名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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「民主主義」の意味(4)− 少しうかつだったウィルソン(米国大統領)

2017/12/07

 「民主主義」の意味(続き)

 言葉から情緒を取り除き,明断な論理的意味でおき代える技術を経験するこ
とは,もし興奮させる宣伝の渦中においても平静を保ちたいと望むなら,その
人にとって大変役立つであろう。(注:keep one's head 平静を保つ/みすず
書房版の中村訳ではこの成句に気づかず「興奮した宣伝の渦中に★頭を突っ込
んでいたい★人には・・・」と誤訳している。)1917年に,ウィルソン(米国
大統領)は,あらゆる民族国家(nation)は自らの問題を処理する権利を持つと
いう民族自決の大原則を宜言したが,不幸にして彼は「民族国家(nation)」
という言葉の定義を添えることを忘れていた。アイルランドは一つの民族国家
であったか? 確かに、そうである。(それでは)北東アルスター(注:英国領
となっている北アイルランドのこと)は一つの民族国家であったか? プロテス
タントはそうだと肯定し,カトリック教徒はそうでないと否定し,そうして辞
書は黙った(何も記載されなかった)。今日までこの民族自決の問題は未決の
ままであり,この問題に関する論争は大英帝国に対する合衆国の政策に影響し
がちである。事実,ペトログラードでは,ケレンスキー時代に,ある一軒の家
が正当な権利をもって自由のために闘っている民族国家であると自ら宣言し,
ウィルソン大統領に独立した議会を与えることを訴えた。けれども,これはゆ
きすぎだと感じられた。ウィルソン大統領が論理的精確性において訓練されて
いたら,民族国家はある一定以上の人数の個人をもっていなければならないと
いう脚注を付け加えたことであろう。だが,これは彼の(民族自決の)原則を
恣意的なものとし,修辞的な効果を奪ったことであろう。

Experience in the technique of taking the emotion out of words and 
substituting a clear logical significance will stand a man in good 
stead if he wishes to keep his head amid the welter of excited 
propaganda. In 1917, Wilson proclaimed the great principle of self-
determination, according to which every nation had a right to direct 
its own affairs; but unfortunately he forgot to append the definition 
of the word "nation." Was Ireland a nation? Yes, certainly. Was 
northeast Ulster a nation? Protestants said yes, and Catholics said 
no, and the dictionary was silent. To this day this question remains 
undecided, and the controversies in regard to it are liable to 
influence the policy of the United States toward Great Britain. 
In Petrograd, as it then was, during the time of Kerensky, a certain
 single house proclaimed itself a nation rightly struggling to be 
free, and appealed to President Wilson to give it a separate 
Parliament. This, however, was felt to be going too far. If President
 Wilson had been trained in logical accuracy he would have appended a
 footnote saying that a nation must contain not less than some 
assigned number of individuals. This, however, would have made his
 principle arbitrary and would have robbed it of rhetorical force. 
 出典: A Plea for Clear Thinking(1947)
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0868_PfCT-050.HTM

 <寸言>
 言葉の意味をはっきりせずにわかったつもりで使うことはよくある。幼稚園
児から大統領まで。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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  • 名無しさん2017/12/07

    言葉の意味を常に吟味すべしとは、正に我々に欠けがちな問題意識であると、大いに感銘を受けました。