名言

(日刊)ラッセルの言葉366_カレンダー版

英国の哲学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872- 1970)の名言・警句を毎朝お届けするメルマガです。
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子供の心と身体には大量の遊びが必要

2017/04/06

 これらの問題のほかに,検討すべ事柄がもう一つあり,もしかするとこのほ
うがより重要な問題かもしれない。子供の心と身体は,大量の遊びが必要であ
り,2,3歳を過ぎると,ほかの男の子や女の子といっしょでなければ,遊び
はほとんど満足すべきもとならない。遊びをしなければ,子供は,神経が張り
詰め,神経質になる。(即ち)生きる喜びを失い,不安が募ってくる。
 もちろん,ジョン・スチュアート・ミルが育てられたような,3歳でギリシ
ア語の学習をはじめ,普通の子供らしい楽しみは何も知らない,というふうな
やり方で育てることは可能である。単に知識を身につけるという観点だけから
すればその結果はよいかもしれないが,全体的見地から見れば,私はその結果
を賞賛することはできない。ミルが『自伝』の中で語っているところによると
,彼は思春期に,あらゆる音符の組み合せはいつの日にか(いつか必ず)使い
果たされ,そうして新しい作曲は不可能となるだろう,と考えて,自殺しかけ
たことがあった,とのことである。
 (訳注:岩波文庫の安藤訳も,みすず書房版の魚津訳も,角川文庫版の堀訳
も全て「あらゆる音符の組み合わせは一日で使い果たすことができるので,新
しい作曲が不可能になると考えて,自殺しかけたことがあった」と訳されてい
る。「あらゆる音符の組み合わせが一日で使い果たすことができる」なんてこ
とは,常識的に考えてありえないことであることから,誤訳だと思わなかった
のだろうか? また can be used up ではなく would be used up と書かれて
いることにも注意が必要だろう。結論を言うと one dey は前置詞がついてい
ないことから,副詞的用法であり「いつの日にか(いつか必ず)」ということ
であり,論理学者でもあったミルらしく,音符の組み合わせは膨大かもしれな
いが,その組み合わせは'有限'なものであるから,いずれ新しい曲など作れな
くなってしまうという「強迫観念」にかかってしまった,というのが正解であ
ろう。
 この種の強迫観念が神経衰弱の症状であることは,明らかである。後年彼は
,父親の哲学が間違っていたかもしれないということをあきらかにしそうな論
拠を思いつくたびに,まるでおびえた馬のように後ずさりし(注:shied away 
from / shay の過去形),それによって,彼の推論能力の価値を大いに減少さ
せてしまった。もっ普通の青年時代を過ごしていれば,おそらく,もっと柔軟
な知性の持ち主になっていたであろうし,彼の思索ももっと独創的なものにな
っていたことであろう。それはともかくとして,もっと人生を楽しむ能力を身
につけただろうことは確かであろう。
 私自身も,16歳までは − ミルの場合よりはいくらかひどいものではなかっ
たが− 個人教育によって育てられた 。しかし,それでも,若者の普通の喜び
に欠けるところが非常に多かった。ミルが言っているのとまったく同様に,私
も思春期に自殺したいという気持ちにかられた経験がある。私の場合は,力学
の法則が私の身体の運動を規制しており,意志は単なる幻影にすぎない(自分
にはまったく自由意志はない),と考えたからであった。同年輩の友達と付き
あうようになってから,私は,自分が堅苦しい気取り屋であることがわかった
。その後いつまでそうであったかは,私の言うべきことではない(注:なぜな
ら、この本を出した1926年でも,他人はラッセルのことを「堅苦しい奴だ」と
思うかもしれないから。ラッセルらしい物の言い方。因みに,魚津氏は「その
後いつまでそうであったか,私は知らない」と訳されている)。

Apart from these considerations there is another, perhaps even more 
important. The mind and body of a child demand a great deal of play, 
and after the first years play can hardly be satisfactory except with 
other boys and girls. Without play a child becomes strained and 
nervous ; it loses the joy of life, and develops anxieties. It is, of
 course, possible to bring up a child as John Stuart Mill was brought
 up, to begin Greek at the age of three, and never know any ordinary 
childish fun. From the mere standpoint of acquiring knowledge the 
results may be good, but taken all round I cannot admire them. Mill 
relates in his Autobiography that during adolescence he nearly 
committed suicide from the thought that all combinations of musical 
notes would one day be used up, and then new musical composition would
 become impossible. It is obvious that an obsession of this sort is a 
symptom of nervous exhaustion. In later life, whenever he came upon an
 argument tending to show that his father's philosophy might have been
 mistaken, he shied away from it like a frightened horse, thereby 
greatly diminishing the value of his reasoning powers. It seems 
probable that a more normal youth would have given him more 
intellectual resilience, and enabled him to be more original in his
 thinking. However that may be, it would certainly have given him more
 capacity for enjoying life. I was myself the product of a solitary 
education up to the age of sixteen--somewhat less fierce than Mill's,
 but still too destitute of the ordinary joys of youth. I experienced
in adolescence just the same tendency to suicide as Mill describes--in
 my case, because I thought the laws of dynamics regulated the 
movements of my body, making the will a mere delusion. When I began
 to associate with contemporaries I found myself an angular prig. How
 far I have remained so it is not for me to say.
 出典: On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 2:
       Education of character, chap. 10:  Importance of Other Children
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/OE10-060.HTM

 <寸言>
 上記の私の解釈を補強するよい説明がweb上にないかと,Googleで検索した
ところ、日米ハーフの Jun Seenesac 氏の「one day と someday の違いと使い
分け」という文章があった。「英語学習コラム」の記事のひとつですが,お勧
めです。
http://hapaeikaiwa.com/2014/07/09/%E3%80%8Cone-day%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8Csomeday%E3%80%8D%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%A8%E4%BD%BF%E3%81%84%E5%88%86%E3%81%91/ 

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創刊日:2014-12-19  
最終発行日:  
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