名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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生活必需品に対する欲求,所有欲,競争心,虚栄心,権勢欲

2017/06/29

 政治的に重要な欲求は,(重要性)第一のグループと(重要性)第二のグループ
とに分けてもよいでしょう。第一のグループに生活必需品 −食糧,住居,衣
服(いわゆる,衣食住) − が含まれます(入ります)。これらのものが不
足すると,それらを確保しようと望んで、人間がなす努力にはまったく限りが
なく,あるいは,彼らが見せる暴力にも限りがありません。古代史の研究者に
よれば,アラビアにおいて隔てた時期に起きた4回の干ばつは,アラビアの住
民を近隣の地域に流失させ,それは,政治的,文化的,宗教的に,甚大な影響
を与えました。4回の干ばつの最後のもの(4回目の干ばつ)の時に,イスラ
ムの興隆がありました。ロシア南部に起こったゲルマン民族が次第に広がって
英国にいたり,そこからサン・フランシスコにまで達したのにも同様な(いく
つかの)動機がありました(注:言うまでもなく,英国からサン・フランシス
コに直接達したというのではなく、英国から米大陸の東海岸のプリマスに上陸
し、西部開拓によってサン・フランシスコまで達した、ということ)。疑いも
なく,食糧に対する欲求は過去においても,また現在においても,大きな政治
的出来事の主な原因の一つです。
 しかし,人間は一つの非常に重大な点において他の動物たちと異なっていま
すが,それは人間には,言わば,無限の欲求があり,それらの欲求は決して十
分には満足させることができず,天国でさえも人間をそわそわさせておく,と
いうことです。王蛇(注: boa constrictor 王蛇,大蛇)は十分食事をした
ら眠り,次の食事が必要になるまでは目を醒ましません。(しかし)人間は,大
部分の場合,そうではありません。少しばかりのなつめやしの実(注:'dates'
 この場合は 'date' は「日付」ではなく「ナツメヤシの実」であることに注
意)を食べてつつましく日々暮らしていたアラビア人が東口ーマ帝国の富を獲
得し,ほとんど信じられないくらい贅沢な宮殿に住んでいた時,それだからと
いって(もう満足したということで)不活発にはなることはありませんでした。
(そこでは)空腹はもはや動機にはなりえませんでした。なぜなら,(彼らア
ラビア人が)ちょっとうなずいて合図するだけ、,(アラビア人が征服した)
ギリシア人の奴隷がおいしい食物を運んできたからです。しかし,他の欲求が
彼ら(征服者であるアラビア人)を活発にさせました。その欲求には,特に四
種類があり,我々はそれらを,所有欲,競争心,虚栄心,権勢欲と名づけるこ
とができます。

The desires that are politically important may be divided into a 
primary and a secondary group. In the primary group come the 
necessities of life: food and shelter and clothing. When these things
 become very scarce, there is no limit to the efforts that men will 
make, or to the violence that they will display, in the hope of s
ecuring them. It is said by students of the earliest history that, on
 four separate occasions, drought in Arabia caused the population of 
that country to overflow into surrounding regions, with immense 
effects, political, cultural, and religious. The last of these four
 occasions was the rise of Islam. The gradual spread of Germanic 
tribes from southern Russia to England, and thence to San Francisco,
 had similar motives. Undoubtedly the desire for food has been, and 
still is, one of the main causes of great political events.
But man differs from other animals in one very important respect, and
 that is that he has some desires which are, so to speak, infinite, 
which can never be fully gratified, and which would keep him restless
 even in Paradise. The boa constrictor, when he has had an adequate
 meal, goes to sleep, and does not wake until he needs another meal. 
Human beings, for the most part, are not like this. When the Arabs, 
who had been used to living sparingly on a few dates, acquired the 
riches of the Eastern Roman Empire, and dwelt in palaces of almost 
unbelievable luxury, they did not, on that account, become inactive.
 Hunger could no longer be a motive, for Greek slaves supplied them 
with exquisite viands at the slightest nod. But other desires kept 
them active: four in particular, which we can label acquisitiveness, 
rivalry, vanity, and love of power.
 出典:Bertrand Russell: What Desires Are Politically Important? 1
950
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0944WDPI-030.HTM

 <寸言>
 世界史(歴史)は,単に権力闘争として見るのではなく,人間の諸欲求(生
活必需品に対する欲求,所有欲,競争心,虚栄心,権勢欲)との関係で見ると
、いろいろなことが解釈でき、味わい深くなる。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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