名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
読者と一緒に育てていきたいと思っています.


全て表示する >

ラッセル『結婚論』第六章 ロマンティックな恋愛 n.3

2018/04/10

 第六章 ロマンティックな恋愛 n.3:

 ロマンチックな恋愛は中世(時代)以前には知られていなかったと言えば正し
くないであろう。しかし,ロマンチックな恋愛が,一般に認められた情熱の一
形式(一形態)となったのは,ようやく中世になってからである。ロマンチッ
クな恋愛の本質は,最愛の対象を,非常に手に入れ難くかつ非常に貴重な存在
と見なすことにある。ロマンチックな恋愛は,それゆえ,詩により,あるいは
歌により,あるいは武勲により( by feats of arms),あるいは,その他,
その貴婦人(lady)の一番喜びそうに思われるやり方で,最愛の対象の愛を勝ち
得るために(その男に)大変な努力をさせる(ことになる)。貴婦人には測り
知れない価値があるという信念は,彼女を手に入れることの困難さが(人間の)
心理に及ぼす効果(影響)であり,男性が容易にその女性を手に入れることがで
きる場合には,男性の女性に対する感情は,ロマンチックな恋愛の形をとらな
い,と断言(主張)してよいと思われる。

 中世に現われるロマンチックな恋愛は,最初は,男性の恋人が,合法的であろ
うと,違法(非合法的)であろうと,,性的な関係を持つことができるような
女性に向けられたのではない。道徳と因習の超えることのできない障壁によっ
て,(彼女たちの)ロマンチックな恋人から隔てられた,最高に尊敬すべき女
性に向けられたのである。カトリック教会は,性は本来不純なものであると男
たちに感じさせる仕事をあまりに徹底的にやりとげたので,手に入らないもの
だと思うのでない限り,女性に対して詩的な感情を抱くことができなくなって
しまった。従って,恋愛が何らかの美を持つであるのなら,プラトニック(精
神的なもの)でなければならなかった。

 現代人にとって,中世の詩人の(である)恋する人たちの心理を想像によっ
て感じることは,とても困難である。彼らは,(その貴婦人と)親密になりた
いといういかなる欲求もなしに,熱烈で献身的な愛情を公言する。これは,現
代人には非常に奇妙に思われるので,彼らの恋愛は文学的慣習にすぎないと考
えがちである。確かに,時には,そういうものにすぎないこともあったし,ま
た,確かに,恋愛の文学的表現は,慣習に支配されていた。しかし,『新生』
の中に表現されているベアトリーチェに対するダンテの愛は,確かに,ただ単
に慣習に基づくものではなかった。それとは逆に,大部分の現代人に知られて
いる,いかなる情念よりも情熱的なものである,と言うべきであろう。

 中世の高貴な精神の持ち主は,この地上の生活を悪しきものと考えていた。
我々人間の本能は,彼らにとっては,腐敗と原罪の所産であった。彼らは,肉
体と色欲を憎んだ。彼らにとっては,純粋な喜びは,性的な混ざりものを一切
含まないと思われる,恍惚とした瞑想の中でのみ見いだされる(のであった)。
恋愛の領域では,このような見方は,ダンテに見るような態度をもたらさざる
をえなかった。ある女性を熱愛しかつ尊敬している男性は,彼女と性交の観念
とを結びつけることができなかったであろう。なぜなら,あらゆる性交は,彼
にとっては,多かれ少なかれ,不純なものであったからである。そこで,彼の
恋愛は,詩的で想像力に富む形式をとり,自然と(当然),象徴性に満ちあふ
れたものになったのである。この文学への影響は,皇帝フリードリヒ二世の宮
廷に始まり,ルネッサンスに花開くまでの,恋愛詩の漸進的な発展に見られる
ように,賞賛すべきものである。 
To say that romantic love was unknown before the Middle Ages would not
 be correct, but it was only in the Middle Ages that it became a 
commonly recognized form of passion. The essential of romantic love is
that it regards the beloved object as very difficult to possess and as
 very precious. It makes therefore great efforts of many kinds to win 
the love of the beloved object, by poetry, by song, by feats of arms, 
or by whatever other method may be thought most pleasing to the lady. 
The belief in the immense value of the lady is a psychological effect 
of the difficulty of obtaining her, and I think it may be laid down 
that when a man has no difficulty in obtaining a woman, his feeling 
towards her does not take the form of romantic love. Romantic love, as
 it appears in the Middle Ages, was not directed, at first, towards 
women with whom the lover could have either legitimate or illegitimate
 sexual relations ; it was directed towards women of the highest r
espectability, who were separated from their romantic lovers by 
insuperable barriers of morality and convention. So thoroughly had the
 Church performed its task of making men feel sex inherently impure, 
that it had become impossible to feel any poetic sentiment towards a 
lady unless she was regarded as unattainable. Accordingly love, if it 
was to have any beauty, had to be platonic. It is very difficult for 
the modern to feel in imagination the psychology of the poet lovers in
 the Middle Ages. They profess ardent devotion without any desire for
 intimacy, and this seems to a modern so curious that he is apt to 
regard their love as no more than a literary convention. Doubtless on
 occasion it was no more than this, and doubtless its literary 
expression was dominated by conventions. But the love of Dante for 
Beatrice, as expressed in the Vita Nuova, is certainly not merely 
conventional ; I should say, on the contrary, that it is an emotion 
more passionate than any known to most moderns. The nobler spirits of
 the Middle Ages thought ill of this terrestrial life ; our human 
instincts were to them the products of corruption and original sin; 
they hated the body and its lusts; pure joy was to them only possible
 in ecstatic contemplation of a kind that seemed to them free from all
 sexual alloy. In the sphere of love, this outlook could not but 
produce the kind of attitude which we find in Dante. A man who deeply
 loved and respected a woman would find it impossible to associate 
with her the idea of sexual intercourse, since all sexual intercourse
 would be to him more or less impure; his love would therefore take 
poetic and imaginative forms, and would naturally become filled with
 symbolism. The effect of all this upon literature was admirable, as
 may be seen in the gradual development of love poetry, from its 
beginning in the court of the Emperor Frederick II to its flowering 
in the Renaissance.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM06-040.HTM

 <寸言>
 中世における恋愛は、現代と異なり、身分の差があるからこそ生じたもので
あった。それは騎士の淑女に対する恋愛感情の象徴されており、身分の低い女
性に対する恋愛感情などは詩作の対象とならなかった。

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
Score!: 97 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。