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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.060

2005/06/02

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   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
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★2005/06/02 No.060    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
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もくじ
[今月の一言]
日米の優良企業生存の法則
[今月のレポート]
イノベーションの法則
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  ■今月の一言■
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日米の優良企業生存の法則

1.ビジョナリーカンパニー〜時代を超える生存の法則〜

コリンズほかが書いた「ビジョナリー・カンパニー」(ジェームス・C・コリン
ズ/ジェリー・I・ポラス著、山岡洋一訳、日経BP出版センター発行)は、
設立年が平均で1897年という、時の試練を乗り越えてきた真に卓越し
た企業を選び出し、設立から現在に至るまでの発展と軌跡をあますと
ころなく調査分析したものである。このプロジェクトの全体を通じて、著
者たちはこう問い続けた。「真に卓越した企業と、それ以外の企業との
違いはどこにあるのか」

ビジョナリー・カンパニーとは、ビジョンを持っている企業、未来志向の
企業、先見的(ビジョナリー)な企業であり、業界での卓越した企業、同
業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与え続けてき
た企業である。重要な点は、ビジョナリー・カンパニーが組織であること
だ。ビジョナリー・カンパニーは、商品のライフサイクルを超えて、ずっと
繁栄し続ける。

著者たちは、経営のはやり言葉や流行を超えるものを見つけたかった。
傑出した企業に、時代を超えて、一貫して見られる経営理念を見つけよ
うとした。調査が進むに従って、今日の「新しい」経営手法も「革新的な」
経営手法も、決して新しくないことが明らかになった。従業員の持ち株
制度、権限の委譲、不断の改善、総合的品質管理、経営理念の発表、
価値観の共有といった今日の経営手法の多くは、場合によっては1800
年代にはじまった慣行に、新しい衣装をまとわせたものにすぎない。

調査結果の次のような九つの基本理念は、第2章からだい10章にわ
けて、紹介している。ただし、最終章の「一貫性」は、本書の全体にわた
って説明してきた中心的な概念を、改めてまとめて提示しているもので
ある。

1)時を告げるのではなく、時計をつくる:この章では、ビジョナリー・カン
パニーの創業者が概して時を告げるタイプではなく、時計をつくるタイ
プであったことを明らかにしている。ビジョナリー・カンパニーをつくり、
築くには、すばらしいアイデアも、カリスマ的指導者も、まったく必要な
いことがわかった。

2)利益を超えて:基本理念がしっかりしていることが、ビジョナリー・カ
ンパニーの成長、発展、転換にとって、とくに重要になっている。ほとん
どのビジョナリー・カンパニーにとって、「株主の富を最大限に高めるこ
と」や「利益を最大限に高めること」は、大きな原動力でも最大の目標で
もなかった。

3)基本理念を維持し、進歩を促す:基本理念が重要とはいえ、それだけ
ではビジョナリー・カンパニーは生まれない。基本理念は大事に維持し、
守るが、基本理念を表す具体的な行動は、いつでも変更し、発展させな
ければならない。

4)社運を賭けた大胆な目標:ビジョナリー・カンパニーは進歩を促す強
力な仕組みとして、ときとして大胆な目標を掲げる。例えば1952年、ボ
ーイングの経営陣は危険を承知で賭けに出た。民間航空機市場で大手
になるという大胆な目標を掲げ、ジェット機をつくった。

5)カルトのような文化:ビジョナリー・カンパニーに比較対照企業より顕
著にみられる特徴のなかに、カルトと共通した点が以下の四つあること
がわかった。「理念への熱狂」「教化への努力」「同質性の追及」「エリー
ト主義」

6)大量のものを試して、うまくいったものを残す:ビジョナリー・カンパニ
ーの社史を調べていったとき、各社でとくに成功した動きのうちいくつか
が、綿密な戦略計画に基づくものでなく、実験、試行錯誤、臨機応変に
よるものであったり、文字通り偶然の結果であったりするのに驚かされた。

7)生え抜きの経営陣:ビジョナリー・カンパニーは比較対照企業よりはる
かに、社内の人材を育成し、昇進させ、経営者としての資質を持った人
材を注意深く選択している。両者の差をもたらしている最大の要因は、
経営者の質ではない。重要なのは、優秀な経営陣の継続性が保たれて
いること、それによって基本理念が維持されていることなのだ。

8)決して満足しない:ビジョナリー・カンパニーでは、もっとも大切なこと
は、「明日にはどうすれば、今日よりうまくやれるのか」である。ビジョナ
リー・カンパニーが飛びぬけた地位を獲得しているのは、将来を見通す
力が優れているからでも、成功のための特別な「秘密」があるからでも
なく、主に、自分自身に対する要求がきわめて高いという単純な事実の
ためである。

9)一貫性:ビジョナリー・カンパニーの真髄は、基本理念と進歩への意
欲を、組織のすみずみにまで浸透させていることにある。ビジョナリー・
カンパニーは一貫した職場環境をつくりあげ、相互に矛盾がなく、相互
に補強し合う大量のシグナルを送って、会社の理念と理想を誤解する
ことはまずできないようにしている。

