名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第七章 女性の解放, n.1

2018/04/23

 第七章 女性の解放 n.1; 女性運動の初期の歴史

 現代における性道徳の過渡的状態は(過渡的状態にあるのは),主に二つの
原因による。第一は,避妊方法(避妊薬及び避妊 用具)の発明であり,第二
は,女性の解放である。これらの原因のうち前者は後から扱うことにしよう。
本章の主題は後者についてである。

 女性の解放は,民主主義運動の一部(一環)であり,フランス革命(フランス
市民革命)とともに始まっている。フランス革命は,すでに見たように,相続法
を,ある意味で,娘たちに有利に改めた。メアリー・ウルスタンクラフトの
『女性の権利の擁護』(1792年刊)は,フランス革命を引き起こし,フランス
革命によって引き起こされた(もたらされた)思想の産物である。彼女の時代
から今日にいたるまで,男性との平等(男女平等)を求める女性の要求は,絶
えず,ますます強く主張されて,成果を挙げてきた。ジョン・スチュアート・
ミル(1806-1873)の 『女性の隷属』は,とても説得力があり,十分に論理的
に議論が述べられている書物であり,ミル自身の世代のすぐ後に続く世代の思
慮深い人々に大きな影響を及ぼした。私の両親は,ミルの信奉者であり,母は
,早くも1860年代に,女性の投票権(婦人の選挙権)を支持する演説をするのを
常としていた。母のフェミニズムはとても熱烈なものであったために,私は英
国の最初の女医であるギャレット・アンダーソン博士の手でこの世に誕生させ
られることになったほどであった。彼女は,当時,有資格の開業医になること
を許されおらず,公認の助産婦にすぎなかった。こうした初期のフェミニスト
運動(女権拡張運動)は,上流及び中流階級に限定されていたので,あまり大き
な政治力を有していなかった。毎年,女性に投票権をあたえる法案が議会に提
出された。しかし,いつもフェイスフル・ベッグ氏が提案し,ストランダウエ
イズ・ビッグ氏が支持したけれども,当時は,その法案が可決されて立法化さ
れる見込みはまったくなかった。けれども,当時の中流階級のフェミニストた
ちは,自分たち自身の領域で,一つの大きな成功を収めた。即ち,既婚婦人財
産法(1882)の通過である。この法律が可決されるまでは,既婚女性がいかな
る財産を所有していようとも,それは夫の管理のもとに置かれた。もちろん,
信託財産(a Trust)がある場合は,夫は元金(capital)を使うことはできなかっ
た。

 政治面における女性運動のその後の歴史は,あまりにも最近のことであり,
あまりにもよく知られているので,要点をくりかえす必要はない。けれども,
大部分の文明国において女性が政治的権利を獲得した速さは,それに伴ってど
れほど大きなものの見方の変化が生じたかを考えると,過去に類例がないとい
うことは,述べておく価値がある(worth observing)。即ち,奴隷制度の廃止
は,多少これに類似してはいるが,結局,近代のヨーロッパ諸国には奴隷制度
は存在しなかったし,また,男女の関係のような親密なものと関係するもので
もなかった(注:従って,類例がないと言えるのである)。

Chapter VII: The Liberation of women

The transitional condition of sexual morals at the present time is due
 in the main to two causes, the first being the invention of 
contraceptives, and the second the emancipation of women. The former
 of these causes I shall consider at a later stage; the latter is the
 subject of this chapter. 

The emancipation of women is part of the democratic movement ; 
it begins with the French Revolution, which, as we have already seen, 
altered the laws of inheritance in a sense favourable to daughters. 
Mary Wollstonecraft's Vindication of the Rights of Women (I792) is a 
product of the ideas that caused and were caused by the French 
Revolution. From her time down to the present day the claim of women
 to equality with men has been asserted with continually increasing 
emphasis and success. John stuart Mill's Subjection of Women is a very
 persuasive and well-reasoned book, which had a great influence upon
 the more thoughtful members of the generation immediately following 
his own. My father and mother were disciples of his, and my mother 
used to make speeches in favour of votes for women as early as the 
'sixties. So ardent was her feminism that she caused me to be brought
 into the world by the first woman doctor, Dr. Garrett Anderson, who 
was at that time not allowed to be a qualified medical practitioner
 but was only a certificated midwife. The feminist movement in those
 early days was confined to the upper and middle classes, and had 
therefore not much political strength. A bill to give votes to women
 came before Parliament every year, but although always introduced by
 Mr. Faithful Begs and seconded by Mr. Strangways Pigg, it never at 
that time had any chance of passing into law. The middle-class 
feminists of that day had, however, one great success in their own 
sphere, namely the passage of the Married Women's Property Act (I882).
 Until the passage of that Act, whatever property a married woman 
might possess was in her husband's control, although of course where
 there was a Trust he could not spend the capital. The subsequent 
history of the women's movement on the political side is too recent 
and too well known to need recapitulating. It is, however, worth 
observing that the rapidity with which women in most civilized 
countries have acquired their political rights is without parallel in
 the past, considering the immense magnitude of the change in outlook
 that has been involved. The abolition of slavery is more or less 
analogous, but after all slavery did not exist in European countries
 in modern times, and did not concern anything so intimate as the 
relations of men and women.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM07-010.HTM

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
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