名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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感覚能力のある存在に起こる出来事と生命のない物質に起こる出来事との相違

2018/02/03

 感覚能力のある存在(人間その他の生命体)に起こる事と生命のない物質に
起こる事との相違は何であるかという,非常に初歩的な問いをしてみよう
(注:みすず書房版の中村訳では,"happen to" の部分が訳出されていない。
/ things はここでは「事,事態」)。明らかに,あらゆる種類の事(things)
が,生命のない対象に起こる。(注:中村訳では,やはり"happen to" の部分
が訳出されておらず,"happen to"の意味をよく理解していなかったのか,
「Obviously all sorts of things happen to lifeless objects」を「明らか
にあらゆる種類の物は,生命のない対象である」と誤訳している。また,
'things'はここでは「事(こと)」であり,それも誤訳及び誤解の原因か?)
それら(生命のない対象)は動き,いろいろな変形を受けるが,これらの出来事
(occurrences)を「経験」しないが,一方,我々(人間)は我々の身に起こる
事(things)を「経験」する。(注:どういうわけか,ここにある"happen to"
 だけは「起こる」と訳出している。注意力散漫?)。

 多くの哲学者は「経験」を,意味内容は明らかであるが定義できないものと
して扱った。私はこれを間違いだと考える。私は,その意味は明らかだとは思わ
ない。しかし,定義できないとも考えない。経験を特徴づけるものは,現在の
反応に対する過去の出来事の影響である。あなたがが硬貨を自動券売機
(automatic machine 自動化された機械)に入れると,その券売機は前に反応
したのと全く同じように反応する。自動券売機は,硬貨を入れることは切符に
対する欲求を意味することであると知るようにならないし,即ち,とにかく,
前と全く同じようにすみやかに反応する。逆に,切符売場の男は,経験から学
び,もっと迅速かつもっと直接的な刺激が(券売機よりも)少なくても反応す
る。これが,我々をして彼(券売所の人間)は理解力をもっていると呼ばさせ
るようになるものである。こういった種類のものが記憶の本質をなすものであ
る。あなたがある人物と会い,その人はある言葉を述べる。あなたが次の機会
に彼に会った時,あなたはその言葉を思い出す。このことは,あなたが固そう
なある物体を見る時に,もしそれにあなたが触れれば,あなたはある種の触覚
を予想するという事実と,本質的に類似している。経験を単なる出来事とを区
別するものは,このような事である。券売機(自動機械)は経験をもたないが,
切符売場の男は経験をもっている。このことは,与えられた刺激は,機械におい
ては常に同じ反応をびきおこすが,人間においては違った反応を生じさせる,
ということを意味している。あなたが逸話を話すと聞き手は「私が初めてその
話を聞いた時に,どんなに笑ったかをご存じでしょう」と答える。けれども,
あなたが,冗談を聞くと笑う自動機械を造ったとすれば,きっと前に聞いたこと
のある冗談をいくら繰返したとしても,その度に笑うことであろう。,あなたは
,恐らく,もし唯物論的哲学を採用したくなったら,このことを考えれば,恐らく
,慰めを見出すであろう。

Let us ask ourselves a very elementary question: What is the 
difference between things that happen to sentient beings and things
 that happen to lifeless matter? Obviously all sorts of things happen
 to lifeless objects. They move and undergo various transformations, 
but they do not "experience" these occurrences whereas we do 
"experience" things that happen to us. Most philosophers have treated
 "experience" as something indefinable, of which the meaning is 
obvious. I regard this as a mistake. I do not think the meaning is 
obvious, but I also do not think that it is indefinable. What 
characterizes experience is the influence of past occurrences on 
present reactions. When you offer a coin to an automatic machine, it
 reacts precisely as it has done on former occasions. It does not get
 to know that the offer of a coin means a desire for a ticket, or 
whatever it may be, and it reacts no more promptly than it did before.
 The man at the ticket office, on the contrary, learns from experience
 to react more quickly and to less direct stimuli. This is what leads 
us to call him intelligent. It is this sort of thing which is the 
essence of memory. You see a certain person, and he makes a certain 
remark. The next time you see him you remember the remark. This is 
essentially analogous to the fact that when you see an object which 
looks hard, you expect a certain kind of tactile sensation if you 
touch it. It is this sort of thing that distinguishes an experience 
from a mere happening. The automatic machine has no experience; the 
man at the ticket office has experience. This means that a given 
stimulus produces always the same reaction in the machine, but 
different reactions in the man. You tell an anecdote, and your hearer
 replies: "You should have heard how I laughed the first time I heard
 the story." If, however, you had constructed an automatic machine 
that would laugh at a joke, it could be relied upon to laugh every 
time, however often it had heard the joke before. You may, perhaps, 
find this thought comforting if you are tempted to adopt a 
materialistic philosophy.
 出典:Bertrand Russell : Mind and Matter (1950?)
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/19501110_Mind-Matter080.HTM 

 <寸言>
 AIロボットを作り改良していけば、同じ刺激でも過去のデータやノウハウ等
の蓄積の変化(増減)によって反応が異なるものを作ることができるであろう。
しかし、完全に自分でデータを収集し、自分で判断するAIロボットを作って改
良していけば、将来、人間をほろぼしてしまうことも考えられる。そうならな
いようにプログラミングしておけば、AIロボットの発達も限界がでてくる。
 どちらの方向に進むか? 人間をほろぼすAIロボットを作る科学者が現れて
も不思議ではないが・・・?

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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