2.最強のジャパンモデル

先日、「最強のジャパンモデル」(柳原一夫慶応大ビジネススクール教
授、大久保隆弘同MBA著、ダイヤモンド社)を読んだ。この本の研究
の発端は、バブル経済が本格的に崩壊した90年代半ばに遡る。不況
下にあって、業績を著しく損なう企業群が見受けられる一方、景気の影
響を受けずに「元気で」社会的使命を果たす企業群がある状況に着目
したものとのことである。構造的な環境変化にも耐える企業体質を備え
ている企業が、長引く不況のなかでひときわ鮮明になったのである。

このような企業群に対して、文献調査やインタビュー、アンケート調査
を試みている。調査の結果、それら企業には「長期的に競争力を保つ
仕組み」が内在しており、「いかなる環境変化にも適応するための仕組
み」「長期にわたって経営に一貫性を持たせる仕組み」の存在が読み
取れた。著者たちはそのタイプの企業を「長寿型企業」と名づけた。こ
の本では、「ストック型」企業モデルとして、この長寿型企業を紹介して
いる。時間が経過するにしたがって、競争優位性を蓄積する仕組みが
備わっているゆえに、「ストック型」と命名した。著者たちは「ストック型」
経営モデルの特徴として、以下の八項目をあげている。

1)問題解決の先送りをしない:対症療法的な解決策をさけ、本質的な
解決をする。
2)個人的な能力に依存せず、システムとしての競争優位を確立:製品
やサービスをつくり出す技術やノウハウ、あるいはシステムの差別化。
3)規模拡大・シェア拡大を重視しない:製品やサービスを差別化したニ
ッチ市場への進出。
4)短期環境変化に対して安定的な企業システム:競って需要を追いか
けるよりも、ニッチ市場でダントツの競争優位。
5)環境の構造変化に適応する企業システム:短期的にはできるかぎり
リスクを避けるが、企業システムの構造変化には挑戦的なリスクテイク
を行う。
6)本業重視:多角をする場合も関連多角化。
7)社員重視の経営風土と学習する組織:学習する組織と、学習した成
果をシステム化する企業。
8)経営理念の浸透と継承:全社員に経営理念が浸透し、それによって
組織を目的に向かって結集する。

この本では、短期的成果や株主重視に代表されるとしたアメリカ型経
営を「フロー型」として、ここに紹介した「ストック型」と対峙している。ここ
で、フロー型の特徴は、短期間の成果の重視、無差別な競争、商社に
よる富のひとり占め、繰り返される買収と合併、雇用の不安定性である。
しかし、本書で紹介されている優良企業の特徴をみたとき、先に紹介し
た、コリンズほかの「ビジョナリー・カンパニー」を思い出した。最強の企
業モデルは、日米ともによく似ており、共通する理念や特徴を持っている
ようである。

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 ■今月のレポート■
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イノベーションの本質

1.13の開発物語

野中郁次郎一橋大学国際企業戦略研究科教授とジャーナリストの勝
見明氏が書かれた「イノベーションの本質」(日経BP社発行)は、数々
のヒット商品を生み出した「知識創造」のプロセスを人と組織の視点か
ら捉えようとするものである。人をコスト要因として見るのではなく、知
を生み出し、付加価値を高める主体的存在としてとらえる。その創造力
によって生産革新を絶え間なく繰り返していく。日本が生んだ優れた知
識資産であるセル生産方式は、ソニーの井深氏が生涯を通じて追求し
た理念があったのである。

本書は、人と組織に関するマネジメントの専門誌「Works」の連載「成功
の本質」の13回分をまとめ、単行本用に改めて加筆・再編成したもの
である。13のケースのうち、「物語編」は勝見氏が、「解釈編」は野中氏
がそれぞれ担当している。

第1章の「製品の「コンスプト」にとことんこだわる」では、1)サントリーの
カラダ・バランス飲料「DAKARA」、2)本田技研工業の「アコードワゴン」。
第2章の「組織の「知」を徹底的に活用する」では、3)デンソーの二次元レ
ーザーレーダーシステム」、4)キャノンのデジタルカメラ「IXY DIGITARU」、
5)スズキの50ccスクーター「チョイノリ」を取り上げている。

また、第3章「「個」のコミットメントを限りなく高める」では、6)富士通の
「プラズマディスプレイパネル」、7)ヤマハの「光るギター」、8)黒川温
泉観光協同組合の「黒川温泉」、第4章の「人の「才」を存分に発揮さ
せる」では、9)日清食品の高級カップめん「具多Goo Ta」、10)松下電
器産業の「遠心力乾いちゃう洗濯機」、11)ミツカングループの「におわ
なっとう」、第5章「日々の「生活」や「実践」を根底から大切にする」では、
12)スタジオジブリの「千と千尋の神隠し」、13)海洋堂の「食玩」を取り上
げている。

