名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
読者と一緒に育てていきたいと思っています.


全て表示する >

文学を軽視させたり嫌いにさせたりする教え方

2017/05/11

 文学を教えることは,誤りを犯しやすい問題である。若者にとっても年配者
にとっても,詩人の生没年月日や作品名を覚えることなどを知ることで,文学
に関する情報を多く持っていても,まったく役に立たない。ハンドブックの中
に収められるような知識は,みな価値がない。大事なことは,一定の量の優れ
た文学作品に大いに親しむことであり,それは,(自分の)文章のスタイル
(文体)だけでなく,思想のスタイルまで影響されるような親しみ方でなくて
はならない。かつては,聖書がイギリスの子供たちにそうした影響を与え,確
かに散文のスタイルの良い影響(効果)をもたらした。だが,現代の子供で聖
書をよく知っているものはごくわずかである。
 文学のよい影響は,作品を暗記することなしには十分には得られない,と私
は思っている。(注:昔の日本で言えば、「素読」ですね。)作品を暗記する
ことは,かつては記憶力を訓練するものとして推奨されていたが,心理学者た
ちは −たとえなんらかの効果があるとしても− 暗記には記憶力の増進効果は
ほとんどないことを証明した。
(注:安藤氏は 'if any effect in this way' の部分を訳していないが、記
憶力増進以外には効用がないとは言っていない,というニュアンスがある。)
 現代の教育者たちは,暗記をますます重視しなくなってきている。しかし,
彼らは間違っていると思う。その理由は,暗記が記憶力を増進してくれる可能
性があるからではなく,話したり書いたりするときの言葉の美しさに影響を与
えるからである。言葉の美しさは,思想(考えたこと,思っていること)の自
発的な表現として,努力なしに出てくるのでなければならない。しかし,原始
的な美的衝動を失ってしまっている社会にあってそうするためには,優れた文
学に親しむことによってのみ生み出すことができると-私が信じている-思考習
慣を身につける(生み出す)必要がある。
(安藤訳では,「・・・。そうするためには,思想を表現する習慣を身につけ
ることが必要になる。この習慣は,優れた文学に親しむことによってのみ生み
出すことができる。」となっている。「思想を表現する習慣」という訳は不適
切ではないか? ここでは「考えたことを口にださないのではなく,できるだ
け表現するようにしよう」と言っているのではなく、暗記した文学表現などが
,適時思い浮かび、効果的に使用できる,というような思考習慣を身につける
のが良い,というニュアンスと思われるが,いかがであろうか?)私にとって
,暗記が重要と思われる理由は,ここにある。

The teaching of literature is a matter as to which it is easy to make
 mistakes. There is not the slightest use, either for young or old, in
 being well-informed about literature, knowing the dates of the poets,
 the names of their works, and so on. Everything that can be put into 
a handbook is worthless. What is valuable is great familiarity with 
certain examples of good literature--such familiarity as will 
influence the style, not only of writing, but of thought. In old days
 the Bible supplied this to English children, certainly with a 
beneficial effect upon prose style ; but few modern children know the
 Bible intimately. I think the good effect of literature cannot be 
fully obtained without learning by heart. This practice used to be 
advocated as a training for the memory, but psychologists have shown
 that it has little, if any effect in this way. Modern educationists 
give it less and less place. But I think they are mistaken, not 
because of any possible improvement of memory, but on account of the
 effect upon beauty of language in speech and writing. This should 
come without effort, as a spontaneous expression of thought ; but in
 order to do so, in a community which has lost the primitive aesthetic
 impulses, it is necessary to produce a habit of thought which 
I believe is only to be generated by intimate knowledge of good 
literature. That is why learning by heart seems to me important.
 出典: On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 2:
Education of character, chap. 15:  The school curriculum before 
fourteen 
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/OE15-070.HTM

 <寸言>
 暗記や素読の重要性に対する勘違い。
 小さいうちに親や教師や国家が正しいと考えていることを,子供の心や脳に
叩き込んでおこう,というのはよくない。暗記や素読の重要性は、美しい、聞
きやすい言葉(話し言葉と書き言葉)を話したり書いたり、また、自分の血肉
となった言葉でいろいろなことについて自然に思考をめぐらすという習慣を身
につける促進剤にすることにある。

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
Score!: 98 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。