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「情報と中小企業」メールニュース

中小企業の経営者・技術者と行政関係者の方を対象に、中小企業の経営戦略、情報ネットワーク、技術、産学連携、支援制度等の情報を提供していきます。今月の一言、トピックス、今月のレポート等から構成。

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「情報と中小企業」メールニュースNo.005

2000/11/02

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   中小企業の経営・技術開発支援情報
   経営/情報/技術/連携/特許/支援等

   「情報と中小企業」メールニュース
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★2000/11/2 No.005    発行:降旗清司
★毎月第1木曜日発行   配信部数 686部
★issf(情報と中小企業)<http://plaza12.mbn.or.jp/issf/
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情報と中小企業  情報と中小企業  情報と中小企業  
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もくじ
[今月の一言]
モノ作り大国日本の曲がり角
[今月のレポート]
コア・コンピタンス経営(文献紹介)
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   ■今月の一言■
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モノ作り大国日本の曲がり角

1. 米ソレクトロン

情報技術(IT)時代をにらんだソニーの物作り戦略が鮮明になってきた。電子
機器の製造受託サービス(EMS)で世界最大の米ソレクトロンとの提携をテコ
に、生産体制の改革を加速する。ソニー本社の社内カンパニーは商品の企画
・開発に特化し、生産部門は本体から分離しEMCS(設計・製造・顧客サービ
ス)と名付ける新会社に移管する。機能分化の徹底で多種多様な製品を迅速
に開発・供給できるようにすると同時に、生産のリスクの分散・軽減を狙う。キ
ーワードは「ファブレス(工場を持たない)戦略」の推進だ。10月19日の日本経
済新聞は、IT時代をにらんだソニーの物作り戦略を上記のように報じている。

安藤社長は「成長戦略の対象商品や独自の部品技術と密接に結び付く商品
はグループ内で生産する」と述べ、デジタルテレビなどについてはEMCSで生
産する方針を強調した。それ以外の製品や付加価値の低い製品はグループ
以外の企業に委託する考えで、第一弾としてソレクトロンに白羽の矢を立てた
格好だ。EMCSという擬似ファブレスと本当のファブレス化を同時に導入するこ
とで、競争力を強化する作戦だ。

日経ビジネスの2000年10月16日号の記事によると、米国のソレクトロンは、
インターネット産業の発展に伴って急速な成長をしている生産請負会社(E
MS)であり、同社はこの5年間に年平均成長率が45%にも達し、売上げ利
益率もほぼ10%を確保している。2000年の売上高は約150億ドル、純利益
は6億ドルに達しようとしている。

その成長を支えているのが、最高経営責任者(CEO)であるコウ・ニシムラ
氏が取り入れた規模の拡大を狙った買収戦略と、不良品を出さない品質
管理手法なのである。ソレクトロンは、日本のデミング賞に相当するカルコ
ム・ボルドリッジ賞を2回受賞した唯一の工場としても知られている。

品質管理は日本的経営にも通じるが、買収戦略というと、不可解に思う人
も多いだろう。日本企業の場合は、買われた企業の従業員が大量に辞め
てしまう失敗例が多いからだ。しかし、ニシムラ氏は「社員に平等にチャン
スを与えれば、それほど難しくない」という。ソレクトロンがこれまで扱って
こなかったような企業の工場を買収すれば、ソレクトロンにいる社員も、そし
て買収された社員も、今までに経験しなかった事業に挑戦できる。企業買
収は社員にチャンスを与えるために必要なのだ。

コンピュータのダウンサイジング化で、コンピュータメーカーは装置を売る
よりも付加価値の高いサービスに重心を移してきたため、ソレクトロンの
買収戦略は、普通なら欲しくてもなかなか手に入らない技術力の豊かな
向上と人材を入手することができた。また、インターネットの普及により、
ソレクトロンは相手企業と情報ネットワークを構築し、すべての製品が出
荷段階にまで逐一把握できるようになったことで、ソレクトロンの工場を
自社の工場と同じように使えるようになったことも買収に対する抵抗を
和らげた。

世界に14ヶ所あるソレクトロンの新製品開発拠点の一つ、湘南事業所
では、ソレクトロン日本法人の製品開発チームが、頻繁に訪れる顧客
メーカーと顔を突き合わせて、製品の量産に関する問題点を解決してい
る。湘南事業所の役割は、顧客メーカーと二人三脚で量産の一歩手前
まで製品を開発することにある。

2. モノ作りのプロ集団

先に紹介した日経ビジネスの2000年10月16日号では、「工場独立宣言」
というタイトルで、モノ作り大国・日本が危ない。研究開発では米国の後
塵を拝し、コストでは中国に遠く及ばない。お家芸だった現場の改善も、
東南アジアの猛追を受ける。との書き出しで、そんな不安を吹き飛ばし、
「モノ作りのプロ集団」として独立の旗を掲げる工場が現れたことを紹介
している。世界一の要素技術を誇り、誰にも真似ができない生産の知恵
で生きる「工場独立宣言」企業である。

