名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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政治的に重要な欲求 Politically important desires

2017/06/27

 今晩の私の講演(注:1950年度ノーベル文学賞受賞講演)にこの主題(注:
政治的に重要な欲求)を選んだのは,政治と政治理論についての大部分の最近
の(最近行なわれている)議論が心理学に十分な考慮を払っていないと考えて
いるからです。経済上の事実,人口統計,立憲組織(憲法に規定された組織?)
などについては,詳細に(こと細かに)論じられています。朝鮮戦争が始まっ
た時に,南朝鮮(韓国)の人口や北朝鮮(大韓民国)の人口がどれくらいであ
ったかを見つけ出すことにはまったく困難はありません。もし,適切な本を調
べてみるならば,(両国の)一人あたり平均収入がどれくらいであったか,ま
た,(両国の)それぞれの軍隊の規模はどれくらいであったか,ということは
確かめることができるでしょう。しかし,朝鮮人(a Korean)はどういった種類
の人間か,また,北朝鮮人(大韓民国の国民)と南朝鮮人(韓国人)との間に
は特に目立つ相違があるか,を知りたいと思う場合,また両者が人生に(out
 of life 人生から)何を望んでいるか,何が不満なのか,何を希望し、何を
恐ろしいと思うのか知りたいと思う場合,要するに,世間で言うように,何が
「彼らを動かすのか (注:makes them tick 時計を動かす)」は,いくら参
考書を調べても,(知ることができず)無駄に終わるでしょう(見つけ出せな
いでしょう)。また,そういうわけで,南朝鮮(注:韓国)は国際連合(UNO:
United Nations Organization)について熱心か,それともむしろ北朝鮮の従兄
弟たちとの統一(注:朝鮮半島統一)を望んでいるのか,あなたは言い当てる
ことはできません。また彼ら(韓国人)が聞いたこともない某政治家に対する
投票権のために土地改革を放棄してもよいと思っているのかどうか想像もつき
ません(注:韓国は民主主義陣営に入っているが,土地を持っていない無産階
級が多い。社会主義国のように土地の私有制を廃してほしいと思っているかど
うかわからない、と言った意味か?)。しばしば失望をもたらしているのは,
(各国の,朝鮮から離れた)遠い首都(注:複数形)に坐っている偉い人たち
がそのような問題を無視していること(怠慢)です。もし,政治が科学的であ
るべきであり,また出来事がいつも驚くべきものになるべきでないとしたら,
我々の政治的思考は人間活動の源泉をもっと深く見通すものでなければならな
いということが是非とも必要です。空腹がスローガン(標語)にどのような影
響を及ぼすか?(注:たとえば,戦時中のように「贅沢は敵だ!」と言っても
,お腹がすきすぎると・・・,といったニュアンスか?) そのようなスロー
ガン(標語)の効果が食事のカロリー数値とともにどのように変動するか? 
一方の人間が民主主義を与え,別の人間が一袋の穀物を提供する場合,飢饉の
どの段階で,投票権よりも穀物を選ぶのか? そのような問題はあまりにも考
慮されていません。けれども,当面は朝鮮の人たちのことはしばらく忘れて,
人類のことを考えてみましょう。

I have chosen this subject for my lecture tonight because I think that
 most current discussions of politics and political theory take 
insufficient account of psychology. Economic facts, population 
statistics, constitutional organization, and so on, are set forth 
minutely. There is no difficulty in finding out how many South Koreans
 and how many North Koreans there were when the Korean War began. 
If you will look into the right books you will be able to ascertain 
what was their average income per head, and what were the sizes of 
their respective armies. But if you want to know what sort of person 
a Korean is, and whether there is any appreciable difference between 
a North Korean and a South Korean; if you wish to know what they 
respectively want out of life, what are their discontents, what their
 hopes and what their fears; in a word, what it is that, as they say,
 "makes them tick", you will look through the reference books in vain.
 And so you cannot tell whether the South Koreans are enthusiastic 
about UNO, or would prefer union with their cousins in the North. Nor
 can you guess whether they are willing to forgo land reform for the 
privilege of voting for some politician they have never heard of. It 
is neglect of such questions by the eminent men who sit in remote 
capitals, that so frequently causes disappointment. If politics is to
 become scientific, and if the event is not to be constantly 
surprising, it is imperative that our political thinking should 
penetrate more deeply into the springs of human action. What is the
 influence of hunger upon slogans? How does their effectiveness 
fluctuate with the number of calories in your diet? If one man offers
 you democracy and another offers you a bag of grain, at what stage of
 starvation will you prefer the grain to the vote? Such questions are
 far too little considered. However, let us, for the present, forget 
the Koreans, and consider the human race.
 出典:Bertrand Russell: What Desires Are Politically Important? 1950
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0944WDPI-010.HTM

 <寸言>
 1950年度ノーベル文学賞受賞講演「政治的に重要な欲求 Politically important desires」の一節から。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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