企業

「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

全て表示する >

「情報と中小企業」メールニュースNo.059

2005/05/05

=======================
   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
=======================
★2005/05/05 No.059    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行
★issf(情報と中小企業)<http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
◇----------------------------------------◇
 //ISSF//      // ISSF//      //ISSF//
情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業
◇----------------------------------------◇
もくじ
[今月の一言]
企業が狙う顧客との関係
[今月のレポート]
新・日本の経営
◇----------------------------------------◇
◇--------------------◇
  ■今月の一言■
◇--------------------◇
企業が狙う顧客との関係

1.情報を得て変わる消費者行動

日経BP社発行の「イノベーション新世紀」第3章「パートナーと共に切
り開く未来」に、「情報を得て変わる消費者行動 企業が狙うべき2つの
戦略」と「顧客との関係から新たな価値を引き出すには」という、二つの
興味ある報告が載っている。

前者は、ペンシルバニア大学ウオートン校教授のエリック・K・クレモンス
他が書かれたもので、「伝統的なビジネスは市場シェアや規模の経済に
頼っていたが、消費者が豊富な情報を手にした時代には、メーカーは顧
客が望むものを正確に届けるよう、より懸命に働かなければならない」と
して、企業が狙うべき戦略を次のように紹介している。

今日の変化の激しい市場において、二つの深遠な変化が進行中である。
一つは、「規模の経済」はかってほど重要なものでなくなり、競合他社が
ほとんど何でも製造・販売することができる。二つ目は、顧客はどのよう
な商品が入手可能か知っており、自分が本当に欲しいと思う商品には
より多くのお金を喜んで払うことである。著者は、こうした顧客行動の変
化に対応した企業戦略としての重要な対策には、「レゾナンス(共鳴)・
マーケティング」と、「超差別化」の二つがあるとしている。

レゾナンス・マーケティングは、新たに多くの情報を得た消費者が割増
価格でも購入したがるような商品開発を伴うものである。従来は、その
商品が何を提供するのか正確に伝えることが不可能だったので、新し
い商品群は既存のよく知られた商品群の周辺に集まる傾向があった。
これとは対照的に、レゾナンス・マーケティングは、情報が豊富な消費
者にたいして彼等がまさに欲しがっているものを与えることに焦点を当
てる。なぜならば、その商品を本当に「共鳴する」消費者なら、それを見
つけ、理解し、それに対して割増価格を支払うであろうことが分かってい
るからであるとしている。

この事例として、英国で成功している飲料メーカーであるイノセント社を
挙げている。ケンブリッジ大学を卒業した3人の友人同士によって設立
されたが、彼等の最初の製品であるフルーツ・スムージーは、つぶした
果物しか入っていない非常にシンプルなものだ。原材料は各商品のラ
ベルにはっきり一覧表示されている。もっと情報が知りたい消費者は同
社のウエブ・サイトを訪れれば、商品やビジネス哲学などの詳細な内容
を得ることができる。

一方、他社とは全く異なる製品やサービスを提供することで本質的に代
用となる商品がほかになく、直接の競合相手もないというのが超差別化
戦略の基本である。差別化された新規参入者は特定の市場セグメント、
あるいは個人の消費者さえ狙った商品を提供している。超差別化とレゾ
ナンス・マーケティングを利用するには、市場の小さなセグメントごとにシ
ェアを獲得する「セグメント・キャッチャー」商品を多数展開する方向に進
まなくてはならない。

最近になって、米国の無数の零細のビール醸造所や地域のビール醸
造会社が、本当に差別化された製品を提供しはじめたとして、ビクトリ
ー・ブルーイング・カンパニー社の「ストリーム・キング・インペリアル・ス
タウト」などの超差別化されたビールを挙げている。これまで米国で製
造されたどのビールよりもはるかにアルコール分が高く、はるかにモル
トとホップの味わいが強い。また、同社のホップデビルは苦みの国際等
級68に評価されている。あまりに苦みが強烈だったので、多くの人々
に嫌われているが、それを好きだという顧客も十分たくさんおり、バドワ
イザーのほとんど倍の値段で売れている。

