
化のため電極反応をスムーズに進行させるための高性能電極触媒の
開発などを紹介された。なお、これらの研究の概要は、山梨大学燃料
電池研究グループのホームページ
http://www.clean.yamanashi.ac.jp/~mwatanab/>にわかりやすく紹
介されている。

2.燃料電池実用化・普及への課題

プレゼンテーションでは次のような紹介があった。
1)(株)東芝の五戸氏:「携帯機器用小型燃料電池の概要」
長時間駆動への要求(高エネルギー密度(高濃度燃料)、燃料の補給
で連続運転)、新しい電池が新しい機器やサービスを創出(特徴を活か
した使い方の提案)

2)東京ガス(株)の金子氏:「家庭用燃料電池と水素製造に対するナノテ
クノロジー技術への期待」
家庭用PEFCコージェネへの取り組み(商品コンセプト、自社技術開発、
家評価試験)、次世代型水素製造装置の開発、燃料電池・水素へのナ
ノテクノロジー技術の適用

3)(株)本田技術研究所の岡本氏:「ホンダにおける燃料電池乗用車の
開発」
車を取り巻く環境問題、HONDAにおける燃料電池車開発の経緯、燃料
電池車の開発状況、燃料電池車の将来に向けて

4)日本電気(株)の久保氏:「NECにおける携帯用燃料電池の開発」
携帯用燃料電池への期待、カーボンなのホーンの電極応用、携帯用燃
料電池の試作例、携帯用燃料電池の課題と展望

経済産業省の燃料電池実用化戦略研究会の報告によると、
http://www.meti.go.jp/report/data/g10122aj.html>燃料電池実用化
・普及への課題として次のような課題を挙げている。

(1)燃料電池の基本性能の向上
 燃料電池本体(スタック)、改質器、水素燃料貯蔵、全体システム等に
ついて、高効率化、耐久性等の向上に向けた技術開発が必要。

(2)経済性の向上
・燃料電池の市場自立化と普及を早期に実現するためにも、競合する
機器・設備と競争力を有するレベルまで経済性が向上することが必要
(現行の技術レベルでは数百万円/kW程度)。

・自動車用燃料電池は、現在の自動車エンジンのコストと同程度とする
ことが必要であり、1kW当たり5,000円(25万円/台)の実現が目標。

・定置用燃料電池は、家庭用給湯器を代替し、更に発電器の機能が付
加されている価値を考慮すると、システム価格(kW)で1台当たり30〜
50万円の実現が目標。

・固体高分子電解質膜製造の低コスト化、白金触媒の使用量低減によ
る低コスト化等が課題。

燃料電池本体(スタック)、改質器、水素燃料貯蔵、全体システム、補機
類(ポンプ、ブロア、弁類、センサ、流量計)等のいずれかに関連した分
野に活用できるコア技術を有する企業なら、進出可能な将来の市場に
狙いを定めて、自社のコアを活用した高効率化、耐久性等の向上に向
けた技術開発に大学や他企業と連携して取り組むこともできよう。異業
種企業が関連市場に進出したいと調査を始める場合、とりあえず実際
にスタック等を購入して、簡単な燃料電池を組み立て、関連部品や応用
製品の試作をすることも考えられよう。

このナノテクビジネス講演会も、できればベンチャーや中小企業におけ
る開発の現状紹介を加えていただければ、「燃料電池が拓くビジネスチ
ャンス」という副題によりふさわしいものになったと思われる。インターネ
ットで調べると、燃料電池を販売している企業がいくつか検索される。家
庭用や業務用燃料電池を製造販売している企業のほか、(株)FC-R&D
http://mpn.cjn.or.jp/mpn/contents/00002047/index.html>のように、
燃料電池スタック、水素吸蔵合金ボンベ・圧力レギュレータや教材、簡単
な応用製品を販売しているところもある。

2万5000円を支出して、ソーラーパネル、燃料電池からなる燃料電池
自動車学習キットを購入したが、約100pのテキストがついて、実験器
具の組立、実験、データの収集、データ解析、理論学習という手法で進
めるようになっており、高校生ぐらいから自分で実験を通じて、燃料電
池がどのように動くのかまたその原理は何かということを理解できるで
あろう。

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 ■今月のレポート■
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経営のための実践的MOT

1.テクノロジー/イノベーション・マネジメント

本書「科学経営のための実践的MOT」(日経BP社出版)の著者である、
スイス連邦工科大学教授で、北陸先端科学技術大学院大学のプレジ
デンシャル・アドバイザーも務める、ヒューゴ・チルキー教授は、「企業
科学」の構築に強い熱意を持っている。今の経営学は企業のごく一部
の断面しか捉えてなく、どの経営学の書物にも技術経営(MOT)の視点
が欠如していると指摘して、「企業科学」の確立を目指している。

