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(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第三章「家父長制度」n.3:祖先崇拝と世襲制度

2018/03/10

 第三章 家父長制度 n.3  

 父親たちは,父性というもの(父性という事実が存在すること)を発見した
ので,(地球上の)あらゆる場所で,この事実を最大限に利用しはじめた(利
用へと進んだ)。文明の歴史は,主として父親の権力(父権)が徐々に衰えて
いった記録(=歴史)であり,大部分の文明国においては,父親の権力(父権)
は,歴史的記録が始まる(有史時代の始まりの)直前に最高点に達した(ので
あった)。祖先崇拝は,中国や日本では現代まで続いてきているが,これは,
初期の文明の普遍的な特徴(特質)であったと思われる。父親は,子供に対し
て絶対的な権力を持っており,ローマで見られたように,多くの場合,生殺与
奪権にまで及んでいた。娘は,文明諸国を通して(いたることろで),息子は
,非常に多くの国において,父親の同意(承諾)なしに結婚することはできな
かったし,父親が娘や息子の結婚相手を決めるのは普通であった。女性は,生
涯のいかなる時期においても,自立(独立)した生活をすることがなく,最初
は父親に,続いて夫に従った(のである)。

(だが)それと同時に,年配の女性(婦人)は,家庭内ではほぼ専制的な権力
を行使することができた。彼女(年とった女性)の息子や嫁は,皆一つ屋根の
下に住み,嫁は完全にその老婦人に従属していた。中国では,今日にいたるま
で(注:本書『結婚論』の出版は1929年であり,ラッセルは1920年から1921年
まで中国の北京大学の客員教授であった。),若い嫁が姑による虐待によって
自殺に追い込まれることが稀ではない。そして,いまだに中国で見られること
は,ヨーロッパやアジアの文明化した地域の至るところで,ごく最近まで普遍
的に見られたことにすぎない。イエス・キリストが,私が(この世に)やって
きたのは,息子を父親に,嫁を姑に刃向かわせるためであると言った時,彼は
極東で今なお見られる(見いだせる),まさしくこういった家庭のことを考え
ていたのである。父親が最初に,自分の優れた力で獲得した権力は,宗教によ
って強化された。そして,宗教は,その大部分の形式において,神(gods 
神々)は政府(Government 統治する者)の味方であるという信仰である,と定
義できる。

 祖先崇拝,あるいはそれに類似したものは,非常に広範囲に行われていた。
キリスト教の宗教理念(思想)には,すでに見たように,父性の威厳が充満し
ている。君主制や貴族制度の社会組織や相続制度は,どこを見ても,(男系の)
世襲制度(paternal system)に基づいていた。古代では,経済的動機がこの
制度をささえていた。創世記を見ると,男たちがどんなに多くの子孫をほしが
っていたか,また,多くの子孫ができると,それがどんなに有利であったかが
わかる。息子が殖えることは,羊や牛の群れが殖えることと同様に有利なこと
であった。それこそが,当時,エホバが人間に「産めよ! 増やせよ!」と命じた
理由であった。

Chapter III Patriarchal Systems, n.3

Fathers, having discovered the fact of their existence, proceeded 
everywhere to exploit it to the uttermost. The history of civilization
 is mainly a record of the gradual decay of paternal power, which 
reached its maximum, in most civilized countries, just before the 
beginning of historical records. Ancestor worship, which has lasted to
 our own day in China and Japan, appears to have been a universal 
characteristic of early civilization. A father had absolute power over
 his children, extending in many cases, as in Rome, to life and death.
Daughters throughout civilization, and sons in a great many countries,
 could not marry without their fathers' consent, and it was usual for 
the father to decide whom they should marry. A woman had in no period 
of her life any independent existence, being subject first to her 
father and then to her husband. At the same time an old woman could 
exercise almost despotic power within the household; her sons and 
their wives all lived under the same roof with her, and her 
daughters-in-law were completely subject to her. Down to the present 
day in China it is not unknown for young married women to be driven to
suicide by the persecution of their mothers-in-law, and what can still
 be seen in China is only what was universal throughout the civilized
 parts of Europe and Asia until very recent times. When Christ said he
 was come to set the son against the father and the daughter-in-law 
against the mother-in-law, He was thinking of just such households as 
one still finds in the Far East. The power which the father acquired 
in the first instance by his superior strength was reinforced by 
religion, which may in most of its forms be defined as the belief that
 the gods are on the side of the Government. Ancestor worship, or 
something analogous, prevailed very widely. The religious ideas of 
Christianity, as we have already seen, are impregnated with the 
majesty of fatherhood. The monarchic and aristocratic organization of
 society and the system of inheritance were based everywhere upon 
paternal system. In early days economic motives upheld this system.
 One sees in Genesis how men desired a numerous progeny, and how 
advantageous it was to them when they had it. Multiplication of sons
 was as advantageous as multiplication of flocks and herds. That was
 why in those days Yahveh ordered men to increase and multiply.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM03-030.HTM

 <寸言>
 人種はいろいろあるが、もとはと言えば「人類はみな兄弟」。アダムとイブ
の物語の神話を持ち出すまでもなく、人類学,いや,DNAの研究から、そのこと
がわかる。アフリカでチンパンジーから枝分かれし進化したヒトは、ユーラシ
ア大陸、ベーリング海をへてアメリカ大陸を渡るなどして、世界中に分散して
いった。白人と黒人とではまったく別の種であるかのように錯覚するが、実際
は、長い年月をかけて、気候風土などの影響を受けて変わっていったにすぎな
い。
世界中で王権神授説的な話が創作され、支配者の権力は神から与えられたもの
だという偽装が行われてきた。日本でも同様にして天皇制が創られた。
しかし、科学が進んだ現代でも、人類は神によって創造されたのであり、自分
たちは選ばれた民族だと信じたい人々がけっこういる。米国では進化論を信じ
ないひとがけっこういるし、日本では天皇をいまだ神格化するとともに、日本
民族は最優秀の民族であり、世界を支配する権利や義務があると思っている人
さえ存在している。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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