その筆頭が「ソニー幸田」である。本文の始めに紹介したように、ソニー
は13ヶ所の国内拠点を統合し、新会社を設立するが、この新会社を率
いるのは、13国内生産拠点でも大黒柱の役割を担うソニー幸田の菅野
社長だ。2000年度の売上げは5000億円を超え、2年間で2倍以上の伸
びになる。

ソニー幸田の真髄は、500人を上回る技術者を抱え、生産設備はもちろん、
超高密度実装や、一部の半導体パッケージまでこなしてしまう技術開発力
である。さらにソニー幸田は、顧客の苦情や修理依頼に直接応えるオペレ
ータ16人、工場内で修理までこなしてしまうための専任部隊170人を、技術
部から独立して置いている。故障や修理の依頼は情報の宝庫。その後の
開発にも情報が生きてくるのである。

菅野社長がソニー幸田に赴任した1997年には、技術者と呼べるのは150
人で、設備の改善や改良、生産ラインの手直しを専門とする生産技術陣が
中心だった。そのため、部品や実装の専門家を育てる目的で、80人の技
術者を本社の事業部門に送り込み、長い人は3年かけて開発ノウハウを
習得させている。どんな新製品でもすぐに量産できる多能工場になっても
らうのが目的である。

さて、日経ビジネスでとりあげている工場独立宣言の7つの条件とは、コ
スト競争力、生産技術力、開発力、納期短縮力、マーケティング、改善力、
財務力である。ソニーの出井社長は、時間の22%をインタビューや投資
者関連を含む、会社の広報活動に使い、22%を会社の将来のために費
やしている(「ソニー・ドリーム・キッズの伝説」ジョン・ネイスン著、文
芸春秋)ということであるが、それぞれの中小企業は自社のどのような中核能
力を育て、足らないところは他社とどのようなネットワークを築いていくの
か。トップは時間の何%を将来のためについやしているのであろうか。大
田区の産業クラスター研究会

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   ■今月のレポート■
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コア・コンピタンス経営

1. コア・コンピタンスとは

G.ハメルとC.K.プラハート両教授著のコア・コンピタンス経営(一條和生訳、
日本経済新聞社)は、1994年にアメリカで出版され、翌95年に日本で翻訳
出版されたが、いずれでも大反響を呼び起こした。コア・コンピタンスとは、
他社には提供できないような利益を顧客にもたらすことのできる、企業内部
に秘められた独自のスキルや技術の集合体である。本書で紹介されてい
る日本企業を例にとると、ソニーの小型化技術、ホンダのエンジン技術、シ
ャープの薄型画面ディスプレイ技術がそれぞれのコア・コンピタンスである。

著者によれば、企業間の競争とは本質的に、自社のコア・コンピタンスを用
いて市場の主導権を獲得しようとする競争にほかならない。したがって企業
は、長期的な視野を持ってコア・コンピタンスの発見と保持、そして発展に
努力するとともに、それを製品やサービスの中でたくみに生かしていく方法
を見つけなければいけないのである。

第9章の「未来への扉を開く」では、未来のために競争するうえでのカギとな
る課題は、明日の市場への入口となる企業力を他社に先駆けて切り開くと
ともに、現在持っているコア・コンピタンスを斬新に適用する方法を見つけ出
すことである点について論じている。

新しいコア・コンピタンスの構築に企業が踏み切るのは、個別の製品市場で
事業化の機会をうかがうためでなくて、顧客に新しい利益の機会を切り開い
たり、さらに磨きをかけるためである。非常に幅の広い利益を顧客に提供で
きるユニークな力を持っている企業にどれほどの利益が流れ込んでくるのか、
十分に理解しているからである。

企業力競争は、製品対製品、あるいは、事業対事業にとどまらない。企業
対企業にまで及んでいる。企業力をめぐる競争を企業間の競争としてとらえ
ることが的を射ている理由は、次のとおりである。

まず第一に、これまで見てきたとおり、コア・コンピタンスは製品単位のもの
ではない。コア・コンピタンスは幅広い製品やサービス全体の競争力に貢
献する。この意味で、コア・コンピタンスはどんな特定の製品やサービスよ
りも上位に置かれる存在である。

第二に、コア・コンピタンスは幅広い製品やサービス全体の競争力に貢献
するために、企業力をめぐる主導権争いに勝つか負けるかが会社の成長
と競争を決する。そのためにコア・コンピタンスの影響力は、単一製品で勝
つか負けるかよりもはるかに大きいのである。

第三に、コア・コンピタンスの主導権を獲得するのに必要な投資、リスク分
担、時間は、いずれも単一事業内で許容される経営資源の範囲を超えて
しまうことが多い。そのために全社を挙げて直接支援しなくてはつくり上げ
られない企業力もある。

