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(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第二章「母系社会」n.5:◯ちゃんは△に似ているね?

2018/03/05

 第二章 母系社会 n.5   

 (トロブリアンド諸島では)大変不思議なことに,子供とその母親の夫との
間には血のつながりはないと信じられているにもかかわらず,子供は自分の母
親あるいは兄弟姉妹よりも,むしろ,母親の夫に似ると考えられている。事実
,兄と妹(弟と姉/or 兄弟と姉妹)あるいは,子供と母親が似ているとほの
めかすことは,はなはだしい無作法なことである(とされる)。また,この上
もなくはっきりと似ている場合でも,はげしく否定される。
 マリノフスキーの見解は,(こうした)母親よりも父親に似ているという信
念によって,父親の子供に対する愛情は刺激される,というものである。マリ
ノフスキーは,(トロブリアンド諸島における)父と子の関係は,文明人の間
で往々見られるよりも,一段と調和がとれており(仲むつまじく)情愛深いも
のであることを発見した。また,予測されたとおり,彼はエディプス・コンプ
レックス(フロイトが提示した概念で,フロイトの言う「男根期」に生じ始める
無意識的葛藤/ラッセルはそのような概念に否定的)の形跡をまったく発見し
なかった。
 マリノフスキーは,論理的に説明しようといろいろ努力したが,父性(注:
ここでは,父親の精子によって妊娠しないと子どもは生まれないということな
ので,ウィキペディアの「父性」の説明は不適切と思われる。)というものが
あるということを,トロブリアンド諸島の友人たちに納得させることはまった
くできなかった。彼らは,これ(父性)を宣教師によって作り上げられた(捏
造された)ばかばかしい話だとみなした。キリスト教は,家父長的な宗教であ
るから,父権(fatherhood)というものを認めない人びとには,感情的にも知的
にもキリスト教(の考え方)を理解させることができないのである。「父なる
神」("God the Father")の代わりに,「母方のおじなる神」("God the 
Maternal Uncle")という言い方をする必要があるであろうが,これでも正しい
意味あいが十分伝わらない。なぜなら,父性(fatherhood 父親であること)は
,権力と愛情の双方を含意しているのに対して,メラネシアにおいては,母方
のおじが権力(のみ)を持ち,父親が愛情(のみ)を持っているからである。
人間は神の子であるという観念は,トロブリアンド諸島民には伝えることので
きない観念である。彼らは,誰にせよいかなる人間も任意の男性の子供(男性
がいないと子どもは生まれない)とは考えていないからである。その結果,宣
教師たちは,宗教の伝道ができるようになる前に,まず,生理学的な事実と取
り組むことをしいられる。マリノフスキー(の著作)から推して,宣教師たちは
,この当初の仕事にまったく成功せず,そのために,福音の教えまで進むこと
がまったくできなかったようである。

Chapter II Matrilineal Societies,n.5

Strangely enough, in spite of the belief that there is no blood tie
 between the child and its mother's husband, it is supposed that 
children resemble their mothers' husbands rather than their mothers or
 their brothers and sisters. Indeed, it is very bad manners to suggest
 a resemblance between a brother and sister, or between a child and 
its mother, and even the most obvious resemblances are fiercely 
denied. Malinowski is of opinion that the affection of fathers for 
their children is stimulated by this belief in a resemblance to the
 father rather than to the mother. He found the relation of father 
and son a more harmonious and affectionate one than it often is among
 civilized people, and, as might have been expected, he found no trace
 of the Oedipus complex.
Malinowski found it quite impossible, in spite of his best 
argumentative efforts, to persuade his friends on the islands that 
there is such a thing as paternity. They regarded this as a silly 
story invented by the missionaries. Christianity is a patriarchal 
religion, and cannot be made emotionally or intellectually 
intelligible to people who do not recognize fatherhood. Instead of
 "God the Father" it would be necessary to speak of "God the Maternal
 Uncle", but this does not give quite the right shade of meaning, 
since fatherhood implies both power and love, whereas in Melanesia the
 maternal uncle has the power and the father has the love. The idea 
that men are God's children is one which cannot be conveyed to the 
Trobriand Islanders, since they do not think that anybody is the child
 of any male. Consequently, missionaries are compelled to tackle first
 the facts of physiology before they can go on to preach their 
religion. One gathers from Malinowski that they have no success in 
this initial task, and have, therefore, been quite unable to proceed 
to the teaching of the Gospel.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM02-050.HTM

 <寸言>
 一神教の国々や地域においては(キリストやマホメットなど)預言者(教祖
さま)はほとんど男性であるのに対し、多神教(豊穣!の神々)の国々や地域
においては、女性の教祖様はめずらしくない。雌雄の別がないはずの「神」で
さえ、(一神教の世界では)男性のイメージが大きい。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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