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(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第十四章 個人心理の中の家族 n.1

2018/08/20

 ラッセル『結婚論』第十四章 個人心理の中の家族 n.1:フロイトの学説   

 私は,本章において,個性(個人の性格)が,家族関係によってどのように影響されるか,を考察してみたい。この主題(問題)には,3つの面がある。即ち,子供に及ぼす影響,母親に及ぼす影響,及び父親に及ぼす影響である。もちろん,この3つを解きほぐすのは,確かに難しい。家族は,緊密に結びついた単位であって,いかなるものであれ,両親に影響を及ぼすものは子供にも影響するからである(注:両親の子供に対する影響にも影響する/つまり,子供に直接影響するのではなく,両親にまず影響を与え,その影響が子供にも間接的に影響を与える,ということ。従って,厳密に言えば,「両親に影響を及ぼすものは子供にも影響する」は不適切な訳)。にもかかわらず,私は,議論を以上の3つの項目(heads 見出し)に分けて考察したい。そして,まず子供から始めるのが自然である。誰もが親になる前は家族の中では子供だからである。

 もしも,フロイトを信じるなら,幼い子供が家族の他の成員に抱く情緒は,いくらか絶望的な性質を帯びている。男の子は,父親を憎む(とフロイロは言う)。父親を(母親に対する)性的なライバルと見るからである(とフロイトは言う)。母親に対しては,伝統的な道徳からは極度の嫌悪の目で見られる情緒を抱く(とフロイトは言う)。彼(幼児)は兄弟姉妹を憎む(そうである)。両親の注意(世話)をすべて自分一人に注いでもらいたいのに,彼ら(兄弟姉妹)はその一部を吸い取ってしまうからである。後年,こうした激しい感情の影響は,よくても同性愛から,悪ければ躁病(そうびょう)にいたるまで,最高度に多様かつ恐ろしい性質のものになる(とのことである)。

 このフロイトの学説は,予想されたほどの恐怖を引き起こさなかった。確かに,この学説を信じたために地位を追われた教授たちもいるし,英国の警察は,この学説に従って行動したかどで,同世代の最も優秀な人物(原注:ホーマー・レーン)を追放した。しかし,キリスト教の禁欲主義の影響があまりにも強いので,人々は,フロイトが描いてみせた幼児の憎悪よりも,フロイトが性を強調したことに,いっそうの衝撃を受けたのである。(注:such is the influence of Christian asceticism that = the influence of Christian asceticism is such that の倒置) けれども,我々,子供の強い(激しい)感情に関するフロイトの意見の真偽について,偏見なしに判断を下すように努めなければならない。まず告白しておきたいが,私は最近数年間,小さい子供たちを相当扱ってきた経験から(注:ラッセルは 1926年に『教育論−特に幼児期における』を出してから幼児学校 Beacon Hill School を設立し,自分の子供2人もそこで教育を行った。なお,1932年春にラッセルは幼児学校から手を引いた。),フロイト学説には以前考えていたよりもはるかに多くの真理がある,という見解に達している。にもかかわらず,私は,フロイト学説は真理の一面のみを述べたものであり,また,その一面は,両親の側に少し良識があれば,たやすく,きわめて墳末な問題になる,と依然考えている。

Chapter XIV: The Family in Individual Psychology, n.1

I wish to consider in this chapter how the character of the individual is affected by family relations. This subject is threefold: there is the effect, upon children, the effect upon the mother, and the effect upon the father. It is, of course, undoubtedly difficult to disentangle these three, since the family is a closely-knit unit, and anything that affects the parents affects also their influence upon the children. Nevertheless, I shall attempt to divide the discussion into these three heads, and it is natural to begin with the children, since everybody is a child in the family before being a parent.

If we are to believe Freud, the emotions of a young child towards the other members of his family have a somewhat desperate character. A boy hates his father, whom he regards as a sexual rival. He feels, in regard to his mother, emotions which are viewed with the utmost abhorrence by traditional morality. He hates his brothers and sisters because they absorb some part of the parental attention, of which he would like the whole to be concentrated upon himself. In later life, the effects of these turbulent passions are of the most diverse and terrible kinds, varying from homosexuality at best to mania at worst.

This Freudian doctrine has caused less horror than one might have expected. It is true that professors have been dismissed from their posts for believing it, and that the British police deported one of the best men of his generation (note: Homer Lane) for acting upon it. But such is the influence of Christian asceticism that people have been more shocked by Freud's insistence upon sex than by his picture of infantile hatreds. We, however, must try to make up our minds without prejudice as to the truth or falsehood of Freud's opinions concerning the passions of children. I will confess, to begin with, that a considerable experience of young children during recent years has led me to the view that there is much more truth in Freud's theories than I had formerly supposed. Nevertheless, I still think that they represent only one side of the truth, ,and a side which can easily, with a little good sense on the part of parents, be rendered very unimportant.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM14-010.HTM

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創刊日:2014-12-19  
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