2.顧客との関係から新たな価値を引き出すには

「顧客との関係から新たな価値を引き出すには」(マーク・ファンデンボッ
シュウエスタン・オンタリオ大学アイヴィー・ビジネススクール教授他著)
は、「企業は、技術がもたらす持続的な競争優位をもう当てにすること
はできない。その代わり、自分の顧客と相互にかかわり合い、関係性を
作り上げることにイノベーションの狙いを絞るべきである」ということを主
張している。

顧客価値=What(何を)+How(どのようにして)であらわすと、すばらし
い製品やサービス、技術(これらがWhatに相当する)が、顧客価値を
もたらすうえで重要なのは疑いがない。しかし今日の環境下では、次の
ような理由で技術上の優位性が消失してしまったと主張している。1)知
識の所有権を維持することが難しくなっている、2)オープンシステムと共
通標準の採用が進み独自技術による囲い込みができなくなった、3)共
通標準はアウトソーシングを可能にした。

著者たちは、商品の売り手と顧客との相互交流から価値を引き出す(こ
れがHowに相当する)のは顧客だけではない。「どのように(相互交流
するか)」から価値を作り出すことは、企業側にとっても競争優位性の
ためのより持続的な基盤であるのだ。そのためには、商品を有用なメリ
ットやソリュ−ションに転換する際に顧客が直面するコストやリスクを軽
減することに、はっきり焦点を当てることが必要になるとしている。

この事例として、オリカというオーストラリアの工業用爆薬メーカーとパソ
コンメーカーのデルをあげている。オリカは顧客である採石業者にとって
の難題は、爆破の失敗はそれ以上破壊するのが難しい岩の塊を作り出
し、非常にコスト高になることである。そこで、オリカは顧客から、個々の
爆破について入力したパラメーターとその結果のデータを集めた。これら
のデータを照合することでオリカの技術者は専門知識を得たが、オリカは
爆破のプロセス全体の責任を負い、顧客に「破壊した岩」を提供するとい
う契約を始めた。結果として、オリカはコモディティー向けの供給業者か
ら、顧客のビジネスに不可欠な一部分自分自身を変換し、工業向け爆
薬の供給業者として世界でも主導的な地位を確立した。

デルは、各顧客企業専用のウエブ・ページを提供して注文手続きを簡単
にしたり、設定済みのソフトウェアを事前にパソコンに組み込んで設定
作業や配布にかかる費用を取り除いたり、様々なサービスによってメン
テナンス性を向上させるなどによって、顧客企業におけるパソコン所有
のトータルコストとリスクを低減させている。その結果、顧客企業は、デ
ルとの関係性に特化した投資を行い、デル以外のパソコンメーカーか
ら購入するのが難しくさえなっている。

このようなデルやオリカのような「How」ベースのイノベーションは、大きく
2つの理由から持続性があると著者たちは述べている。一つは、先行し
たイノベーターに特化したものだから、競合他社は真似ることはできても、
顧客が乗り換えることにほとんどうまみがない。二つには、コピーするの
が難しく、しかも経験が増えるにつれて絶えず改良される、競合他社から
は見えない組織的なシステムとプロセスを生み出しているからだ。

すばらしい製品やサービス、技術などの「What」自体も、商品の売り手と
顧客との相互交流から生まれることが多いが、顧客と「どのように(相互
交流するか)」から価値を作り出すことが、企業側にとっても競争優位性
のためのより持続的な基盤であるというのは、興味深い指摘である。

◇--------------------◇
 ■今月のレポート■
◇--------------------◇
新・日本の経営

1.再設計の10年

本著(ジェームス・C・アベグレン著、日本経済新聞社発行)は、1958年
に刊行され、日本的経営論の原点となった著書「日本の経営」の著者で、
「終身雇用」という言葉の生みの親であるジェームス・C・アベグレンが、
日本企業の過去数十年間の歩みを分析するとともに、これから進むべ
き方向を提言。半世紀におよぶ日本企業研究の集大成として書き下ろし
たものである。著者は研究者として、経営コンサルタントとして、50年に
わたって日本企業の経営をみてきた立場から、日本で成功している企
業が実は、技術面では最新のものをとりいれ開発しているが、経営組
織という面では日本的な価値観を維持している企業だということを明らか
にしている。

