名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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ミルの知性と道徳観(倫理観)の由来

2017/09/21

 ジョン・スチュアート・ミル(注:John Stuart Mill, 1806-1873。英国の思
想家で,『ミル自伝』や『自由論』で有名。/因みに,ミルはラッセルの名付
け親)の19世紀の英国における重要性を評価することは簡単ではない。彼のな
しとげたことは,純粋な知的な長所よりも,道徳的な高尚さ(倫理的気高さ)
と人生の目的の正しい評価に,より多く依存していた。

 彼の政治や道徳的問題に関する世論形成における影響(力)は,とても大きな
ものであり,私の考えでは,まったく良いものであったと思う。他のヴィクト
リア時代の著名な人々と同様に,彼は知的卓越性ととても賞賛に値する人格
(品性)とを併せ持っていいた。彼の知的卓越性は彼の意見に重みを与え,今
振り返って思われるよりも,当時はより高く評価されていた。彼の倫理的ある
いは道徳的理論に反対する多様な現代的な傾向はあるが,この点においては,
私は,世界が当時よりも進歩したと感じることができない。

 知的面から言えば,彼は出生の日付において不運であった(注:生まれた時
代が悪かった)。先人(たち)はある方面での開拓者であったし,後進(たち)
は他の方面での開拓者であった。彼の意見の下部構造(基礎)は,青年時代に
支配的な性格の父親によって(ミルの)青年時代に形成されたままであり続け
たが,彼がこの下部構造(基礎)の上にたてた諸理論は,大部分,その基礎が
支えきれないものであった。摩天楼は岩盤の上に建てる必要があるので(地盤
の弱い)ロンドンに建てることはできない,といわれている(私は聞いている)。
ミルの学説は,粘土(層)の上に建てられた摩天棲のように基礎がいつも沈み
つつあったので,不安定なものであった。カーライルやテーラー夫人(注:ハリ
エット・テーラ夫人。テーラが死んだ後ミルと再婚したが数年で死亡)の刺激の
もとに(基礎の上に)つけ加えた新しい諸階層は,知的に,不安定であった。別
の言い方をすると,道徳と知性とは彼の思考のなかで絶えず闘っていて,道徳
はテーラー夫人において,また,知性は彼の父において,体現されていた。一
方が柔かすぎるとすれば,他方は過酷なものであった。そこから生じた合成物
は,実際面では情深いものであったが,理論面ではいくらか一貫性のないもの
であった。

It is not easy to assess the importance of John Stuart Mill in 
nineteenth-century England. What he achieved depended more upon his 
moral elevation and his just estimate of the ends of life than upon 
any purely intellectual merits. 

His influence in politics and in forming opinion on moral issues was 
very great and, to my mind, wholly good. Like other eminent Victorians
 he combined intellectual distinction with a very admirable character.
This intellectual distinction gave weight to his opinions, and was 
thought at the time to be greater than it appears in retrospect. There
 are various modern trends which are adverse also to his ethical and 
moral theories, but in these respects I cannot feel that the world has
 made any advance since his day. 

Intellectually, he was unfortunate in the date of his birth. His 
predecessors were pioneers in one direction and his successors in 
another. The substructure of his opinions remained always that which
 had been laid down for him in youth by the dominating personality of
 his father, but the theories which he built upon this substructure 
were very largely such as it could not support. Skyscrapers, I am 
told, cannot be built in London because they need to be founded on 
rock. Mill's doctrines, like a skyscraper founded on clay, were shaky
 because the foundations were continually sinking. The new stories, 
which he added under the inspiration of Carlyle and Mrs. Taylor, were
 intellectually insecure. To put the matter in another way: morals and
 intellect were perpetually at war in his thought, morals being 
incarnate in Mrs. Taylor and intellect in his father. If the one was
 too soft, the other was too harsh. The amalgam which resulted was 
practically beneficent, but theoretically somewhat incoherent. 
 出典: John Stuart Mill,1955.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1097_JSM-010.HTM

 <寸言>
 一昔前は,いや随分昔には,ミルは知性派の代表として教科書などにとりあ
げられていたが,今ではその名前を知らない人も少なくない。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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