名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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低学年では,文学は演劇を通して親しむとよい

2017/05/12

 しかし,「慈悲の本質 "the quality of mercy"」(注:シェークスピア『ベ
ニスの商人』から)とか,「この世は全て舞台だ(芝居だ)"all the world's
 a stage"」」(注:シェークスピア『お気に召すまま』から)というような単
なる断片的な決まり文句(set pieces)を学ぶことは,大部分の子供たちには
退屈かつわざとらしく思われるので,当初の目的を達成できない。作品の暗記
を演技に結びつけるほうがずっと良い。なぜなら,(その場合)暗記は,あら
ゆる子供が好きなことをするための必要な手段となるからである。
 3歳以後の子供たちは,喜んでひとつの役を演じたがる。即ち,子供たちは
,その役を自発的にやっているのだが,もっと洗練されたやり方を教えられる
と大喜びする。私は(今でも),ブルータスとキャシアスとの争いのシーン
(場)を演じて,次のようにさけんで言ったとき,とても楽しかったことを,
覚えている。

 私はあんなローマ人になるくらいなら
 むしろ犬になって月に向かって吠えるほうがましだ

『ジュリアス・シーザー』とか,『ヴェニスの商人』とか,その他自分にあっ
た演劇(芝居)で役を演ずる子供(たち)は,自分の役(の部分)だけではな
く,他の大部分の役(の部分)も知るようになるだろう。そうした演劇(芝居)
は,彼らの頭(心)の中に長い間,すべて喜びとして,とどまるだろう。結局
,優れた文学は,(人に)喜びを与えるように意図されているのであり,もし
子供たちが文学から喜びを引き出せないのであれば,彼らは利益を得ることは
ほとんどないだろう。

 以上のような理由で,低学年においては,文学教育を演劇の役を覚えること
に限定したい。それ以外は,学校の図書室で入手できる,上手に書かれた物語
を自発的に読むということでよいだろう。
 今日の作家は,子供のために,おろかで感傷的な作品を書いている。それは
,子供たちをまじめに考えていない点で,彼らを侮辱するものである。『ロビ
ンソン・クルーソー』のいっしょうけんめいな真面目さと比較してみるとよい
。子供たちを取り扱うときにせよ,その他の場合にせよ,感傷的であることは
,劇的な共感を生み出すことに失敗する。子供っぽいことを魅力的だと思う子
供は,一人もいない。子供は,できるだけ早く,おとなのようにふるまえるよ
うになりたいと思っている。それゆえ,児童図書は,子供っぽいやりかたに対
して,決して,それを奨励する喜びを示すようなものであってはならない。
 (安藤訳では "a patronizeing pleasure" は「先輩ぶった喜び」となって
いる。しかし,ここは「(保護者やパトロンのように,)子供っぽさを「いい
ね!(かわいいね!)」と喜ぶようなことをしてはいけない」という意味だと
考えられる。従って,「先輩ぶった喜び」では意味がずれていると思われるが
いかかだろうか?)。
 今日の児童図書の多くに見られるわざとらしい愚かさは実に不愉快である。
そのような本は,子供をいらいらさせるか,あるいは,精神的に成長したいと
いう衝動を困惑させ混乱させるにちがいない。こういった理由で,最良の児童
図書とは,もともとはおとなのために書かれたものであるが,たまたま子供に
も向いているような本である。唯一の例外は,たとえば,リア(注: Edward 
Lear, 1812-1886, 英国の画家・詩人)やルイス・キャロルが書いた本のように
,子供のために書かれたもので,おとなが読んでも楽しい本である。

But mere learning of set pieces, such as "the quality of mercy" and 
"all the world's a stage", seems tedious and artificial to most 
children, and therefore fails of its purpose. It is much better that
 learning by heart should be associated with acting, because then it 
is a necessary means to something which every child loves. From the 
age of three onwards, children delight in acting a part ; they do it
 spontaneously, but are overjoyed when more elaborate ways of doing 
it are put in their way. I remember the exquisite amusement with which
 I acted the quarrel scene between Brutus and Cassius, and declaimed.

I had rather be a dog and bay the moon
Than such a Roman.

Children who take part in performing Julius Caesar or The Merchant of
 Venice, or any other suitable play, will not only know their own 
parts, but most of the other parts as well, The play will be in their
thoughts for a long time, and all by way of enjoyment. After all, good
literature is intended to give pleasure, and if children cannot be got
 to derive pleasure from it they are hardly likely to derive benefit 
either. For these reasons I should confine the teaching of literature,
 in early years, to the learning of parts for acting. The rest should
 consist of voluntary reading of well-written stories, obtainable in 
the school library. People nowadays write silly, sentimental stuff 
for children, which insults them by not taking them seriously. 
Contrast the intense seriousness of Robinson Crusoe. Sentimentality, 
in dealing with children and elsewhere, is a failure of dramatic
 sympathy. No child thinks it charming to be childish ; he wants, as
 soon as possible, to learn to behave like a grown-up person. 
Therefore a book for children ought never to display a patronizing 
pleasure in childish ways. The artificial silliness of many modern 
children's books is disgusting. It must either annoy a child, or 
puzzle and confuse his impulse towards mental grow. For this reason
, the best books for children are those that happen to suit them, 
though written for grown-up people. The only exceptions are books 
written for children, but delightful also to grown-up people, such 
as those of Lear and Lewis Carroll.
 出典: On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 2:
Education of character, chap. 15:  The school curriculum before 
fourteen 
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/OE15-080.HTM

 <寸言>
 日本では,低学年での学芸会でいやな役をやらされたいやな思い出をもって
いる人も少なくないかもしれないですが、題材がよくて、指導者がよければ,
お芝居(演劇)は、もともと子供が好きなものだろうと想われます。

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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