名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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コンラッドにおける英国への愛とロシアへの憎悪

2017/09/12

 彼(ジョウゼフ・コンラッド)は,ある種の強い政治的感覚を持っていたけ
れども,政治体制(国家体制など)にはあまり興味を持っていなかった。政治
的感覚の中で最も強かったものは,英国への愛とロシアへの憎悪であり,その
両方とも,『(小説)秘密諜報員(The Secret Agent)』の中に表現されている。
ロシアへの憎悪は,ロシア皇帝支持者)及び革命派のどちらに対してもあった
が,『(小説)西欧(人)の視野のもとで(Under Western Eyes)』に力強く表わ
れている。彼のロシア嫌いはポーランドに伝統的なものであった。それは非常
に徹底していて,トルストイやドストエフスキーも認めないhほどであった。
ツルゲネーフは,彼の賛美する唯一のロシア人作家だ,とかつて私に語ってい
た。

 英国への愛とロシアへの憎悪を除けば,彼は政治にはあまり関心を持たなか
った。彼の関心を引いたものは,自然の冷淡さ(=人間に対する無関心)やし
ばしば人間の敵意に直面した,また,破滅へと導く善悪両様の情熱と心のなか
で闘っている,個々の人間の魂であった。孤独の悲劇は彼の思想や感情の大部
分を専有した。彼の(作風として)もっとも典型的な短編小説(物語)の一つ
は『台風(Typhoon)』である。この物語において,単純な精神の持ち主の船長
は,揺がない勇気と断乎たる決意を持って船を操縦し,困難を切り抜ける。嵐
が過ぎ去ると彼は妻に長い手紙を書いてこのことを知らせる。その手紙のなか
の,自分に関する部分の説明は,彼にとって,まったく単純である(そっけな
い記述ですませる)。彼はただ,だれもが当然期待するような,船長としての
義務を遂行したにすぎないのである。しかし,読者は,彼の話を通じて,彼が
勇気をもって行い耐えたあらゆることに気づく。この手紙は送られる前に船員
によってこっそり読まれるが,彼の妻は手紙の内容が退屈なので(ろくに)読
まずに棄ててしまい,(結局)他の誰にも読まれないことになる。

He was not much interested in political systems, though he had some 
strong political feelings. The strongest of these were love of England
and hatred of Russia, of which both are expressed in The Secret Agent:
and the hatred of Russia, both Czarist and revolutionary, is set forth
with great power in Under Western Eyes. His dislike of Russia was that
 which was traditional in Poland. It went so far that he would not 
allow merit to either Tolstoy or Dostoievsky. Turgeniev, he told me 
once, was the only Russian novelist he admired. 
Except for love of England and hatred of Russia, politics did not much
 concern him. What interested him was the individual human soul faced
 with the indifference of nature, and often with the hostility of man,
 and subject to inner struggles with passions both good and bad that 
led toward destruction. Tragedies of loneliness occupied a great part
 of his thought and feeling. One of his most typical stories is 
Typhoon. In this story the captain, who is a simple soul, pulls his 
ship through by unshakable courage and grim determination. When the 
storm is over, he writes a long letter to his wife telling about it. 
In his account his own part is, to him, perfectly simple. He has 
merely performed his captain's duty as, of course, anyone would 
expect. But the reader, through his narrative, becomes aware of all
 that he has done and dared and endured. The letter, before he sends
 it off, is read surreptitiously by his steward, but is never read by
 anyone else at all because his wife finds it boring and throws it 
away unread. 
 出典: Joseph Conrad, 1953.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1040_CONRAD-030.HTM

 <寸言>
 ポーランドは繰り返しロシアに侵略されており,コンラッドの憎悪は理解で
きる。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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