現在取られている一般経営へのアプローチは、技術とイノベーションを
事実上無視しているとし、その危険で憂うべき欠陥を解消するための長
期的展望として企業科学の概念が検討されている。すなわち、企業科
学は、様々な学術分野(マクロおよびミクロ経済学、社会学、法学、環
境学、自然科学、工学、労働科学、等)の知識に基づいて企業の現実
が描写されており、「企業科学」の本質は横断的統合の科学であるとい
える。

本書の最大の特色は実践的であることである。いかにして、現状の技
術マネジメント・システムを活かしながら、インテリジェンス能力を高め
るかについて、具体的な方策を示している。本書には、実践するための
具体的な方法論や手法、ツールも多く提示されている。大きなテーマで
は、「統合的テクノロジー/イノベーション・マネジメント(ITM)」であり、
その中には、オポチュニティー・ランドスケープ法(OL)や戦略技術ロー
ドマッピング(TRM)などが重要な方法論として位置づけられている。

本書の第2部ではITMの概念を説明し、他のあらゆるマネジメント機
能と同様に、技術マネジメントも実際の成功は有効なマネジメント概念
(コンセプト)とツールがあるかどうかにかかっている。今後は技術マネ
ジメントの中に組み入れるというビジョンに従って、一般経営のツールと
最も親和性のある技術マネジメントツールを開発し、それを応用する試
みが行われるであろう。そうすることにより、技術マネジメントの課題が
機能的・階層的な境界を越えて十分に理解できるような、最良の必要
条件が生まれる可能性があると指摘している。そして、このような必要
条件の例を示していきたいと思うとして、37の事例をあげている。また、
そのうちいくつかは第3部(第4章から第17章)で詳しく説明している。

第3部の内容は、3・1「明確化と選択」では、テクノロジー・インテリジェ
ンス、技術ロードマップ(TRM)、破壊的技術の評価および導入。3・2「開
発と獲得」では、技術移転、技術的コア・コンピタンスの開発、買収によ
る技術ソーシング、オポチュニティー・ランドスケープを用いたコンピタン
ス・マネジメント(OL:機会展望法)。3・3「技術の活用と保護」では、技術
の社外展開、テクノロジー・マーケティング組織の設計と実施、特許の価
値判断。3・4「管理」では、技術戦略を成功させる実践法。3・5「技術イ
ノベーション」では、ラディカル・イノベーション・プロセスの初期段階のマ
ネジメント、イノベーション・アーキテクチャーに基づくイノベーション戦略
開発プロセス。最後の3・6「新技術立脚型企業におけるテクノロジー/
イノベーション・マネジメント」では、スタートアップ企業向け技術マネジ
メントを取り上げている。ここではTRMとOLを簡単に紹介する。

2.技術ロードマッピング(TRM)

技術ロードマップとは、一般に時間を軸にした図表の形で示され、商業
的視点と技術的視点を含む複数の階層で構成されたものである。ロード
マップを利用することにより、市場や製品および技術の展開を探知する
ことができ、また様々な視点を関連づけることも可能になる。的確に作成
されたロードマップには、予想される企業の将来像が視覚化されており、
組織全体の理解やコミュニケーションがしやすくなり、同時に、事業戦略
におけるあらゆる技術的側面に対する、社内共通の意図や責任(コミット
メント)が表されている。

技術ロードマッピングとは、技術ロードマップを作成し、伝達し、積極的
に利用するプロセスのことである。技術ロードマッピングは、マーケテ
ィングや生産、研究開発、財務など様々な組織的視点を取り入れる統
合的なプロセスである。これは技術予測、プランニング、マーケティング、
意思決定およびその管理という、全体論的かつ統合的な問題に焦点を
合わせている。

技術ロードマッピングにおける社内の視点と社外の視点の統合:企業が
急速かつ複雑化の一途をたどる変化の中にある今日、優れた技術ロー
ドマップを単独で開発することは不可能に近い。ロードマッピングの協力
の場として明らかに重要といえるのが産業ロードマッピングのイニシアテ
ィブである。産業ロードマップは、一般に、その産業内の企業、研究機関、
協会、大学などが協力して作成し、その産業の進路、変化の速度、開発
の必要条件または制約を予測するものである。中での優れた産業ロード
マップは、その産業のビジョン、産業の主要なドライバー(推進力)、業績
の特徴、最も重要な技術などを盛り込んでいる。この産業ロードマップの
ように既に統合されたロードマップは、企業内のあらゆるタイプの戦略的
ロードマッピングにとって理想的な土台となる。

