歴史・地理

差別と歴史上の人物

歴史の人物エッセイ集です。上から目線でなく、一般民衆の立場から、自由・平等を中心とする基本的人権の獲得を中心テーマにしました。歴史を見る視点を変えることによって、自由で心豊かに生き、差別意識から解放される人が一人でも増えることを願って書きました。

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第5章 戦国・安土桃山時代 6 足利義昭 

2017/10/07

6 足利義昭 (1537 〜 1597)





〜地位にこだわり大名に利用された飾り物の将軍〜





 「お手紙将軍」と呼ばれるほど、たくさんの手紙を書きました。

 その成果があったのでしょうか。




 義昭は室町幕府の第15代将軍に就任して、歴史にその名を残すことになりました。




 形ではありましたが、一時は全国の戦国大名たちに頭を下げさせる権威をもつほどになったのです。



 しかし、彼を最後に室町幕府は滅亡し、放浪の末、将軍の権力を取り戻せないまま一大名に転落して出家しました。




 この背景には、いったい何があるのでしょうか。




 1537年、義昭は12代将軍足利義晴の子として生まれました。

 父親が将軍だったので、血筋は名門です。




 足利氏は先祖が源義家ですので、そのまた先祖になると、平安時代の清和天皇までさかのぼります。



 この誇りが、いつまでも「地位」というものにこだわり続けた原因の一つと考えられます。




 しかし、時は戦国時代の真っただ中。

 幕府は応仁の乱以来、形骸化していました。




 さらに、同母兄に義輝がいました。

 義昭は、家督相続以外の男子として仏門に入ります。




 1542年、幼くして奈良の興福寺に入り、僧になりました。




 覚慶(かくけい)と名のり、20年以上にわたる長い僧侶の生活をします。

 普通ならば、この立場で一生を全うするはずでした。




 しかし、事件は突然起こります。




 1565年、兄の13代将軍足利義輝が、家臣の三好長慶(みよしながよし)と松永久秀(まつながひさひで)に暗殺されてしまったのです。




 これは、すでに「将軍の権威は地に落ちている」ことを改めて示すできごとですね。




 翌年、寺を抜け出した義昭は、越前の戦国大名、朝倉義景に身を寄せて次の将軍の座をねらいます。



 しかし、なかなか事はうまく運ばず、従弟の足利義栄(よしひで)に先を越されてしまいました。




 相当な心労だったことでしょう。




 自分は父も兄も将軍だったのです。

 次の将軍は自分が最もふさわしいと考え、プライドが許さなかったと思います。




 ようやく2年後になって、夢が実現しました。




 明智光秀によって織田信長に会うことができ、信長によって晴れて15代将軍に就任することができたのでした。




 しかし、熾烈な権力争いはここが始まりだったのです。

 義昭は、この時代においても将軍というものがよほど偉いと思っていたのでしょう。




 信長に管領になれとか、副将軍になれとか言っています。

 これは「正式な部下になれ」と言っているのと同じですね。




 天下布武をめざす信長は、当然そんな誘いには乗りません。

 どちらも断り、代わりに堺や大津を直轄地にすることを認めさせたのです。




 やがて、信長は義昭に敵対します。

 それでもまだ義昭は、「将軍の方が上だ」「将軍に従え」という思いは捨てきれません。




 武田信玄をはじめ、浅井、朝倉、毛利などの大名に次々に手紙を書き、信長と戦おうとしました。



 1573年、ついに義昭は京都を追放され、事実上、室町幕府は滅びています。




 それでもまだ将軍を辞めようとせず、毛利を頼って逃げ延びました。

 謀略を尽くして、足利再興をねらったのです。




 わずか5年ほどですが、天下人になったことの味が忘れられないのでしょうか。

 執拗に権力奪取をめざします。




 本能寺の変で、信長が倒れたのはこのころでした。

 広く知られている通り、信長の部下だった豊臣秀吉が天下人になります。




 秀吉は、義昭を山城の国の槇島というところに、一万石の大名として取りたてました。

 しかし、これは秀吉の作戦でしょう。




 結局、朝鮮侵略として有名な文禄の役に出陣させられ、その後再び出家して病死しました。

 またしても、利用されたのですね。




 信長の部下だった男に仕えるということも、義昭にとっては大きな心労だったことでしょう。




 何とか、度重なる心労から、自分自身の力で解放される手だてはなかったのでしょうか。








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創刊日:2014-01-12  
最終発行日:  
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