名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ミルはマルクス&エンゲルスの『共産党宣言』を知らなかったらしい

2017/09/30

 言葉の歴史は,好奇心を誘う(ものである)。可能性のある例外としてマルク
スを除いて,ミルの時代においては,「共産主義」という言葉が労働者に彼ら
の暴力的反抗を防ぐのに必要な程度の生産物しか与えない(許さない)ような
少数独裁政治の軍事的,行政的,及び司法的な専制を意味するようになること
を(事前に)推測することは誰もできなかったであろう。マルクスは,ミル
と同時代人としては最も影響力があった人物であると今日の我々は理解できる
が,彼は,私の知り得たかぎりでは,ミルの著作ではまったく触れられておら
ず,ミルは彼のことをまったく知らなかった,ということは非常にありそうな
ことである。(マルクスとエンゲルスの)『共産党宣言』は,ミルの『政治経
済学(原理)』と同じ年に出版されたが,(英国の)文化を代表した人たちは
『共産党宣言』を知らなかった。現在全く未知の人物が,(今から)百年後に
我々の時代の最重要人物だったということがわかるようになるのだろうか。
 社会主義と共産主義に関する表明(発言)を別にすれば,ミルの『政治経済
学(原理)』は重要(な著作)ではない。『政治経済学(原理)』がよってた
つ主要な原理・原則は,彼の正統的な先駆者たちに由来するものにわずかの
(重要でない)修正をしたものである。彼が全体としては賛成していたリカー
ドの『価値論』は,ジュヴォンズによる限界効用概念(説)の導入によってと
って代わられ。そして,限界効用説は重要な理論的改善を示していた。『論理
学』においてそうであったように,彼は,理論から生ずる実際的弊害に気づか
なければ伝統的理論に黙従しやすい(人物であった)。

The history of words is curious. Nobody in Mill's time, with the 
possible exception of Marx, could have guessed that the word 
"Communism" would come to denote the military, administrative, and 
judicial tyranny of an oligarchy, permitting to the workers only so 
much of the produce of their labor as might be necessary to keep them
 from violent revolt. Marx, whom we can now see to have been the most
 influential of Mill's contemporaries, is, so far as I have been able
 to discover, not mentioned in any of Mill's writings, and it is quite
 probable that Mill never heard of him. The Communist Manifesto was 
published in the same year as Mill's Political Economy, but the men 
who represented culture did not know of it. I wonder what unknown 
person in the present day will prove, a hundred years hence, to have
 been the dominant figure of our time. 
Apart from the pronouncements on Socialism and Communism, Mill's 
Political Economy, is not important. Its main principles are derived
from his orthodox predecessors with only minor modifications. 
Ricardo's theory of value, with which on the whole he is in agreement,
 was superseded by Jevon's introduction of the concept of marginal 
utility, which represented an important theoretical improvement. As in
 his Logic, Mill is too ready to acquiesce in a traditional doctrine 
provided he is not aware of any practical evil resulting from it. 
 出典: John Stuart Mill,1955.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1097_JSM-100.HTM

 <寸言>
 著名な評論家や思想家が,自分と毛色(思想的傾向)の違う著名な評論家や
思想家の主要著作さえ読んでいないことはめずらしいことではない。

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創刊日:2014-12-19  
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