名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第十七章 人口(問題) n.2/3

2018/10/12

『結婚論』第十七章 人口 n.2/3:人口の急増を止めたもの

 カー・サーンダーズ氏の人口問題を論じた著書の大きな価値(長所)は,ほ
とんど全ての時代と場所において,自発的な制限(国家が指導しなくても各家
庭で自発的に子供の制限)が実行されてきたことが,人口の静止状態を保つ上
で,高い死亡率による除去よりもいっそう効果的であったということを指摘し
た点にある。もしかすると,サーンダーズ氏はいくらか論点(自発的制限の影
響の大きさ)を誇張しているのかもしれない。たとえば,インドや中国では,
人口の急激な増加を防いでいるのは,主として高い死亡率であるように思われ
る。中国には統計がないが,インドには存在している。インドの出生率はとて
も高いものであるが,カー・サーンダーズ氏自身も指摘するとおり,人口の増
加は,イギリスよりもややゆっくりしている。これは,主として,幼児死亡率
と疫病及びその他の難病(の多さ)によるものである。統計が利用できれば,
きっと,中国も似たような状況を示すだろうと思われる。けれども,こういっ
た重要な例外があるにもかかわらず,カー・サーンダーズ氏の論点(説)は,
大筋において正しいことは疑いを得ない。人口を制限する方法がいろいろ実行
されてきた。このうちの最も簡単なのは,嬰児殺しであり,宗教が許している
ところではどこでも,非常に大規模に行われてきた。時には,この慣習がしっ
かりと根をおろしているので,キリスト教を受容するにあたっても,人びとは
,嬰児殺しには干渉しないことを(条件として)要求(stipulated 明記した)
したほどであった。(原注:これは,たとえばアイスランドで起こった。カー
・サーンダーズ『人口問題』(1925年)p.19参照) (キリスト教の)ドゥホ
ボール派(注:ロシア・ウクライナに起源を持つキリスト教の教派で,神秘主
義・絶対的平和主義・無政府主義の傾向が強く,共同農業生活を送った。)は
,人命は神聖であるという理由で兵役を忌避したために,帝政ロシア政府とも
めごとを起こしたが,その後も,彼らは嬰児殺しをする傾向があったために,
カナダ政府ともめごとを起こした。

 けれども,(人口制限のための)別の方法もまた,よく行われてきた。多く
の民族の中において,女性は妊娠中ばかりではなく,授乳期間中も性交を控え
る(控えている)。また(しかも),それは(性交を控える期間は),2,3
年に及ぶこともしばしばある(岩波文庫の安藤訳では「授乳期間が2,3年に
及ぶこともままある」となっているが,まさか!?)。これは,必然的に女性
の繁殖力(出産能力)をかなり制限することになる。これは,文明化した民族
よりもずっと早く年をとる未開民族の場合は特にそうである。オーストラリア
の原住民(アボリジニ)は,男性の生殖能力を非常に減じて著しく繁殖力を制
限する,大変な痛みを伴う手術を行っている。「創世記」から知られるように
,はっきりした産児制限の方法が,少なくとも一つだけ古代にも知られ,実行
されていた(『創世記』第38章p.9,10)。ただし,ユダヤ人は,ユダヤ人の宗
教は常にきわめて反マルサス的であったので,この方法に反対であった。こう
いう,さまざまな方策を講じて,人びとは,餓死による大量死(wholesale 
deaths)をまぬかれた。もしも,その多産性(fecundity)を最大限に発揮し
たとしたら,餓死による大量死が実際起こったかもしれない。

Chapter XVII: Population, n.2/3

The great merit of Mr. Carr Saunders's book on population consists in
 its pointing out that voluntary restriction has been practised in 
almost all ages and places, and has been more effective in preserving
 a stationary population than elimination through a high mortality. 
Possibly he somewhat overstates his case. In India and China, for 
example, it seems to be mainly the high death-rate which prevents the
 population from increasing very rapidly. In China statistics are 
lacking, but in India they exist. The birth-rate there is enormous, 
yet the population, as Mr. Carr Saunders himself points out, increases
 slightly more slowly than that of England. This is due mainly to 
infant mortality and plague and other grave diseases. I believe that
 China would show a similar state of affairs if statistics were 
available. In spite of these important exceptions, however, Mr. Carr
 Saunders's thesis is undoubtedly true in the main. Various methods of
 limiting population have been practised. The simplest of these is 
infanticide, which has existed on a very large scale wherever religion
has permitted it. Sometimes the practice has had such a firm hold that
 in accepting Christianity men have stipulated that it should not 
interfere with infanticide. (note: This happened, for example, in 
Iceland, Carr Saunders, Population, I925, p. I9.) The Dukhobors, who
 got into trouble with the Tsarist Government for their refusal of 
military service on the ground that human life is sacred, subsequently
 got into trouble with the Canadian Government for their tendency to 
the practice of infanticide. Other methods have, however, also been 
common. Among many races, a woman abstains from sexual intercourse not
 only during pregnancy, but during lactation, which is often prolonged
 for two or three years. This necessarily limits her fertility very 
considerably, especially among savages, who grow old much sooner than
 civilized races. The Australian aborigines practise an exceedingly 
ainful operation which very much diminishes male potency and restricts
 fertility in a marked degree. As we know from Genesis,(note: Gen. 
xxxviii. 9, 10.) at least one definite birth-control method was known
 and practised in antiquity, although it was disapproved of by the 
Jews, whose religion was always very anti-Malthusian. By the use of 
these various devices, men escaped the wholesale deaths from 
starvation which would have occurred if they had used their fecundity
 to the utmost.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/MM17-020.HTM
      https://russell-j.com/beginner/MM17-030.HTM

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