名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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一般読者のための歴史(学)−自分の時代は特別な時代だと思いたがるが・・

2018/01/11

 今や,一般読者のために歴史(学)は何をすることができるか,また,一般
読者のために歴史(学)は何をなすべきか,という(私が話したい)主要テー
マにたどりつきました。私は,歴史(学)が歴史家に対してなすことを考えて
いるのではありません。教養ある精神の備品(備え付けるもの)の必須のものと
しての歴史を考えています。我々は,詩は詩人によってのみ読まれるべきもの
だとか,あるいは,音楽は作曲家によってのみ聴かれるべきものだとか,考え
ません。同様に,歴史(学)は歴史家にのみ知られるべきものではありません。

 しかし,あきらかに,歴史家でない人の精神生活に寄与する種類の歴史(書)
は,より専門的な著作(work)がもつ必要のないある種の性質をもっていなけ
ればなりませんし,逆に,学問的な論文に探し求めるようなある種のものを必
要としません。困難なことではありますが,私は個人的に歴史(書)を読むこ
とから得た(引き出した)と感ずることを話すように試みてみます。

 第一に個人の生命の新しい次元のようなもの,つまり,堅く束ねられた(束
縛された)別々の分離した実体ではなく,大河の中の一滴であるという感覚を
置くべきでしょう。その興味関心(の対象)が自分の生死の間の短い範囲(期
間)によって制限されている人は,自分の希望や欲求の範囲をほとんどいつも
狭める近視眼的な視力と視野の制限(限界)をもっています。

 また,個人にあてはまることは,社会(共同体)にもあてはまります。いま
だほとんど歴史をもっていない社会(共同体)は,薄っぺらさ(深みのなさ)
及び孤立(した社会)という奇異な印象を,ヨーロッパ人に与えます。彼らは
自分自身を長い時代(歴史)の継承者とは感じておらず,そのため彼らが後継
者に伝えようとするものは,生き生きとした過去をもっており遅々として苦難
に充ちた以前の時代の知識によって未来が明るく照し出されている人々にとっ
ては,無味乾燥かつ情緒的に乏しく思われます。

 歴史は,人事(人間社会の出来事)には終りがないことを気づかせます。そ
こには,静止した完成も,達成されるべき改善できない知恵もありません。い
かなる知恵に到達したとしても,可能な知恵に較べれば小さなものです。どの
ような信念を慈しんでも,最も重要と思ったものでさえも,永遠には持続しそ
うありません。それらの信念が永遠の真理(eternal verities)を具現化して
いると想像したとしても(if = even if),未来は我々をあざ笑いそうです。

 過剰な確信(を持つこと)は,現在の世界では最悪な事の多くのものの源泉
です。またそれは,歴史を考えることは,過去に賢人がいたからあるいはとい
うことだけあるいはそれが主要な理由だからではなく,知恵と考えられた多く
のものが愚かであることがわかった −我々が知恵だと思ったことはちっとも
よいものではないということを示唆してる− からです。

I come now to my main theme, which is what history can do and should 
do for the general reader. I am not thinking of what history does for 
historians; I am thinking of history as an essential part of the 
furniture of an educated mind. We do not think that poetry should be
 read only by poets, or that music should be heard only by composers.
 And, in like manner, history should not be known only to historians.
 But clearly the kind of history which is to contribute to the mental
 life of those who are not historians must have certain qualities that
 more professional work need not have, and, conversely, does not 
require certain things which one would look for in a learned 
monograph. I will try to speak (write) though I find it very difficult
what I feel that I personally have derived from the reading of 
history. I should put first and foremost something like a new 
dimension in the individual life, a sense of being a drop in a great
 river rather than a tightly bounded separate entity. The man whose 
interests are bounded by the short span between his birth and death
 has a myopic vision and a limitation of outlook which can hardly fail
 to narrow the scope of his hopes and desires. And what applies to an
 individual man, applies also to a community. Those communities that
 have as yet little history 1make upon a European a curious impression
 of thinness and isolation. They do not feel themselves the inheritors
 of the ages, and for that reason what they aim at transmitting to 
their successors seems jejune and emotionally poor to one in whom the
 past is vivid and the future is illuminated by knowledge of the slow
and painful achievements of former times. History makes one aware that
 there is no finality in human affairs; there is not a static 
perfection and an unimprovable wisdom to be achieved. Whatever wisdom
 we may have achieved is a small matter in comparison with what is 
possible. Whatever beliefs we may cherish, even those that we deem 
most important, are not likely to last forever; and, if we imagine 
that they embody eternal verities, the future is likely to make a mock
 of us. Cocksure certainty is the source of much that is worst in our
 present world, and it is something of which the contemplation of 
history ought to cure us, not only or chiefly because there were wise
 men in the past, but because so much that was thought wisdom turned 
out to be folly which suggests that much of our own supposed wisdom is
 no better. 
 出典:History as an art  (1954)
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1057_HasA-080.HTM

 <寸言>
 歴史を余りもっていない国(注:米国など)は,過去にとらわれない良さがある反面、歴史に学ぶことが少なく、自分たちの時代を特別な時代だと思いがちである。まったく同じ歴史を繰り返すことはないにしても、歴史上の同じ過ちは繰り返すべきではなく、歴史はやはり参考になるであろう。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
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