名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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精神と(物質としての)脳との関係

2018/01/27

 精神と脳との関係に関する)俗論(伝統的な一般的な見方)は,デカルトの時
代以後ほとんど変っていない(注: 'alter' はここでは「自動詞」)。物理
学の法則に従って働く脳(注:小脳も関係しているので「大脳」よりも「脳」
がよい?)がある。また,なんらかの固有の法則があるように思われるが,脳
における物理的条件に,多くの重要な点(面)で,従っている精神がある。デカ
ルト主義者たちは,精神と物質はそれぞれ固有の法則によって決定されるが,
その二つの系列は大変関連しているので,一方の側において一つの事象(出来
事)を与えると,他方におけるそれに対応した事象(出来事)が確実に随伴す
るという平行論を仮定(想定)した。簡単な類推をあげてみよう。一人の英国
人と一人のフランス人が,それぞれ英語とフランス語で,厳密に同じ早さで
「使徒信条(使徒信経)」(the Apostles' Creed)を朗唱すると仮定しよう。
あなたは,その時,彼らの一人が与えられた瞬間にその人の言語で言うことか
ら,他の人がその人の言語で言うことを推論できる。この2つの系列は,並行
して進行するが,どちらの系列も他の系列の原因となることはない(注:みす
ず書房版の中村訳ではこの一文はどういうわけか訳出されていない.。)現在
では(今や),この理論のまるまる全体を固執する人はほとんどいないであろ
う。精神と脳との間の相互作用の否定は常識に反しており(矛盾しており),
それを擁護するものは形而上学的議論しか存在しなかった。鼻をなぐられるよ
うな物理的刺激は,この場合には痛みという心的反応を惹き起こすだろうこと
をみんな知っている。またこのような痛みという心的反応が物理的運動 −た
とえばこぶしを握るとかいった− の原因になりうることをみな知っている。
 けれども,思想というよりは実践上の,相対立する二つの学派がある。一方
の学派,は物理的世界(物的宇宙)に関して完全な物理的決定論を理想として持
ち,一定の(定まった)物理的な出来事は常に一定の(定まった)心的な出来
事と同時に起るとを述べる辞書と結びついている。精神分析家(精神分析学者)
が最も影響を及ぼす役割を果たしているもう一方の学派では,純粋に心理学的
な法則を探求し,最初に物理学における因果的骨格を確立することを目指さな
い。
 両者の相違は,夢の解釈に示されている。もし仮にあなたが悪夢をみたとする
と,一方の学派(注:物理主義派)はあなたは海老サラダを食べすぎたためだ
と言うだろう。また,もう一方の学派は,あなたは無意識のうちに(意識下に
おいて)自分の母親との恋愛に陥っているためだ,というだろう。私はこのよ
うな烈しい論争のどちらの側にも加担しない。私自身の見解は,どちらの説明
の仕方も,その説明がうまく行く(成功する)場合に正当化される,ということ
であろう。実際のところ,私はこの問題全体を,論争そのものを消失させるや
り方で眺めたい。だが,このことを明らかにする前に,かなりの理論的解明が
必要である。

What one may call the conventional view has altered little since the 
days of the Cartesians. There is the brain, which acts according to 
the laws of physics; and there is the mind which, though it seems to 
have some laws of its own, is in many crucial ways subjected to 
physical conditions in the brain. The Cartesians supposed a 
parallelism according to which mind and brain were each determined by
 its own laws, but the two series were so related that, given an event
 in the one, it was sure to be accompanied by a corresponding event in
 the other. To take a simple analogy: suppose an Englishman and a 
Frenchman recite the Apostles' Creed, one in English, the other in 
French, at exactly the same speed, you can then, from what one of them
 is saying at a given moment in his language, infer what the other is 
saying in his. The two series run parallel, though neither causes the 
other. Few people would now adhere to this theory in its entirety. 
The denial of interaction between mind and brain contradicts common 
sense, and never had any but metaphysical arguments in its favor. We 
all know that a physical stimulus, such as being hit on the nose, may 
cause a mental reaction in this case of pain. And we all know that 
this mental reaction of pain may be the cause of a physical movement 
for example, of the fist. There are, however, two opposing schools, 
not so much of thought as of practice. One school has as its ideal a 
complete physical determinism as regards the material universe, 
combined with a dictionary stating that certain physical occurrences 
are invariably contemporary with certain mental occurrences. There is
 another school, of whom the psycho-analysts are the most influential
 part, which seeks purely psychological laws and does not aim at first
 establishing a causal skeleton in physics. The difference shows in 
the interpretation of dreams. If you have a nightmare, the one school
 will say that it is because you ate too much lobster salad, and the 
other that it is because you are unconsciously in love with your 
mother. Far be it from me to take sides in so bitter a debate; my own
 view would be that each type of explanation is justified where it 
succeeds. Indeed I should view the whole matter in a way which makes 
the controversy vanish, but before I can make this clear, there is 
need of a considerable amount of theoretical clarification. 
 出典:Bertrand Russell : Mind and Matter (1950?)
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/19501110_Mind-Matter020.HTM

 <寸言>
 精神(心)と物質(もの)とを別にして考える人(二元論の立場の人)がと
ても多い。理論的には心とものは分離できないと考えている人でさえ、実際上
は心を別個に思ったりする人が少なくない。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
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