本書も「日本の経営」も日本にとって新しい時代の始まりを扱っているが、
前回の調査でも今回の調査でも、主に同じ企業から学んだ点が分析の
中心になっている。日本電気(NEC),住友電気工業、住友化学、東洋レ
ーヨン(東レ)、富士製鉄(現在は新日本製鐵)の5社)の5社である。

本書は、第1章 50年後の日本的経営、第2章 再設計の10年、第3章
 社会の高齢化――日本経済の成長は終わるのか、第4章 日本的経
営、第5章 空前の嵐に見舞われた企業財務、第6章 研究開発という
必須の課題、第7章 企業統治――アメリカ型か日本型か、第8章 対
日直接投資はほんとうに少ないのか、第9章 変化する国際環境、から
構成されている。ここでは、2,4,6,7章を簡単に紹介する。

第2章の「再設計の10年」では、過去10年間に日本企業が進めてき
た再設計は、産業構造上の二つの問題を解決するためのものであった
と述べている。第1の問題は、日本のほとんどの産業で企業数が多す
ぎること。第2の問題は、事業多角化の行き過ぎ。経済が成熟すれば、
業界統合の動きが起こるし、どのような事業でも成功を収めるには、圧
倒的な市場シェアを獲得するまで、その事業に資源を集中させる経営
戦略をとる必要があるからだ。

そして、ここ何年かは日本にとって「失われた10年」になり、日本経済は
「停滞」しているとする見方があるが、日本経済は、産業の再構築と再設
計をきわめて活発に進めてきたと指摘し、とりわけ複雑な事業再構築と
再設計を進めてきた例として、電機産業をあげている。日本の総合電機
メーカー9社は、2002年度には平均2千億円を超える特別損失を計上
したが、戦略の完全な失敗に起因している。9社のすべてが、MOSチッ
プ事業に参入していたが、どの分野でも世界市場で4位以下にしかなれ
ず、3位以内にはなれなかった。同様な理由で、半導体、大型液晶事業、
プラズマ・ディスプレー事業、ハード・ディスク・ドライブでも撤退と統合を
余儀なくされた。このように大手電機9社が苦しんだのは、電機産業が
全体として低迷していたからではない。過去10年にとくに大きな成功を
収めてきた日本企業は、事業を絞り込んだ専業電機メーカー(ヒロセ電
機、マブチモーター、村田製作所、ローム、キーエンス、ファナック、京セ
ラ、TDK,日本電産)が多いと指摘している。

2.日本的経営

第4章の「日本的経営」では、日本経済を担う企業が大きな成功を収め
てきたのは、欧米の技術を吸収し、日本社会に特有の性格に基づく経
営の仕組みと組み合わせてきたからだと述べている。1950年代にまと
また前著の「日本の経営」で、著者は日本的経営の主要な特徴を三つ
指摘した。「企業と従業員の間の社会契約(終身の関係)」、「年功制」、
「企業内組合」である。本書でも、その後パートや派遣社員が増えてい
るが、日本の終身雇用制は変わっていないと述べ、終身雇用制の長所
を指摘している。

第6章の「研究開発という必須の課題」では、日本経済の将来は科学者
と技術者の研究の成果にかかっていると次のように指摘している。特許
審査の遅れや知的所有権の価値があまり認識されない、他国との科学
技術交流が不足しているなどの問題があっても、日本の研究開発が他
国とくらべて全体的に遅れていると結論づけるのは間違っている。だが、
日本の将来にとって、世界クラスの研究開発によって新しい概念と新し
い製品を着実に生み出していくことほど重要な点はない。

