名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第五章 キリスト教倫理 n.3

2018/03/24

 第五章 キリスト教倫理 n.3:旧約聖書と新約聖書の大きな違いの一つ

 あらゆる私通(姦淫)を非難することは,キリスト教では目新しいことであ
った。旧約聖書は,大部分の初期の文明の道徳律(codes)同様,姦淫(不貞)
を禁止しているが,旧約聖書の言う姦淫(不貞)とは,既婚婦人との性交とい
う意味である。これは,旧約聖書を注意深く読む人なら誰にとっても明らかな
ことである。たとえば,アブラハムがサラを連れてエジプトヘ行ったとき,サ
ラは自分の妹であると王に伝える。王は,これを信じて,サラをハーレムに入
れる。その後,サラがアブラハムの妻だということが明らかになると,王は,
自分が知らず知らずのうちに罪を犯したことを知ってショックを受け,その事
実を打ち明けなかったことに対して,アブラハムをとがめる。これが,古代に
おける普通の道徳律であった。婚外性交をした女性は,悪く思われたが,男性
は,他人の妻と性交しないかぎり,非難されることはなかった。他人の妻と性
交する場合は,財産を侵害する罪であった。
 婚外の性交はすべて不道徳であるというキリスト教の見解は,上述の聖パウ
ロからの引用に見るように,あらゆる性交は,たとえ結婚している場合におい
ても遺憾なものである,という見解に基づいていた。この種の見解は,生物学
的事実に反するものであり,正気の人からは病的な精神異常としかみなされな
い。こういう見解がキリスト教倫理に埋め込まれているために,キリスト教は
,その全歴史を通じて,精神異常と不健康な人生観に向かわせる勢力になって
しまった。
 聖パウロの見解は,初期教会によって強調され,誇張された。独身は神聖な
ものとみなされ,人びとは世を捨てて砂漠に行き,サタンと戦ったが,その間
,サタンは人びとの想像力を好色の幻影でいっぱいにしたのだった。


Chapter V Christian Ethics, n.3

Condemnation of all fornication was a novelty in the Christian 
religion. The Old Testament, like most codes of early civilization, 
forbids adultery, but it means by adultery intercourse with a married
 woman. This is evident to anyone who reads the Old Testament 
attentively. For example, when Abraham goes to Egypt with Sarah he 
tells the king that Sarah is his sister, and the king, believing this,
 takes her into his harem; when it subsequently transpires that she is
 Abraham's wife, the king is shocked to find that he has unwittingly 
committed sin, and reproaches Abraham for not having told him the 
facts. This was the usual code of antiquity. A woman who had 
intercourse outside marriage was thought ill of, but a man was not
condemned unless he had intercourse with the wife of another, in which
 case he was guilty of an offence against property. The Christian view
that all intercourse outside marriage is immoral was, as we see in the
 above passages from St. Paul, based upon the view that all sexual 
intercourse, even within marriage, is regrettable. A view of this 
sort, which goes against biological facts, can only be regarded by 
sane people as a morbid aberration. The fact that it is embedded in 
Christian ethics has made Christianity, throughout its whole history,
 a force tending towards mental disorders and unwholesome views of 
life.
St. Paul's view were emphasized and exaggerated by the early Church; 
celibacy was considered holy, and men retired into the desert to 
wrestle with Satan while he filled their imaginations with lustful 
visions.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM05-030.HTM

 <寸言>
 家父長制の社会においては、家長にとっては、妻も子供も財産の一種となる
。従って、妻と私通をした相手の男に対しては、自分の財産をよくも勝手に使
ってくれたな、という怒りになる。妻に対する愛情がない場合でも、私有財産
に対する侵害はゆるされざることとして相手にその損害の補填を求めることに
なる。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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