名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
読者と一緒に育てていきたいと思っています.


全て表示する >

禁欲的な哲学の信奉者たちの迫害性とねたみ心

2017/11/25

 二千年以上もの間,熱心な道徳主義者たちの間で,幸福を何か下品かつ価値
のないものとしてけなすのが慣例であった。何世紀もの間,ストア派哲学者た
ち(注:紀元前3世紀初めにゼノンによって創始された禁欲的な哲学の信奉者
たち)は,幸福を説いたエピクロスを,攻撃した。彼らはエピクロスの哲学は豚
の哲学だと言い,彼についてのスキャンダラスな嘘をでっちあげて,自分たち
のより優れた(と自称する)徳を表した。ストア派哲学者の一人のクレアンテ
スは,アリスタルコス(注:ギリシアの天文学者,地動説の先駆者)がコペルニ
クス的な天文学体系を擁護したかどで,迫害されることを望んだ。(また)ス
トア派の別の一人のマルクス・アウレリウス(注:Marcus Aurelius Antoninus
, 121-180:『自省録』で有名)は,キリスト教徒を迫害した。ストア派哲学
者で最も有名な一人であるセネカ(注:第5代ローマ皇帝ネロの幼少期の家庭
教師)は,(皇帝)ネロを唆してに忌まわしい行為をさせ,莫大な財産を貯めこ
み(蓄財をし),ボアデイケア(注:現在のイギリス,東ブリタンニア,ノー
フォーク地域を治めていたケルト言語圏域のケルト人イケニ族の女王)に法外
な利子で金を貸して,彼女を叛乱へと駆り立てた。
 古代のことはこれでやめておこう。

 二千年飛ばすと,ドイツを没落させ,ドイツ以外の世界を現在の危険な状態
に導いたところのひどい理論を発明したドイツの教授連中に行き着く。これら
の学者たちはみな,彼らのイギリスにおける模倣者であるカーライル(注:
Thomas Carlyle,1795-1881:19世紀イギリスの歴史家・評論家。日本人には
,『英雄崇拝論』や『衣装哲学』などで知られている。)がやったのと同じく
,幸福を軽蔑した。カーライルは,神に祝福されるために幸福を遠慮すべきだ
と,まったく倦むことなく我々英国民に言い続けた。彼は神の恵みの深さをか
なり奇妙な場所,即ち,クロムウェルによるアイルランド人大虐殺,フリード
リッヒ大王の血に餓えた裏切り行為,エアー知事(注:E. J. エア, 1815-
1901:イングランドの探検家。オーストラリア大陸を陸路踏破し,後年はジャ
マイカなどの植民地総督を務めた。)のジャマイカにおける残虐行為に見出し
た。

 事実,幸福に対する軽蔑は,通常,他人の幸福に対する軽蔑であり,人類に
対する憎悪のための優雅な偽装である。自分がより高貴であると考えるものの
ために自分自身の幸福を犠牲にする時,その人はもっと低い程度の高貴さを楽
しんでいる人たちを羨ましがりがちであり,この羨望(妬み)は,自らを聖者
(聖なる心を持っている)と思う人たちを,非常にしばしば,残忍かつ破壊的
にするであろう。我々の時代において,この心理の最も重要な例は,共産主義者
たちである(注:社会主義者でないことに注意)。

For over two thousand years it has been the custom among earnest 
moralists to decry happiness as something degraded and unworthy. 
The Stoics, for centuries, attacked Epicurus, who preached happiness;
 they said that his was a pig's philosophy, and showed their superior 
virtue by inventing scandalous lies about him. One of them, Cleanthes,
 wanted Aristarchus persecuted for advocating the Copernican system of
astronomy; another, Marcus Aurelius, persecuted the Christians; one of
 the most famous of them, Seneca, abetted Nero's abominations, amassed
 a vast fortune, and lent money to Boadicea at such an exorbitant rate
of interest that she was driven into rebellion. So much for antiquity.
 Skipping the next 2,000 years, we come to the German professors who 
invented the disastrous theories that led Germany to its downfall and
 the rest of the world to its present perilous state; all these 
learned men despised happiness, as did their British imitator, 
Carlyle, who is never weary of telling us that we ought to eschew 
happiness in favor of blessedness. He found blessedness in rather odd
places: Cromwell's Irish massacres, Frederick the Great's bloodthirsty
perfidy, and Governor Eyre's Jamaican brutality. In fact, contempt for
 happiness is usually contempt for other people's happiness, and is an
 elegant disguise for hatred of the human race. Even when a man 
genuinely sacrifices his own happiness in favor of something that he
thinks nobler, he is apt to remain envious of those who enjoy a lesser
 degree of nobility, and this envy will, all too often, make those who
 think themselves saints cruel and destructive. In our day the most 
important examples of this mentality are the Communists. 

 出典: The road to happiness (1952).
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1952_RtoH-010.HTM

 <寸言>
 現代日本でも、精神主義は国技の相撲や日本会議のような国粋主義的団体に
残っている。

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
Score!: 97 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。