名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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個人に価値がなければ,個人の集まりである集団にも価値はない

2018/01/20

 私はカーライルの英雄崇拝に賛成するなどと言おうとしているのではありま
せんし,ましてや,ニーチェによる英雄崇拝の誇張にはもっと賛成しかねます

 私は,一瞬たりとも,普通の人間が重要でないとか,人間集団の研究は注目
すべき個人の研究ほど追求する価値はないと示唆したいと望んではいません。
ただ,両者のバランスを保ちたいだけです。
 私は非凡な個人は歴史を形成するのに大きな役割をしてきたと信じています
。仮に,17世紀の百人の最も有能な科学者が全員幼児期に死んでいたら,あら
ゆる産業化された(工業化された)社会の普通の人間の生活は,現在と全く異
なっていたでしょう。もし,シェークスピアやミルトンが実在しなかったら,
他の誰かが彼らの(彼らと同等の)著作を創作しただろうとは思いません。そ
れにもかかわらず,これは,「科学的な」歴史家たちの中のいくらかが(世間
の)人たちに信じさせたいと望んでいるように思われることなのです。
 個人を強調する人(歴史家)に賛成して,もう一歩論をすすめましょう。
 人事(=人間社会の諸々の事柄)において最も知られる価値があり,最も称賛
すべきことは,社会よりもむしろ個人に関係したものである,と私は考えます
。(数人の集団があるとして)その集団に含まれる数人の個々人を越えた価値
をその人間集団(自体)が独立して持っている,とは私は信じません(注:個
人にまず価値がなければ,個人の集まりである集団にも価値はない,というこ
と/たとえば,国家があってこその個人ではなく,個人があってこその国家)
。歴史(書)が国家や,民族,教会,あるいは他の集団的実体を讃美するため
に個人の価値を無視することは危険であると考えます。しかし,政治(の問題)
に引き込まれないようにしたいので,このテーマにこれ以上深入りしないこと
にします。

I do not mean to subscribe to Carlyle's cult of heroes, still less to 
Nietzsche's exaggeration of it. I do not wish for one moment to 
suggest that the common man is unimportant, or that the study of 
masses of men is less worth pursuing than the study of notable 
individuals. I wish only to preserve a balance between the two. 
I believe that remarkable individuals have done a great deal to mold
 history. I think that, if the hundred ablest men of science of the
 seventeenth century had all died in infancy, the life of the 
common man in every industrial community would now be quite different
 from what it is. I do not think that if Shakespeare and Milton had
 not existed someone else would have composed their works. And yet 
this is the sort of thing that some "scientific" historians seem to 
wish one to believe. 
I will go a step farther in agreement with those who emphasize the 
individual. I think that what is most worthy to be known and admired
 in human affairs has to do with individuals rather than with 
communities. I do not believe in the independent value of a 
collection of human beings over and above the value contained in 
their several lives, and I think it is dangerous if history neglects
 individual value in order to glorify a state, a nation, a church, 
or any other such collective entity. But I will not pursue this theme
 farther for fear of being led into politics. 
 出典:Bertrand Russell : History as an art (1954)
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1057_HasA-160.HTM

 <寸言>
 人は英雄崇拝をしたり,その反対に集団(特に国家)を崇拝したりと、極端
に走りやすい。大切なのは個人と集団とをバランスをとること。個人に価値が
なければ,個人の集まりである集団(国家など)にも価値はない。支配者にな
ったり、権力者になったりすると、自分が属する(自分が支配あるいは権力を
持つ)集団を過大に重視しがちであるが、国家(社会全体)あっての個人とい
う思想には少数支配をカモフラージュしようとする心理が隠れている場合がほ
とんどである。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
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