第7章の「企業統治――アメリカ型か日本型か」では、企業統治に関す
る英米型の見方は、会社とは完全に株主の所有物だとする見方から導
き出されている。すなわち、経営陣は会社の所有物である株主の代理
人であり、経営の目的は株式の価値を高めることにある。著者は、アリ
ー・デ・グースの、「実際には今日の世界には二種類の企業があり、そ
の違いをもたらしているのは、事業を行う基本的な理由の違いである。
第一の種類の企業は純粋に「経済的」な目的のために経営されている。
これに対して第二の種類の企業は、「共同体」としての生命をいつまで
も維持していくことを目的に組織されている(「企業生命力」から)」を引
用して、二種類の企業があることを指摘している。ドラッカーも英米型モ
デルと日本・ドイツ型モデルの違いを指摘しており、「株主にとっての価
値を最大限に高めるとする目標が最大の違い」だとしているとのことだ
が、アメリカの企業は経済的企業であり、日本企業は共同体である。

著者も、この日本の仕組みは完璧ではない。企業の経営陣が総会屋の
脅しに屈し、法律に違反して利益を供与する事件が相次いである。食品
会社や製薬会社が法規に違反する事件が繰り返し起こっている。経営
者が会社軽費で贅沢三昧にふけることもある。としながらも、「社内取締
役、内部昇進、終身雇用、平等主義の報酬制度、企業内組合、仕入れ
先との長期的な関係といった日本的な経営の仕組みによって、日本企業
がきわめて優秀になっていることは否定できない。日本経済が苦しい再
設計を進めてきた時期にも、大きな成功を収めた日本企業は、日本の
経営の伝統をとくに大切にしている企業である。日本企業の強みと統治
の仕組みが共通の文化をもつ緊密な共同体の発展によるものであるこ
とだ。これに対して、失敗しているのは、きわめ規模が大きく、事業が極
端に多角化している企業である」と指摘している。

また、日本企業の多くが進めてきた多角化には、大きな危険が二つあっ
たとして、次のように述べている。「第一は戦略面の危険である。企業経
営の成功は、自社が競争上の優位をもつ少数の分野に注意深く絞り込
み、経営資源を集中して投じることで達成される。第二に、経営多角化
によって、企業文化が極端に薄まっていく危険がある。最高の日本企
業は、共通の企業文化をもっている。多角化した企業では企業文化が
薄まっていく。専業企業と多角化企業とで、近年の業績がこれほど対
照的なのは、多角化企業の経営がいかにまずかったかを示している」

◇--------------------◇
   ■編集後記■
◇--------------------◇
日経情報ストラジーに載っていた、サントリーの緑茶「伊衛門」の開発物
語で、ブランドマネジャーの沖中直人課長が、「「時代の気分」の議論に
時間をかけた。その前に失敗した塾茶は、人々の多くが自信を失いかけ
ている、今の「時代の気分」を意識しなかったから失敗した」と話していた。

「伊衛門は、無菌室で余分な熱をかけずに中身を充填する「非加熱無菌
充填」と、石臼で挽いた茶葉をさらに細かく粉砕して味わいを引き出す「
粉体制御」という新技術を採用したとのことで、裏側に技術開発がない限
り、本物のヒット商品は生まれないと考えているとも話している。

世に問おうとした塾茶にも新技術があったが、おいしさという価値に変わ
る技術ではなかったのが違いとのこと。今の顧客には、日本人に馴染み
がないお茶にチャレンジする気持ちがあまりないという時代の気分を捉
えたという説明に、妙に説得力があった。

=======================
「情報と中小企業」メールニュース
発行:降旗清司
E-MAIL:furihata@techcm.co.jp
[技術創造マネジメント] http://www.techcm.co.jp/
[issf;情報と中小企業] http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
アドレス変更/配信停止 http://www31.ocn.ne.jp/~issf/
本メールマガジンは下記のサービスで発行しています。
インターネットの本屋さん「まぐまぐ」http://www.mag2.com/
マガジンID:0000037775
メールマガジン「melma!(メルマ!)」http://www.melma.com/
マガジンID:m00019936
=======================

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2000-10-07  
最終発行日:  
発行周期:月刊  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。