名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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H. G. ウェルズの「自己中」

2017/09/05

 我々(ラッセルとウェルズ)の間の政治上の共感の結果として,私はウェル
ズ夫妻を,私が当時住んでいた,オックスフォード近郊のバグリーウッドの自
宅(家)に招いた。しかしこの招待は、すべてがうまくいったわけではなかっ
た。ウェルズは,我々(夫婦)を前にして,ウェルズ夫人をロンドンなまりのこ
とで非難したが,その非難は(私にはそう思われたのだが)彼自身の方により
あてはまるものであった。もっと重大なことは,彼がその頃書いた『彗星の時
代』(注:In the Days of the Comet, 1906. ハレー彗星(1910年4月20日に
最接近)に着想を得た物語)という本のことから生じた問題であった。この本
のなかで,地球はある彗星の尾の中を通り抜けるが,その彗星はあらゆる人に
分別を与える(思慮深い状態にする)ガスを含んでいる。良識の勝利は二つの
やり方で示されている。(即ち,)激戦状態にあったイギリスとドイツとの戦争
は,相互の了解によって停止される。そうして,誰もが自由恋愛をし始める。
ウェルズは,平和主義のためではなく自由恋愛の擁護のために新聞で攻撃され
た。彼は,やや興奮ぎみに,自分は自由恋愛を擁護したのではなく,単に(彗星
の)大気中の新しい成分のありうる効果を,その効果の良し悪しには言及しない
で予言したにすぎない,と応えた。この言葉は私には不誠実に思われたので,
「なぜあなたは,最初(当初)自由恋愛を擁護しておきながらあとから自由恋
愛は(もとから)擁護していなかったと言ったのか」と尋ねた。彼は,「私は
利息で生計をたてられるほどまだ印税から貯蓄をしていないので,十分貯蓄が
できるまで自由恋愛を公けに擁護しようとは思わない,と答えた。当時私は,
おそらく不当に厳格だったのであろうが,彼のこの答えによって不愉快になっ
た。

As a result of the political sympathy between us, I invited Wells and
 Mrs. Wells to visit me at Bagley Wood, near Oxford, where I then 
lived. The visit was not altogether a success. Wells, in our presence,
 accused Mrs. Wells of a Cockney accent, an accusation which (so it 
seemed to me) could more justly be brought against him. More serious
 was a matter arising out of a book that he had lately written called
 In the Days of the Comet. In this book the earth passes through the
 tail of a comet which contains a gas that makes everybody sensible.
 The victory of good sense is shown in two ways: a war between England
 and Germany, which had been raging, is stopped by mutual consent; and
everybody takes to free love. Wells was assailed in the Press, not for
 his pacifism, but for his advocacy of free love. He replied somewhat
 heatedly that he had not advocated free love, but had merely 
prophesied possible effects of new ingredients in the atmosphere 
without saying whether he thought these effects good or bad. This 
seemed to me disingenuous, and I asked him, "Why did you first 
advocate free love and then say you hadn't?" He replied that he had
 not yet saved enough money out of royalties to be able to live on the
 interest, and that he did not propose to advocate free love publicly
 until he had done so. I was in those days perhaps unduly strict, and
 this answer displeased me. 
 出典: H. G. Wells, 1953.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1037_WELLS-030.HTM

 <寸言>
 打算的な恋愛はラッセルが忌み嫌うもの。ラッセルは貴族であり、お金には
こまらないから「自由」恋愛ができるのだろうとウェルズは思っていたかも知
れないが,それは邪推であろう。 

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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