名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第七章 女性の解放, n.6

2018/05/01

 第七章 女性の解放 n.6; 性道徳はダブル・スタンダード?

 けれども,ここでちょっと立ち止まって(一息入れて),女性は男性と(権利
において)対等(平等)であるべきであるという要求の論理的な意味合いを考
えてみよう。男性は,大昔(太古)から,たとえ理論上ではなくても(理屈は
ともかく),実際上(は)不正(不法)な性関係(注:「不倫」には,通常,売春
婦との性関係は含まれない)にふけることを許されてきた。男性は,結婚する
際に童貞であることを期待されなかったし,結婚後でさえ,妻や隣人に絶対に
知られない限り,男性の不貞はひどく重大なこととして見られることはない。
このような制度を可能にしたのは,ひとえに,売春(制度)の存在であった。
けれども,この制度は,現代人には弁護しにくいものである。そこで,夫と同
様に,貞淑でないのに貞淑であると思われたい(貞淑ぶりたい)女性を満足さ
せるために,女性も男性売春団を設けることで男性と同じ権利を獲得すべきだ
と提案する者はほとんどいないであろう。
 とは言っても,今日のような晩婚時代においては,自分と同じ階級(階層)の
女性と世帯(家)を持つ余裕ができるまで性欲を抑える男性はほんのわずかだ
ろうということは,まったく確かなことである(注:"continent":性欲を抑え
ることができる)。そうして,未婚の男性が性欲を抑えようとしないのなら,
未婚の女性も,平等の権利があるとの根拠のもと,自分たちも性欲を抑える必
要はない,と主張するであろう。道学者(モラリスト)にとって,こういう事
態は疑いもなく残念なこと(遺憾なこと)である。そのことについて徹底的に
考え抜くという苦労(trouble)をする因習的な道学者は,わざわざこのこと
を考え抜いた者なら皆,自分が,実際上,いわゆる二重基準(ダブル・スタン
ダード)に立たされていることを理解するであろう。即ち,性的な貞節は,男
性よりも女性にとって必須であるという見解である。自分の倫理説は,男性の
禁欲(節制)をも要求するのだと論じるのは,大いに結構なことである。これ
に対しては,秘密裏に(他人にわからないようにして)罪を犯すのは男にとっ
て容易なことであるので,この(性的節制の)要求を男に強いることはできな
いという,明らかなしっぺ返し(反駁)がある。
 このようにして,因習的な道学者たちは,男女の不平等を認めざるをえない
だけでなく,若者(たち)は彼らと同じ階級の娘とよりも売春婦と性交するほう
がよい,という見解をとることを余儀なくさせられる。娘との関係は,売春婦
との関係と違って,金銭ずくではなく,愛情深く,まったく楽しいかもしれな
いにもかかわらずである。道学者たちは,もちろん,自分でも守られないだろ
うと承知している道徳を擁護(主唱)することによって,その結果がどうなる
かを十分考えてはいない。彼らは,自分が売春を擁護しないかぎり,売春が自
分の教えの必然的な帰結になっても自分には責任がない,と考えている。けれ
ども,このことは,今日の職業的な道学者は平均以下の知性しか持ち合わせて
いないという,よく知られた事実の別な一例にすぎない。

Chapter VII: The Liberation of women, n.5

Let us, however, pause a moment to consider the logical implications 
of the demand that women should be the equals of men. Men have from 
time immemorial been allowed in practice, if not in theory, to indulge
 in illicit sexual relations. It has not been expected of a man that 
he should be a virgin on entering marriage, and even after marriage, 
infidelities are not viewed very gravely if they never come to the 
knowledge of a man's wife and neighbours. The possibility of this 
system has depended upon prostitution. This institution, however, is
one which it is difficult for a modern to defend, and few will suggest
 that women should acquire the same rights as men through the 
establishment of a class of male prostitutes for the satisfaction of
 women who wish, like their husbands, to seem virtuous without being
 so. Yet it is quite certain that in these days of late marriage only
 a small percentage of men will remain continent until they can afford
 to set up house with a woman of their own class. And if unmarried men
are not going to be continent, unmarried women, on the ground of equal
 rights, will claim that they also need not be continent. To the 
moralists this situation is no doubt regrettable. Every conventional
 moralist who takes the trouble to think it out will see that he is 
committed in practice to what is called the double standard, that is
 to say, the view that sexual virtue is more essential in a woman 
than in a man. It is all very well to argue that his theoretical 
ethic demands continence of men also. To this there is the obvious 
retort that the demand cannot be enforced on the men since it is 
easy for them to sin secretly. The conventional moralist is thus 
committed against his will not only to an inequality as between men
 and women, but also to the view that it is better for a young man to
 have intercourse with prostitutes than with girls of his own class,
in spite of the fact that with the latter, though not with the former,
his relations are not mercenary and may be affectionate and altogether
delightful. Moralists, of course, do not think out the consequences of
 advocating a morality which they know will not be obeyed; they think
 that so long as they do not advocate prostitution, they are not 
responsible for the fact that prostitution is the inevitable outcome
 of their teaching. This, however, is only another illustration of 
the well-known fact that the professional moralist in our day is a 
man of less than average intelligence.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM07-070.HTM    

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創刊日:2014-12-19  
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