歴史・地理

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差別と歴史上の人物

歴史の人物エッセイ集です。上から目線でなく、一般民衆の立場から、自由・平等を中心とする基本的人権の獲得を中心テーマにしました。歴史を見る視点を変えることによって、自由で心豊かに生き、差別意識から解放される人が一人でも増えることを願って書きました。

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第3章 鎌倉時代 2 大 姫

2017/06/17

2 大 姫 (1178 〜 1197)






〜権力の犠牲になって若い命を失った将軍の娘〜






 父親は源頼朝で、母親は北条政子。

 どちらも歴史上の有名人ですね。




 流人の身だった頼朝が、後に源平の合戦を制し、奥州藤原氏も滅ぼして、征夷大将軍として鎌倉幕府を開いたことは周知の事実です。




 天下を取った権力者頼朝を父に持つ大姫は、さぞかし豊かな生活をしたかと思いきや、現実はその逆でした。




 父親に反抗し続け、わずか20歳の若さにして、衰弱しきってその一生を終えました。

 彼女の身に、いったい何があったのでしょうか。




 1178年、大姫が生まれた時、父親の頼朝はまだ流人の身で、平氏の命により北条時政が監視していました。




 不安定な身分だったのですね。




 その監視役の娘である政子が、敵で流人の頼朝と恋仲になり、未婚のまま出産したのです。

 事は穏やかなはずがありません。




 激怒した時政に、大姫の命は狙われてもおかしくない状況でした。




 しかし、断固として自分の意志を貫き通した政子の駆け落ちにより、この結婚が認められたのです。



 当時としては強い母親ですね。




 源平の戦いが始まると、父頼朝は源氏の棟梁としてリーダーシップを発揮し、次々に平氏を追い詰めていくことになります。




 そのような中で、大姫が6歳のときです。

 頼朝は同じ源氏の木曽義仲と対立しました。




 和睦のために義仲の嫡男、11歳の義高が人質として鎌倉に送られてきたのです。

 そして大姫との婚約が成立しました。




 今でいえば小学生ですね。

 政略結婚とはいえ、この2人はとても仲が良かったのです。





 大姫は義高を兄のように慕っていました。

 しかし、外から突然破局が訪れます。




 1184年、義仲は頼朝が送った軍によって都の郊外で敗死したのです。

 頼朝は将来の禍根を断つべく義高の命を狙う決心をすることになります。




 知らせを聞いた大姫は、明け方に義高を女房姿にさせ、侍女たちが囲んで邸内から出し、ひずめに綿を巻いた馬を用意して鎌倉を脱出させました。




 義高の身代わりまで用意して脱出の事実を隠そうとしましたが、夜になって露見してしまいました。




 激怒した頼朝は、40名ほどの追手を派遣し、5日後についに現在の埼玉県の入間川で追いつきました。




 義高は捕えられて河畔で惨殺され、12歳の幼い命を落としました。

 これを知った大姫は半狂乱になりました。




 食事ものどを通らず、ついに病床に伏してしまいました。




 あわてた両親は、義高のための追善供養や読経、各寺院への祈祷などあらゆる手を尽くしましたが、大姫の傷ついた心が解放されることはありませんでした。




 次に頼朝が打った手は、公家の一条高能(たかよし)との縁談です。

 しかし、これには大姫が激しく抵抗しました。




 「高能と結婚するくらいなら、海に身を投げて死にます」

 この一言に両親ともに大いに驚き、高能との結婚は白紙撤回になりました。




 その後、さらなる手が打たれます。

 大姫を後鳥羽天皇の妃にすべく、入内の準備のための上洛が行われました。




 見え見えですね。




 大姫の結婚話は本人のためではなく、頼朝の権力のためであるということです。

 入内を激しく拒否し続け、大姫の病気はますます重くなっていきました。




 望まない縁談の心労が繰り返されたのです。

 1197年、ついに大姫は度重なる心労による衰弱で息を引き取りました。




 すでに鎌倉幕府は成立していましたが、その権力強化のために犠牲になったのが娘の大姫だったのです。



 母親の政子は慕った相手が生きていたので、駆け落ちで意志を貫き通しました。




 娘の大姫は相手が殺されてしまっていたので、駆け落ちをすることもできなかったのです。




 娘を20歳の若さで死に至らしめたのは、他ならぬ両親だったのではないでしょうか。







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