2.自分は何をやりたいのか

この本の最後のまとめでは、「持続的成長企業の条件とは何か」「期待
されるミドル層の役割」の二つを取り上げている。

「持続的成長企業の条件とは何か」では、「傍観者をやめ実存者になろ
う」と次のように述べている。「もともと、われわれは現実に対して二重の
観点を持っている。一つは端的な現実そのもので、データなどによる測
定ができるため科学的なアプローチが可能なものである」。この例として、
ポーターの「ファイブ・フォース分析」の五つの競争要因(業界内競走、
新規参入障壁、代替品の存在、消費者の力、原材料等の供給業者の
力)を挙げ、われわれの概念でいえば形式知だとしている。

そして、「これと対照的なのがもう一つの観点で、その現実が自分にど
う見えるか、主観的な意味を問う世界である。顧客のいる現場に行き、
共体験し、対話しながら、インサイダーとして内側から見る。そこでは、
みんなが互いに暗黙知を共有しながら、それぞれが自らの中に新たな
暗黙知を生み出していく」。

この本で紹介した13の物語の主人公たちの誰もがコミットメント(主体
的関与)を持続させながら、ときに死にものぐるいでめざすものを実現
しようとしたのは、自分は何をやりたいかという思いが原点にあったか
らで、それは傍観者とはまったく対照的な主体的当事者、すなわち、実
在者の姿であると強調している。

現場でさまざまな出来事を直接経験し、ありのままに受け入れたら、次
は自分の内に湧き起こるアイデアをコンセプトとして表出化していくこと
が求められる。このとき、顧客に感動を与えるようなイノベーションをめ
ざし、今までになかったコンセプトを生み出すには、仮説設定(アブダク
ション)が必要になる。顧客の立場になりきって「こんなものなら絶対欲
しい」「こうすればうまくいくにではないか」と発想する。こうした仮説なし
には、新たな知の創造は実現できない。

以上をまとめて、持続的成長企業の一つのモデルを次のように提示し
ている。基本要素は、ビジョン、対話、実践、場、環境の五つである。ビ
ジョンは、知の創造を方向づける大きな理想であり、「何のために存在
するのか」という実践的な問いかけから発する絶対値を内包している。
そして、知識創造プロセスに方向性を与え、暗黙知と形式知の変換運
動を絶えずスパイラルアップさせていく。

このビジョンのもとで暗黙知(主観)と形式知(客観)という二つのタイプ
の知が相互に作用する接点になるのが、メンバーによる対話と実践で
ある。対話は互いの暗黙知を共有化するための共体験を演出すると
ともに、そのままでは言語化が困難な暗黙知を形式知に転換する。一
方、実践はそれを通じて形式知がそれぞれの中で血肉化され、新たな
暗黙知へと内面化されていく過程である。

こうしたビジョンと対話と実践の三位一体の運動が起こるのが、共有化
されたダイナミックな文脈としての場である。この暗黙知は現場に入り、
環境に埋め込まれている知を取り込むことで得られる。市場を競争の
場ではなく、パートナー(顧客、サプライヤー、競合相手さえも)とともに
知を創造する競争の場としてとらえると、知の貯水池(環境)との「生態
系」が生まれる。

「期待されるミドル層の役割」では、松下電器のV字回復と日産のゴー
ン革命を取り上げている。そして最後に、「自分は何をやりたいのか。そ
もそも自分は何のために存在するのか。われわれの日々の営みはつ
まるところ、存在論的な問いかけに行き着きます。知とは何か、知ると
はどうゆうことかを探求するのが認識論であるとすれば、知識経営は認
識論と存在論の両方がベースになって成り立ちます」と指摘している。
つまり、「自分がどうありたいいのか」「どうありうるのか」という未来の
可能性が見えてはじめて、過去に蓄積された知識やノウハウは意味
を持つようになり、再編成される。そして、未来と過去が一体となった
とき、現在の刻一刻の生き方がわかる。過去が今を決めるのではなく、
未来というものを置くことによって、過去が意味づけされ、今が決まる。
未来によって主導されてこそ、今というときが日々、生き生きと刻まれ
るというのである。

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   ■編集後記■
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大前健一氏が「考える技術」で、郵便事業に関して、デポ方式による新
しい集配システムを提案しています。「最後の1キロメートルを想定して
デポを作ってはどうか」、デポから先は新聞、DM,チラシ、郵便などをま
とめて運べば、重複業務の無駄がなくなるというのです。

郵便局は公団化し、ラスト1kmのユニバーサルサービスを行う。各デポ
は必要に応じて、民間業者に入札により委託してもよい。配達公団は
各デポを標準化し、管理のみを行う。デポそのものは民間業者に業務
委託をすれば、官から民への行革は達成されるというのです。なお、
郵貯と簡保は不要としています。

結論はこの方法だけではないでしょうが、途中の論理的思考が参考に
なりました。どこかのテレビ局で竹中担当大臣とお二人だけの徹底討
論を企画していただけないでしょうか。小泉さんとではどこかの国の党
首討論のように、まともな議論にならないと思われるので。

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「情報と中小企業」メールニュース
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