技術ロードマッピングの調整とロードマップの同期化:筆者は、企業が大
規模で包括的なロードマップをたったひとつしか作成しないことを絶対に
勧めない。そうするのではなく、戦略的に焦点を絞り込んだ関連性があ
るロードマップを幾つか作成して、それらを統合的なロードマップのセット
とし、そのセットを戦略的目標を調整するために組織全体で利用すること
を勧める。

技術ロードマッピングの実施を促進させるものは、重要な事業領域(実
施の成功の鍵を握るのは、経営トップ陣に注目されコミットメントが得ら
れるかどうかである。重要性の低い事業でロードマッピングを実施する
と、低い評価を得ることになる)、多額の投資(全体の投資額が多くなる
につれ、潜在的産出高(効果)は増大する)、競争の脅威(ロードマッピ
ングを手がかりとして社外からの脅威に適切に対応していくことが成功
に繋がる)、技術と事業の相互依存性(技術と事業の間に潜在的な影響
力や相乗効果がある)である。

3.オポチュニティー・ランドスケープを用いたコンピタンス・マネジメント

企業が成功を続けるためには、将来必要となるコンピタンスが既に今か
ら開発されていることが重要である。そのためには、どんなコンピタンス
が必要になるかを知る必要がある。どのようなコンピタンスが必要になる
かは、一方では企業を取り巻く環境の展開状況によって決まる。その一
方で、コンピタンスの構築は、企業内の戦略に左右されるものでもある。
このような社内への視点と社外への視点を統合して将来のイノベーショ
ンに繋げるための支援ツールがオポチュニティー・ランドスケープ(OL:
機会展望法)である。

オポチュニティー・ランドスケープは、スイス連邦工科大学(ETH)の企業
科学センターで開発された。まず初めに、現在の知識ドメインの一覧表
を作る。そして、将来的に関連性を持ちうるような領域を、この一覧表の
追加的ドメインとする。ドメインは、基本的にトップダウン(経営首脳が作
成する企業戦略をもとに)とボトムアップ(研究開発、マーケティング、製
造といった異なる部門に属する異なるマネジメントレベルの従業員をワ
ークショップに)の2つの方法で確定できる。

知識ドメインは、将来構築すべきコンピタンス、および維持してさらに発
展させるべきコンピタンスに相応する。すべての知識ドメインが常に同
程度の重要性を有するわけではないため、各領域について観察の深
度を定める必要がある。この観察深度としてOLが想定しているのは、
重要性の高い順に、ゲーム・フィールド(競技場)、サブスティチュート・
バンク(補欠席)、オフスプリング(所産)の3つである。また、視覚化す
ることによってOLが顔をもつようになる。

確定した知識ドメインに対して、それぞれ一人ずつゲートキーパーを定
める。ゲートキーパーは自分の知識ドメインにおける事実と傾向を観察
する責任を持つ。それらを観察する際には、技術、市場、競争という3
側面を網羅しなければならない。ゲートキーパーは、情報源(ジャーナ
ル、データバンク、公式なネットワーク、非公式なネットワーク)を定義し、
その情報源を強化し維持していかなければならない。ゲートキーパーは
関係する意思決定者たちに脅威となる事象、または好機を生む事象を
知らせねばならない。このようなOL情報が技術ロードマッピングを直接
的に支え、結果的には間接的にも企業戦略と技術戦略を支える。

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   ■編集後記■
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太陽系生成の謎を探るため米航空宇宙局(NASA)が進めてきた彗星衝
突実験が4日成功、画像が公開されました。彗星の内部には太陽系が誕
生した約46臆年前の物質が当時のまま含まれているとみられており、探
索機から送られた画像を解析した結果が期待されます。

テンペル彗星は火星の軌道の外側を回っており、今年1月に打ち上げられ
た探索機ディープインパクトは3日午前2時、観測機を発射。約24時間後に
地球から約1億3000万キロ(月までの約342倍)の地点で、彗星をとらえ、衝
突したとのことです。衝突の瞬間、せん光を放った瞬間の映像が公開され
ました。

彗星の内部には太陽系が誕生した46億年前の物質がそのまま変化せずに
残っている可能性が高いといわれています。衝突時に飛び散った物質など
の調査から、太陽系生成のシナリオだけでなく、地球にどのように有機物や
水が生まれ、生命誕生につながったのかを解明する手がかりになると期待
されています。

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創刊日:2000-10-07  
最終発行日:  
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