歴史・地理

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差別と歴史上の人物

歴史の人物エッセイ集です。上から目線でなく、一般民衆の立場から、自由・平等を中心とする基本的人権の獲得を中心テーマにしました。歴史を見る視点を変えることによって、自由で心豊かに生き、差別意識から解放される人が一人でも増えることを願って書きました。

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第5章 戦国・安土桃山時代 2 毛利隆元

2017/09/09

2 毛利隆元 (1523 〜 1563)






〜劣等感と重圧からの心労で自滅した強豪の長男〜






 強豪とは、中国地方最強の戦国大名、毛利元就(もとなり)のことです。

 隆元は長男であり、嫡男です。




 父元就の中国地方統一になくてはならない人物で、数々の武功をあげました。

 高い知識と教養を身につけ、優れた内政手腕も発揮しています。




 信義に厚い、謙虚実直な人物と評されています。

 しかし、その隆元はわずか41歳の生涯で、親よりも早くなくなってしまいました。




 この背景には、いったい何があるのでしょうか。




 隆元が生まれたころは、毛利の勢力はまだ小さくて目立ちませんでした。




 現在の山口県東部にあたる周防(すおう)の戦国大名、大内義隆に従属する一小領主にすぎなかったのです。




 だから、嫡男である隆元は、大内氏の本拠地山口へ人質として出されてしまいました。

 1537年のことです。




 10代の多感な時期をここで過ごしましたが、義隆からはたいそう気に入られました。

 元服のときも隆の文字もらっています。




 彼が隆元と名のったのはこのためです。

 親元を離れて不自由な面は多々あったでしょう。




 緊張も多かったのではないでしょうか。

 しかし、意外にも待遇が良く、必要以上に穏和な性格になっていきました。




 文芸や遊興を覚えたのも人質時代です。




 覇気の足りないお坊ちゃんという感じで、鷹狩りを止めて絵画や仏典写経に夢中になった時期もありました。




 幸いにも、大内義隆からの信頼が絶大になり、1540年には毛利の本拠である安芸(広島県)の吉田郡山城に戻ることが許されました。




 1546年、父元就から家督を譲られ、毛利家の当主になります。

 しかし、実権は元就が持ち続け、隆元は生涯自分の思う通りにはなりませんでした。




 毛利家繁栄のためなら二枚舌外交や暗殺など、権謀術数を平気でやっていた父からは「優柔不断で武将としての資質に欠ける長男」と見なされていました。




 隆元も正直すぎて、周囲からも心配されっぱなしでした。

 自分に自信がなく、平素から「私は無器量無才覚だ」と自嘲する始末です。




 彼の2人の弟たちは、政略結婚で他家へ行っていましたが、強烈な個性の持ち主でした。

 次男は吉川元春(きつかわもとはる)です。




 生涯不敗を誇る猛将で、兄をはるかに上回る武勇の持ち主でした。

 三男は小早川隆景(こばやかわたかかげ)といいます。




 毛利水軍を統率し、豊臣秀吉からも一目置かれた智将でした。

 天下をとる可能性まであると恐れられました。




 これに対し、隆元には確固たるアピールの要素が弱く、比較されて苦しんだのではないでしょうか。



 強烈な父や弟たちに囲まれて、結構つらい立場にあったと考えられますね。




 兄弟ゲンカはもちろん、一族を束ねる責任もあり、心労が重なっていったのではないでしょうか。



 隆景からは「方針が温かすぎる」と苦言を呈されています。




 それでも、毛利家の財政を統括すべく五奉行制度や官僚組織を構築し、各種家訓や法度も定めました。



 大内氏を滅ぼした重臣陶晴賢(すえはるかた)との厳島の戦いでは、元就に決戦を促し、ともに戦って勝利に貢献しています。




 九州の大友氏とも勇敢に戦って奮戦しています。




 元成が山陰の尼子氏と戦っているときにも、この隆元の北九州での奮戦が大きな役割を果たしたのです。




 だから、毛利氏は中国地方を統一できたのですね。




 1563年、隆元は九州戦線から山陰の戦線へ転進する途上、謎の腹痛に襲われて急死しました。




 原因ははっきりしていませんが、長年の慢性的な重責と心労が関係していたと考えるのが自然でしょう。




 自分は自分。




 親や兄弟と比較せず、自分の持ち味を誇りにしてのびのび生きれば、もっと違った人生を送ることができたのではないかと僕は考えています。








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