名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第十一章 売春 n.8 

2018/07/18

 『結婚論』第十一章 売春 n.9:

 ハヴロック・エリス(Havelock Ellis, 1859-1939: 性科学者)は,売春に
ついての非常に興味深い研究の中で,私には妥当とは思えない,売春(制度)
に賛成する,ある議論を展開している。エリスは,(その議論を)まず酒神祭
(the orgy)の考察で始めている。この酒神祭(酒を飲んでの乱痴気騒ぎ)は,大
部分の古代文明に存在していて,普段は(注:at other times 酒神祭の時以
外)は抑えていなければならない無政府的な衝動にはけ口を与えるものである
。彼によれば,売春は,酒神祭から発達したものであり,以前は酒神祭が果た
していた目的を,ある程度,果たしているという。彼によれば,多くの男は,
束縛や,礼儀正しさや,因習的な結婚という上品な制限(限界)の中では,完
全な満足を得ることができない。そこで,そういう男たちは,時々売春婦(娼
婦)のもとを訪れることで,彼らに許された,他のいかなるはけ口よりも反社
会性の少ないはけ口を見いだすのだ,と彼は考える。

 しかし,この彼の議論(argument 論証)は,形式はより近代的ではあるけれ
ども,根本的には,レッキーによる議論と変わらない。抑圧されない性生活を
送っている女性は,男性同様,彼が考察している衝動に駆られやすいので,も
し女性の性生活が解放されたならば,男性は,単に金銭目的のプロの(売春を
職業としている)女(注:売春婦)とのつきあいをわざわざ求めなくても,問
題の衝動を満足させることができるだろう。これこそ,実際,女性の性的解放
から期待される大きな利点の一つである。
 私が(これまでに)観察することができたかぎりでは,古いタブーに左右さ
れない性に関する意見や感情を持っている女性は,ヴィクトリア朝時代で可能
であったものよりも,より完全な満足感を結婚生活に見いだすとともに,与え
ることができるのである。古い道徳が衰えたところではどこでも,売春もまた
衰えている。以前は,時々売春婦(娼婦)のもとを訪れるように駆られた青年
も,現在では,自分と同類の娘と(性的)関係を結べるようになっている。そ
の関係は,(男女)どちらの側も自由であり,純粋に肉体的な要素が重要であ
るのとまったく同様に心理的な要素も重要であり,しばしば,どちらの側にも
かなりの程度の情熱的な愛が含まれているもの(関係)である。いかなる真の
道徳の観点から見ても,このことは,古い制度に対して,素晴らしい進歩と言
わなければならない。道学者たち(モラリストたち)は,以前よりも(性的不道
徳を)隠しにくくなったために,その進歩を残念がっているけれども,美徳か
らの逸脱を道学者の耳に入れてはならないというのは,結局は,道徳の第一原
理ではない(たりえない)のである。

 若い人たちの間のこの新しい自由は,まったく喜ぶべきことであり,獣性の
ない男性と,気難しい潔癖さのない女性の世代を生み出している,と私は考え
る。この新しい自由に反対する人びとは,要するに,守ることが不可能な厳格
な道徳律の重圧に対する唯一の安全弁としての売春の存続を(自分は)主張し
ているのだということ(事実)を,率直に直視しなければならない。

Chapter XI: Prostitution, n.9


 Havelock Ellis, in his very interesting study of prostitution, 
advances an argument in its favour which I do not believe to be valid.
 He begins by a consideration of the orgy, which exists in most early
 civilizations, and affords an outlet for anarchic impulses which at 
other times have to be controlled. According to him, prostitution 
developed out of the orgy, and serves in some degree the purpose which
 the orgy formerly served. Many men, he says, cannot find complete 
satisfaction within the restraints, the decorum, and the decent 
limitations of a conventional marriage, and such men, he thinks, find 
in an occasional visit to a prostitute an outlet less anti-social than
 any other that is open to them. At bottom, however, this argument is
 the same as Lecky's, although its form is more modern. Women whose 
sexual life is uninhibited are as liable as men to the impulses which
 Havelock Ellis is considering, and if the sexual life of women is 
liberated, men will be able to find satisfaction for the impulses 
concerned, without having to seek the company of professionals whose
 motive is purely pecuniary. This is indeed one of the great a
dvantages to be hoped from the sexual liberation of women. As far as
 I have been able to observe, women whose opinions and feelings about
 sex are not subject to the old taboos are able to find and give much
 fuller satisfaction in marriage than was possible in Victorian days.
 Wherever the older morality has decayed, prostitution also has 
decayed. The young man who would formerly have been driven to 
occasional visits to prostitutes is now able to enter upon relations
 with girls of his own kind, relations which are on both sides free, 
which have a psychological element quite as important as the purely 
physical, and which involve often a considerable degree of passionate
 love on both sides. From the point of view of any genuine morality, 
this is an immense advance upon the older system. Moralists regret it
 because it is less easy to conceal, but it is after all not the first
 principle of morality that lapses from virtue should not come to the
 ears of the moralist. The new freedom between young people is, to my
 mind, wholly a matter for rejoicing, and is producing a generation of
 men without brutality and women without finicky fastidiousness. Those
 who oppose the new freedom should face frankly the fact that they are
 find in an occasional visit to a prostitute in effect advocating the
 continuance of prostitution as the sole safety-valve against the
 pressure of an impossibly rigid code.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM11-090.HTM

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創刊日:2014-12-19  
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