名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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権力欲の様々な形態

2017/07/06

 しかし,権力欲には,もっと望ましいそれ以外の側面があります。知識の探
究は主として権力欲(注:影響力を持ちたいという欲求/ラッセルは「権力」
を広義にとっていることに注意)によって動機づけられる(actuated),と私
は考えます。また,科学技術における進歩も全てそうです。政治においても,
改革者もまた,おそらく専制君主(despot)とまったく同様に強い権力欲を持っ
ているでしょう(may have ...) 。動機としての権力欲をいちがいに非難する
(けなす)ことは完全な誤りでしょう。この動機(権力欲)によって有益な行動
に導かれるか,あるいは,有害な行動に導かれるかは,社会制度とその人の能
力にかかっています。もしその人の能力が理論的であるかまたは技術的であれ
ば,その人は知識かあるいは技術に貢献するでしょうし,概してその人の活動
は有益でしょう。その人が政治家であれば,権力欲によって動機づけられるで
しょうが,普通は,この動機は,何らかの理由で,その人が現状維持よりまし
だと考える,ある状況を実現したいという欲求と結びついているでしょう。
アルキビアデス(古代アテナイの政治家かつ軍人でソクラテスの弟子。民衆を
扇動することにすぐれていたが,アテナイの政敵により一時追放されたため敵
国スパルタに味方した。)のように,偉大な将軍は,どちらの陣営について戦
うかは気にしないでしょうが,たいていの将軍は自分の国のために戦うことを
好んできており,それゆえ,権力欲以外にも他の動機を持ってきたのです。政
治家は常に多数派のなかにいたいと思うので,しばしば党派を変える可能性が
ありますが,たいていの政治家はいずれかの党派(や政党)に好みを持ってお
り,この好みに(自らの)権力欲を従属させます。ほとんど純粋に近い権力欲
はいろいろなタイプの人々に見られます。その一つは冒険家タイプ(soldier 
of fortune 利益や冒険などのためならどこにでも行くタイプ)で,ナポレオン
が一番いい例です。ナポレオンは(生まれ故郷の)コルシカよりフランス(本土)
のほうがよいとは観念論的にはまったく思っていなかったけれども,もしかり
に彼がコルシカの皇帝になっていたとしたら,フランス人のふりをして彼が実
際になったほどの偉大な人物にはなれなかったでしょう。けれども,そのよう
な人たちは,虚栄心からも大きな満足も得ているので,まったく純粋な権力欲
の例であるとは言えません。最も純粋な型は「黒幕」(eminence grise : 
"grey eminence" のフランス語) と呼ばれるタイプ,即ち,公衆の面前には決
して現われない,王座の背後にいる権力(者)であり,「誰が糸を引いている
か,この傀儡(かいらい/操り人形)どもはほとんどわかっていない!」と思
ってほくそ笑んでいる(hugs itself)だけなのです。ホルスタイン男爵は,
1890年から1906年にかけて,ドイツ帝国の外交を支配していましたが,この権
力者タイプを完壁に例証しています。彼はスラム(貧民街)に住んでいました。
つまり,決して社会(表)に出ませんでした。彼はドイツ皇帝のしつこさに耐
えかねてただ一度だけ会ったことを例外として,(それ以外は)皇帝に会うこ
とを避けました。彼は宮廷の行事を,宮廷用の服を持っていないという理由で
,すべて辞退しました。彼は首相(カイゼル)と,首相に親密な人々をゆする
ことのできる秘密を握っていました。彼がゆすりのカを利用したのは,富や名
声や,その他すぐわかるような利益を得るためではなくて,ただ単に彼が好ん
だ外交政策を採用させるためでした。東洋では,そのような人物は宦官(かん
がん)のなかにまれではありませんでした.

But it (= the love of power) has other sides which are more desirable.
The pursuit of knowledge is, I think, mainly actuated by love of 
power. And so are all advances in scientific technique. In politics,
 also, a reformer may have just as strong a love of power as a despot.
It would be a complete mistake to decry love of power altogether as a
 motive. Whether you will be led by this motive to actions which are 
useful, or to actions which are pernicious, depends upon the social 
system, and upon your capacities. If your capacities are theoretical 
or technical, you will contribute to knowledge or technique, and, as a
rule, your activity will be useful. If you are a politician you may be
 actuated by love of power, but as a rule this motive will join itself
on to the desire to see some state of affairs realized which, for some
 reason, you prefer to the status quo. A great general may, like 
Alcibiades, be quite indifferent as to which side he fights on, but
most generals have preferred to fight for their own country, and have,
therefore, had other motives besides love of power. The politician may
 change sides so frequently as to find himself always in the majority,
but most politicians have a preference for one party to the other, and
 subordinate their love of power to this preference. Love of power as 
nearly pure as possible is to be seen in various different types of
 men. One type is the soldier of fortune, of whom Napoleon is the 
supreme example. Napoleon had, I think, no ideological preference for
 France over Corsica, but if he had become Emperor of Corsica he would
 not have been so great a man as he became by pretending to be a 
Frenchman. Such men, however, are not quite pure examples, since they
 also derive immense satisfaction from vanity. The purest type is that
of the eminence grise - the power behind the throne that never appears
in public, and merely hugs itself with the secret thought: "How little
 these puppets know who is pulling the strings." Baron Holstein, who 
controlled the foreign policy of the German Empire from 1890 to 1906,
 illustrates this type to perfection. He lived in a slum; he never 
appeared in society; he avoided meeting the Emperor, except on one 
single occasion when the Emperor's importunity could not be resisted;
 he refused all invitations to Court functions, on the ground that he
 possessed no court dress. He had acquired secrets which enabled him 
to blackmail the Chancellor and many of the Kaiser's intimates. He 
used the power of blackmail, not to acquire wealth, or fame, or any
 other obvious advantage, but merely to compel the adoption of the 
foreign policy he preferred. In the East, similar characters were not
 very uncommon among eunuchs.
 出典:Bertrand Russell: What Desires Are Politically Important? 1950
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0944WDPI-090.HTM

 <寸言>
  <寸言>
  権力欲は、政治的権力に対する欲求だけではなく,いろいろなタイプがあ
ることを知る必要がある。また、権力欲は悪いタイプばかりではないことに
注意。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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