名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ラッセル『結婚論』第二章「母系社会」n.3: 父親の子供に対する関係

2018/03/02

 第二章 母系社会 n.3   

 現代の文明社会は,すべて家父長制(の)家族に基礎を置いており,女性の
美徳(貞操)という観念の全体が,家父長制家族を可能にするために作りあげ
られていることから(考えて),どういう自然な衝動が働いて父性の感情を生
み出すに至ったのかを問うことは重要である。この問いは,もの思わぬ(無反
省な)人びとが考えるほど決して簡単なものではない。母親の我が子に対する
感情は,少しも理解しがたいものではない。少なくとも,離乳期までは,(母
親と子どもとの)緊密な身体的な(肉体的な)つながりがあるからである。
 しかし,父親の子供に対する関係は,間接的,仮説的,推論的(な関係)で
ある。つまり,それは妻の貞操に対する信念(信頼心)と結びついており,従
って,とても知的な領域に属しているので,本能的なもの(property 人間の
属性)とみなすことはできない。あるいは,少なくとも,父性の(父親として
の)感情は,本質的に言って,男性自身の子供に向けられているものでなけれ
ばならないと想定するならば,本能的なものとは言えないと思われるだろう。
けれども,これは決して,必ずしも事実ではない。メラネシア人は,人には父
親がある(注:父親が介在しなければ子どもは生まれない)ということを知らな
いが,それでも彼らの間では,父親は,子供が自分の子供だと知っている地域
の父親に少なくとも負けないくらい,自分の子供をかわいがる。(注:父性の感
情は,本能的だとも,本能的ではないとも,簡単には決められない,というこ
と)
 マリノフスキーのトロブリアンド諸島民に関する著書は,父性の心理に大き
く光(照明)を投げかけた。特に,次の3冊の書物−『未開社会における性と抑
圧』,『原始的な心理における父(親)』,『北西部メラネシアにおける未開人
の性生活』は,ここで父性感情と呼んでいる複雑な感情を理解するための必読
書である。事実,男性が子供に興味・関心を寄せるようになるには,まったく
異なる二つの理由がある。即ち,男性は,自分の子供であると信じるがゆえに
子供に興味・関心を寄せる場合もあるだろうし,妻の子供だと知っているがゆ
えに子供に興味・関心を寄せる場合もあるだろう。生殖における父親の役割が
知られていない場合は,このうち,第二の動機のみが働く(のである)。

Chapter II Matrilineal Societies,n.3

Seeing that all civilized modern societies are based upon the 
patriarchal family, and that the whole conception of female virtue has
 been built up in order to make the patriarchal family possible, it is
 important to inquire what natural impulses have gone to produce the 
sentiment of paternity. This question is by no means so easy as 
unreflective persons might suppose. The feeling of a mother towards 
her child is one which it is not at all difficult to understand; since
 there is a close physical tie, at any rate up to the moment of 
weaning. But the relation of father to child is indirect, hypothetical
 and inferential : it is bound up with beliefs as to the virtue of the
 wife, and belongs accordingly to a region too intellectual to be 
regarded as properly instinctive. Or at least it would so seem if one
 supposed that the sentiment of paternity must be directed essentially
 towards a man's own children. This, however, is by no means 
necessarily the case. The Melanesians do not know that people have
 fathers, yet among them fathers are at least as fond of their 
children as they are where they know them to be their children.
 A flood of light has been thrown upon the psychology of paternity by
 Malinowski's books on the Trobriand Islanders. Three books especially
 - Sex and Repression in Savage Society, The Father in Primitive 
Psychology, and The Sexual Life of Savages in North-West Melanesia- 
are quite indispensable to any understanding of the complex sentiment
 which we call that of paternity. There are, in fact, two entirely 
distinct reasons which may lead a man to be interested in a child: 
he may be interested in the child because he believes it to be his 
child, or again he may be interested in it because he knows it to be 
his wife's child. The second of these motives alone operates where the
 part of the father in generation is not known.
 出典: Marriage and Morals, 1929.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM02-030.HTM

 <寸言>
 愛情をどこまで発展させることができるか,また実際に発展・拡大させてい
るかによってその人の人間性の一面がわかる。
 子供に対する愛、孫に対する愛、正妻の子供に対する愛、愛人の子供に対す
る愛、親に対する愛、兄弟に対する愛、祖父母に対する愛、親しい友人に対す
る愛、同じ民族に対する愛、同じ人種に対する愛、人類に対する愛、いきとし
生けるもの全てに対する愛、・・・。
 具体的・即物的なもの(愛)からしだいに抽象的なもの(愛)になっていく。
他の生物無生物(土、太陽、国家)に対しても「愛を語る」ことはあるが、
それはだいぶニュアンスが異なる。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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