名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第二十一章 結論 n.1

2018/12/13

 第二十一章 結論 n.1

 これまでの議論の過程で,我々は,いくつかの結論に到達した。あるものは
歴史的なもの(結論)で,あるものは倫理的なもの(結論)である。歴史的に
は,文明社会に存在する性道徳は,まったく異なる二つの源泉に由来しており
,一方では,誰が父親であるか(父性)をはっきりさせたいという欲求,他方
では,性は繁殖に必要な場合を除いて邪悪なものであるという禁欲的な信念に
由来していることを発見した。キリスト教以前の時代の,また,極東では今日
にいたるまでの,道徳には,前者の源泉しかなかった。ただし,インドとペル
シアは例外で,そこを中心地として,禁欲主義が広がったように思われる。

 父性をはっきりさせたいという欲求は,もちろん,男性も生殖に役割をもっ
ているという事実を知らない後進的な種族には存在していない。彼ら(後進種
族)の間では,男性の嫉妬(心)のために女性の性的放縦(female licence) 
はある程度制限されはするが,女性は,概して,初期の家父長制社会における
よりもずっと自由である。明らかに,過渡期にはかなりの摩擦があったにちが
いないし,また,女性の自由を抑制することは,自分の子供の父親であること
に関心を持つ男たちが必要だと考えたということは明らかである。(歴史上の)
この段階においては,性道徳は,女性のためだけに存在していた。男性は,既
婚女性と姦通してはならなかったが,その他の点では自由であった。

 キリスト教(の出現)とともに,罪を避けるという新しい動機が入ってくる
。そうして,道徳的基準は,理論上,男性の場合も女性の場合と同じになる。
ただし,実際上は,男性に(女性と)同じ道徳基準を押しつけることはむずか
しいので,常に,男性の道徳違反(fallings 堕落)は,女性の場合よりもずっ
と大目に見られることになった。初期の性道徳には,明白な生物学的な目的が
あった。即ち,子供が幼い時期は,片親だけでなく,ふた親の保護を確実に受
けられるようにすることである。この目的は,キリスト教の実践ではともかく
,理論では見失われた(のである)。

Chapter 21: Conclusion, n.1

In the course of our discussion we have been led to certain 
conclusions, some historical, some ethical. Historically, we found
 that sexual morality, as it exists in civilized societies, has been
 derived from two quite different sources : on the one hand desire 
for certainty as to fatherhood, on the other an ascetic belief that 
sex is wicked, except in so far as it is necessary for propagation. 
Morality in pre-Christian times, and in the Far East down to the 
present day, had only the former source, except in India and Persia,
 which are the centres from which asceticism appears to have spread.
 The desire to make sure of paternity does not, of course, exist in 
those backward races which are ignorant of the fact that the male has
 any part in generation. Among them, although masculine jealousy 
places certain limitations upon female licence, women are on the whole
 much freer than in early patriarchal societies. It is clear that in
 the transition there must have been considerable friction, and the 
restraints upon women,s freedom were doubtless considered necessary by
 men who took an interest in being the fathers of their own children. 
At this stage, sexual morality existed only for women. A man might not
 commit adultery with a married woman, but otherwise he was free. 

With Christianity, the new motive of avoidance of sin enters in, and 
the moral standard becomes in theory the same for men as for women, 
though in practice the difficulty of enforcing it upon men has always
 led to a greater toleration of their fallings than of those of women.
 Early sexual morality had a plain biological purpose, namely to 
ensure that the young should have the protection of two parents during
 their early years and not only of one. This purpose was lost sight of
 in Christian theory, though not in Christian practice
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/MM21-010.HTM

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