最後に、最も重要な点であるが、コア・コンピタンスを構築し、大事に育て
ていくことによってしか、経営トップには企業の存続を保証する道はない。
コア・コンピタンスは将来の製品開発の源泉である。

2. 企業力をめぐる複雑な競争

第2章で、未来のための競争は三つの段階(未来をイメージする競争、未来
への構想を有利に展開する競争、市場でよいポジションとシェアを獲得する
競争)で生ずると説明している。第9章では、企業力をめぐる競争は四つの
レベルで生ずることを論じている。たいていの企業や戦略論の教科書は、
第4レベルのブランド・シェアをめぐる競争すなわち最終製品のマーケットシ
ェアを最大にする競争(自社ブランドとOEM)に注意の99%を向けている。
著者はこれでは不適切であると思うとしている。なぜならば、未来のための
競争は、ほとんどが第1レベルから第3レベルで戦われるからである。

第1レベル----------コア・コンピタンスの構成要素であるスキルや技術
の開発とアクセス

第1レベルの競争のゴールは、特定のコア・コンピタンスの構成要素である
スキルや技術を手に入れたり、開発することである。この競争は、技術、才
能、提携パートナーや知的所有権の市場で発生する。未来を見通すことの
できる企業は、一般的なコア・コンピタンスを構成するスキルや技術へのア
クセスをめぐって競争する。この段階の競争では、外からスキルや技術に
接近し、吸収していく能力が、経営資源をもっぱらレバレッジ(てこ入れ効
果)する。NECは、ヒューズ、インテル、ハネウエルほかとの大掛かりな戦
略提携を手掛け、外国パートナーから多くを学び取った。GMもトヨタとのジ
ョイント・ベンチャーを、トヨタの生産アプローチを知る糸口とした。

第2レベル-----------企業力を合成・統合する競争

主要な人材の確保、独占ライセンスの保全、あるいはパートナーとの提
携をめぐって企業同士が直接競争し合うのに比べれば、スキルを企業力
へと変える競争はもっと間接的に行われるが、決して重要でないという
わけではない。企業力とは様々なスキル、技術や知識を合成・統合した
ものである。だが、個々のスキルを集めれば企業力になるというわけで
はない。幅広い、多様なスキルや技術を調和させる能力が欠かせない。
企業力を構築するに当たっては、外部から借り入れるのではなく、企業
力を何度となく繰り返し再利用してレバレッジが行われる。たとえば、E
DSはスケジュール管理、予約システム、データ・トラッキングの知識を、
レンタカー、航空、トラック輸送と実に幅広い市場で応用している。

第3レベル----------コア製品のシェアをめぐる競争

競争の第3レベルはコア製品、あるいはサービスの場合であればコア・プラ
ットホームを中心としている。コア製品、あるいはプラットホームは、コア・コ
ンピタンスと最終製品とのほぼ中間に位置する。多くの企業が仮想マーケ
ットシェアを獲得しようとして、コア製品を他社へ、それも競合他社へまでO
EM提供しようとしている。この場合、川下パートナーの販売ルートやブランド
を借り入れてのレバレッジが図られる。たとえば、キャノンはレーザープリン
タのエンジン部をアップルコンピュータやヒューレット・パッカードなどのレー
ザープリンター・メーカーに売っている。

本書では、ソニー、ホンダ、シャープなどの日本企業の成功事例もかなりと
りあげているが、これらの事例は、すべて過去数年、数十年の前から、未
来を展望して長期的に企業力を鍛えてきた成果である。成功するためには、
目先の利益にとらわれることなく、長期的な展望をもって自社独自のコア・
コンピタンスの育成に励むことが、日本企業に強く求められているのであろ
う。

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   ■編集後記■
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今月は、情報技術(IT)時代をにらんだソニーの物作り戦略を取り上げました。
電子機器の製造受託サービス(EMS)で世界最大の米ソレクトロンとの提携を
テコに、生産体制の改革を加速しています。

ソニー本社の社内カンパニーは商品の企画・開発に特化し、生産部門は本体
から分離しEMCS(設計・製造・顧客サービス)と名付ける新会社に移管する。
ソニーが今このような生産体制の変革を図ろうとしているということは、ものづ
くり大国日本が曲がり角に来ていることを示しています。

文献紹介は、上記との関連も含めて、G.ハメルとC.K.プラハート両教授著のコ
ア・コンピタンス経営を取り上げました。コア・コンピタンスとは、他社には提供
できないような利益を顧客にもたらすことのできる、企業内部に秘められた独
自のスキルや技術の集合体です。未来を展望して長期的に企業力を鍛えるこ
との必要性を説いた、今の日本の中小企業にとって含蓄のある提言ではない
でしょうか。

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