名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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脳を量子力学の言語で眺めるとどうなるであろうか?

2018/02/08

 我々は,いまだ,量子物理学(量子力学)の精確な言語で,人間の脳について
語ること学んできていない。実際,我々は,この言語を必要とするには,ほとん
ど人間の脳について知っていない。我々(人間)の問題に対する,量子物理学
の(種々の)神秘(不可解さ)の主要な関係は,それらの神秘(不可解さ)が,
我々(人間)は物質についてほとんど知っておらず,また,特に人間の脳に
ついてほとんど知っていないということを,示してくれることにある。
 生理学者の中には,まだ,顕微鏡を通して脳の組織(そのもの)を見ることが
できると想像している者がいる。もちろん,これは楽天主義的な幻想である。
あなたが椅子を見ていると思うとき,量子遷移を見ている(量子遷移が見えて
いる)わけではない。あなたは,物理的椅子との非常に長くて複雑な因果的関
係(因果的連鎖) −(即ち)光子(光のエネルギーが目に届き),(網膜内の)
桿体と錐体(rods and cones),視神経を通って脳に至る関係(つながり) 
−を有している経験を持っている。これらのすべての段階は,あなたが「椅子
を見る」という視覚経験を持つためには必要なものである。あなたは目を閉じ
ることによって光子(の衝突)を止める(目に対する刺激を止める)ことがで
きるだろう。視神経は切断できるであろう。脳の(視覚に対応する)適切な部
分(該当部分)は,弾丸によって(弾丸を脳に撃ちこめば)壊せるであろう。
もしこれらのいずれかのものが起れば,あなたは「椅子を見る」ことはないで
あろう。
 同様な考察は,生理学者が(今)吟味しつつあると思っている脳にもあては
まる。彼(生理学者)の中には,彼が見ていると思っている脳と,遠く隔たっ
た因果関係(因果的連鎖)を有している経験が存在している。その脳(観察中
の他人の脳)に関しては,彼の視覚に再生されるような構造的な諸要素のみを
知ることができる(注:ディスプレイ画面に映しだされる脳の電子画像)。構
造的でない(物的でない)特性に関しては何であれ,彼(生理学者)は何も知る
ことができない。脳(物質)の内容はそれに伴う精神の内容とは異なったもの
だと言う権利を,彼は持っていない。それが生きた脳であるならば,精神がそ
れにともなって存在することを,証拠や類推によって彼は証拠を持つが,死ん
だ脳の場合にはどちらの方面においても証拠に欠けている。

We have not yet learned to talk about the human brain in the accurate
 language of quantum physics. Indeed we know too little about it for 
this language to be necessary. The chief relevance, to our problem, of
the mysteries of quantum physics consists in their showing us how very
 little we know about matter, and, in particular, about human brains.
 Some physiologists still imagine that they can look through a 
microscope and see brain tissues. This, of course, is an optimistic 
delusion. When you think that you look at a chair, you do not see 
quantum transitions. You have an experience which has a very lengthy
 and elaborate causal connection with the physical chair, 
a connection proceeding through photons, rods and cones, and optic 
nerve to the brain. All these stages are necessary if you are to have
 the visual experience which is called "seeing the chair." You may 
stop the photons by closing your eyes, the optic nerve may be severed,
 or the appropriate part of the brain may be destroyed by a bullet. 
If any of these things has happened you will not "see the chair." 
Similar considerations apply to the brain that the physiologist thinks
 he is examining. There is an experience in him which has a remote 
causal connection with the brain that he thinks he is seeing. He can
 only know concerning that brain such elements of structure as will be
reproduced in his visual sensation. Concerning properties that are not
 structural, he can know nothing whatever. He has no right to say that
the contents of a brain are different from those of the mind that goes
 with it. If it is a living brain, he has evidence through testimony 
and analogy that there is a mind that goes with it. If it is a dead 
brain, evidence is lacking either way. 
 出典:Bertrand Russell : Mind and Matter (1950?)
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/19501110_Mind-Matter130.HTM 

 <寸言>
 2月4日(日曜)に放映されたNHKスペシャル(人体シリーズ)では「脳」の
特集をしていた。脳の中を電気パルスが走り、メッセージ物質が次から次へと
次の脳神経や脳細胞に渡されていく様子が映し出されていた。これほど詳細な
映像が撮影できたのは初めてだとのことであるが、もちろんこれは量子レベル
の話ではない。
 科学によって解明できるのは物質(人体などの生命体も含む)の構造や機能
に関することにとどまるので、その哲学的意味合いや解釈は人間に残されてい
る。また、そういったすばらしい科学も間違いやすい人間(個々人)が採取し
たデータに基づいているという制約がある。(即ち、相対性理論も量子力学も
絶対的な真理ではない。)

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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