名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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格差は世代を越えて引き継がれる−経済格差、教育格差、・・・

2017/05/29

 現在のところ,弁護士や医者のような職業につくことは,親にある程度のお
金がないかぎり,非常に困難である。なぜなら,それらの職業につくための訓
練には金がかかるし,また,(卒業しても)すぐ稼ぎが得られるわけではない
ないからである(注:日本では,自治医科大学なら,卒業後一定年限僻地医療
に従事すれば,学費が免除されるが,全体からすれば一部に過ぎない。)その
結果,選択(入学者選抜)の原則は,その仕事に対する適性ではなくて,社会
的かつ世襲的なものとなる(注:開業医の子弟は適性がなくても,また,能力
があまりなくても,収入の良さのために医者になる者が多い。世間ではそれを
揶揄し,よく「医者の馬鹿息子」と言う。)。医学を例にとってみよう。地域
社会が医療(地域医療)を効果的に行ないたいと思ったら(注:wished 仮定),
(地域社会は),医者としての仕事(医療行為)に対して熱意と適性を最も示し
た若者を,医学訓練のために選ぶであろう。現在のところ,この原則は部分的
に適用されて,医学的な訓練を受ける(経済的)余裕のある人たちの間から選ん
でいる(にすぎない)。しかし,将来最も優れた医者になれる人たちの多くは
,非常に貧しく,医者になるためのコースをとれないということが,大いにあ
りそうである(注:私立大学の医学部あるいは私立医科大学では,最低でも入
学後,大学に1,000万以上の寄付をすることが常識化・常態化している)。これ
は,嘆かわしい才能の浪費をもたらす。
 これとはいくらか異なった例をあげてみよう。英国は,人口密度が非常に高
い国であり,食糧の大部分を輸入している。種々の見地からすれば,特に戦時
における安全性という見地からすれば,もっと多くの食糧が国内で生産されれ
ば,それは一つの恩恵(利益)だろう。しかし,このごく限られた国土を効率
的に耕すための手段は,まるでとられていない。農民は,主として世襲によっ
て選ばれている。概して,(新たに)農民になるのは(やはり)農民の息子で
ある。それ以外は,農場を購入した人びとであり,農場を購入したということ
は,多少の資本を持っていることを意味するが,必ずしも何らかの農業の技術
があることは意味しない。デンマーク農法は,わが国(英国)よりも生産性が
高いことは知られているが,我が国の農民にその方法を教えるための処置はま
ったく取られていない。自動車を運転する者は免許証を持つことを要求される
が,それと同様に,小面積の農地よりも広い農地を耕すことを許される人の全
てに,科学的農業の免状(履修証明書)を持つことを要求しなければならない。
世襲の原則は,政治(の世界)においては廃止されているが,生活の多くの分野
にいまだ居残っている。この原則が存続しているところでは,以前公務におい
て,世襲の原則がもたらした(導いた)非能率を助長している。私たちは,こ
の原則を相互に関連する次の2つの原則で置き換えなければならない。即ち,
第一に,必要な技術を身につけているのでない限り,何びとも重要な仕事につ
くことは許されてはならない(注:部下がその技術をもっていればよいという
ことではいけない)。第二に,この技術は,親の財産(財力)とはまったく無
関係に,それを望む者のうちで最も有能な人びとに教えられるべきである。こ
の2つの原則が,効率をいちじるしく高めることは明らかである。
 大学教育は,それゆえ,特別な能力(を持っている者)のための特典とみな
されるべきであり,その能力はあっても金のない者は,在学中(の諸経費は)
公費でまかなわれるべきである。能力テストに合格しないものはいかなる者も
入学を許可すべきではなく,自分の時間を有効に使っていると大学当局を納得
させないなら(納得させることができないなら),いかなる者も大学にとどま
ることを許されるべきではない。大学は金持ちの青年たちが3、4年間,のん
びり遊んで暮らす暇な場所だという観念は,しだいに廃れつつある。しかし,
チャールズ二世の時代と同様,現在も,そのことについては,非良心的な時代
である。

At present, it is very difficult to enter upon such a profession as 
law or medicine unless one's parents have a certain amount of money, 
since the training is expensive and earnings do not begin at once. 
The consequence is that the principle of selection is social and 
hereditary, not fitness for the work. Take medicine as illustrative.
 A community which wished to have its doctoring done efficiently would
 select for medical training those young people who showed most 
keenness and aptitude for the work. At present this principle is 
applied partially, to select among those who can afford the training ;
 but it is quite probable that many of those who would make the best 
doctors are too poor to take the course. This involve a deplorable 
waste of talent. Let us take another example of a somewhat different
 kind. England is a very thickly populated country, which imports most
of its food. From a number of points of view, but especially from that
of safety in war, it would be a boon if more of our food were produced
 at home. Yet no measures are taken to see that our very limited area 
is efficiently cultivated. Farmers are selected mainly by heredity : 
as a rule, they are the sons of farmers. The others are men who have 
bought farms, which implies some capital but not necessarily any 
agricultural skill. It is known that Danish methods of agriculture are
more productive than ours, but no steps are taken to cause our farmers
 to know about them. We ought to insist that every person allowed to 
cultivate more than a small holding should have a diploma in 
scientific agriculture, just as we insist on a motorist having a 
licence. The hereditary principle has been abandoned in government, 
but it lingers in many other departments of life. Wherever it exists,
 it promotes the inefficiency to which it formerly led in public 
affairs. We must replace it by two correlative rules : first, that no
 one shall be allowed to undertake important work without having 
acquired the necessary skill; secondly, that this skill shall be 
taught to the ablest of those who desire it, quite independently of
 their parents' means. It is obvious that these two rules would 
enormously increase efficiency.
University education should therefore be regarded as a privilege for
 special ability, and those who possess the skill but no money 
should be maintained at the public expense during their course. 
No one should be admitted unless he satisfies the tests of ability,
 and no one should be allowed to remain unless he satisfies the 
authorities that he is using his time to advantage. The idea of the
 university as a place of leisure where rich young men loaf for three
 or four years is dying, but, like Charles II, it is an unconscionable
 time about it.
 出典:On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 3: 
Intellectual education, chap.18:  The University.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/OE18-050.HTM

 <寸言>
 政治の世界では世襲制が広がっている。世襲する地盤がない人間は,名前が
知られた人間(タレント,スポーツ選手ほか)でないと当選は難しく、国会議
員の質はどんどん劣化している。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
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