名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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宗教に対する「知的な」異議

2017/07/25

 宗教に対する異議には,知的なものと道徳的なものとの二つの種類がある。
知的な異議は,いかなる宗教も真理であると想定する理由がまったくないとい
うことである。道徳的な異議は,宗教の教えは,今日よりもっと人間が残酷で
あった時代からのものであり,また,それゆえ,宗教の教えがなければその時
代の道徳的良心が脱皮・成長したであろう非人間的なもの(要素)を永続(化)
させる傾向があるということである。
 まず,知的な異議を取り上げよう。現代のような実際的な時代(実用主義的
な時代)においては,宗教の教えが真理であるかどうかはどうでもよいと考え
る一定の傾向がある。なぜなら,重要な問題は宗教が有益であるかどうか,で
あるからである。けれども,(真理か有益かのどちらの)一方の問題も,他方
の問題を抜きにしてはうまく解決できない。もし我々がキリスト教(が真理で
あること)を信ずる場合には,善とはなんであるかという我々の観念は,(も
し)我々がキリスト教を信じない場合とでは,異なるであろう。従って,キリ
スト教徒にとっては,,キリスト教の影響は善く見えるであろうが,キリスト
教を信じない者(unbeliever)には悪とみえるかもしれない(のである)。さら
に,裏付けとなる(支持する)証拠があるかないか関係なく,しかじかの命題
を信ずべきだという態度は,(不利になるような)証拠を嫌うようになり,自
分たちの偏見にそわないあらゆる事実に我々の心を閉ざさせる(ような)態度
である。

 ある種の一定の科学的な公平無私(の精神)は,非常に重要な性質であり,
それは,信ずることが自分の責務であると想像する(ような)人には,滅多に
存在しない性質である。それゆえ,我々は宗教が真理であるかどうかという問
題を調べることなしに,宗教が本当に善をなすかどうかを決定することはでき
ない。キリスト教徒,回教徒,ユダヤ人にとって,宗教の真理に関係ある最も
根本的な問題は神の存在である。宗教がまだ全勢時代であった頃は,「神」と
いう言葉は,完全に明確な意味を持っていた。しかし,合理主義者たちによる
猛攻撃の結果,それはしだいに色あせてしまい,ついには,人々が神を信じて
いると主張するときそれが何を意味しているのか知ることは困難な状態になっ
ている。議論のために,マシュー・アーノルドによる(神の)定義を取り上げ
てみよう。即ち(彼によれば)「(神とは)我々人間のものではない,正義を
促進する力(である)」。恐らく,我々はこの定義をもっと漠然とさせて,こ
の惑星(地球)の表面にいる生命の目的を離れて,宇宙に目的があるという証
拠があるかどうかについて,自問してみるのがよいだろう。

The objections to religion are of two sorts -- intellectual and moral.
 The intellectual objection is that there is no reason to suppose any
 religion true; the moral objection is that religious precepts date 
from a time when men were more cruel than they are and therefore tend
 to perpetuate inhumanities which the moral conscience of the age 
would otherwise outgrow.
To take the intellectual objection first: there is a certain tendency
 in our practical age to consider that it does not much matter whether
 religious teaching is true or not, since the important question is
 whether it is useful. One question cannot, however, well be decided
 without the other. If we believe the Christian religion, our notions
 of what is good will be different from what they will be if we do not
believe it. Therefore, to Christians, the effects of Christianity may
 seem good, while to unbelievers they may seem bad. Moreover, the 
attitude that one ought to believe such and such a proposition, i
ndependently of the question whether there is evidence in its favor,
 is an attitude which produces hostility to evidence and causes us to
 close our minds to every fact that does not suit our prejudices.
A certain kind of scientific candor is a very important quality, and 
it is one which can hardly exist in a man who imagines that there are
 things which it is his duty to believe. We cannot, therefore, really
 decide whether religion does good without investigating the question
 whether religion is true. To Christians, Mohammedans, and Jews the 
most fundamental question involved in the truth of religion is the 
existence of God. In the days when religion was still triumphant the
 word "God" had a perfectly definite meaning; but as a result of the
 onslaughts of the Rationalists the word has become paler and paler,
 until it is difficult to see what people mean when they assert that
 they believe in God. Let us take, for purposes of argument, Matthew
 Arnold's definition: "A power not ourselves that makes for 
righteousness." Perhaps we might make this even more vague and ask 
ourselves whether we have any evidence of purpose in this universe 
apart from the purposes of living beings on the surface of this 
planet.
 出典:Has Religion Made Useful Contributions to Civilization? 1930
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0466HRMUC-050.HTM

 <寸言>
 宗教を信じていると言っても,その内実は,宗教によって,また,人によっ
て様々。
 現代において,宗教といえば,通常、一神教(絶対神)であるが,一神教が
生まれる前は,ギリシアの神や日本の八百万の神のような多神教のほうが一般
的であったと思われる。
 特定の宗教について信じるにせよ,批判するにせよ,まず,宗教とは何か,
神(絶対神)とは何か,個別の宗教(キリスト教,回教,仏教など)の教義に
ついて基本的な理解をしなければならない。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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