歴史・地理

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差別と歴史上の人物

歴史の人物エッセイ集です。上から目線でなく、一般民衆の立場から、自由・平等を中心とする基本的人権の獲得を中心テーマにしました。歴史を見る視点を変えることによって、自由で心豊かに生き、差別意識から解放される人が一人でも増えることを願って書きました。

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第3章 中 世(8〜15世紀) 7 洪武帝

2015/12/26

7 洪武帝 (1328 〜 1398年)





〜権力と猜疑心から孤独死した明の太祖〜





 国民の大多数である農民の苦しみをよく理解し、多くの人々から支持されたにもかかわらず、最期は孤独死してしまった皇帝がいます。



 明(みん)の太祖、洪武帝ですね。



 彼は賢明な妻にも恵まれました。

 妻の馬皇后(まこうごう)は明を陰から支えた賢い女性として知られています。




 洪武帝自身も貧しい農民の出身でしたので、彼らの立場に立った行動をとることができました。

 それなのに、なぜ不幸な晩年を迎えることになってしまったのでしょうか。




 本名は朱重八(しゅじゅうはち)といいます。

 四男二女の末っ子でした。




 1344年、この貧しい農家をイナゴの害が襲いました。

 両親と兄弟の多くを失い、生き残ったのは次兄と重八の二人だけだったのです。




 兄の足手まといにならないように、寺に入り、雲水として諸国を行脚しました。

 このとき彼はまだ16歳でした。




 1351年、仏教の一派である白蓮(びゃくれん)教徒たちが中心になって、紅巾(こうきん)の乱がおこりました。




 元王朝に対する反乱で、仲間の目印に頭に赤い頭巾を巻いていました。




 後漢の黄巾の乱と似ていますね。

 朱重八は紅巾の乱に参加するために、郭子興(かくしこう)の軍に入ったのです。




 みるみる頭角を現し、1年とたたないうちに郭に認められ、その養女と結婚しました。

 これが後の馬皇后で、重八も名を朱元璋(しゅげんしょう)と改めました。




 1355年、郭子興が病死し、その後は軍の中心になって活動しました。



 他のライバルたちを次々に滅ぼし、ついに1368年、応天府(現在の南京)で皇帝として即位しました。



 ここに明の太祖、洪武帝が誕生したのでした。

 年齢は41歳です。




 その年、元の都である大都(現在の北京)を落とし、元を北方へ追いやったのです。

 中国全土の統一まではその後20年かかりましたが、久々の漢民族の王朝が成立しました。




 明は約300年続いた強大な王朝で、日本の室町時代から江戸時代の初期までに該当します。




 「農民たちの生活を安定させるのだ。

 きびしい取り立てをしてはいけない。




 農民の苦しみは私が一番よく知っているからな」




 国民の立場に立てば、何とありがたい皇帝でしょう。

 さらに洪武帝は、農民の道徳教育にも力を尽くしました。




 ところが、自分の直属の部下たちや、支配者階級の知識人たちには極めてきびしくあたりました。



 特に自分の権力を脅かす噂が立った者は、些細なことでも次々に処刑し、残酷な殺し方をしました。



 身体の一部を少しずつ時間をかけて切り刻んでいく凌遅(りょうち)の刑などは、受刑者が長く苦しむ残忍を極めるものとして知られています。




 建国の功臣である胡惟庸(こいよう)や藍玉(らんぎょく)をはじめとして、その犠牲者は実に10万人を超えました。




 まさに恐るべき殺人鬼ですね。




 妻と皇太子にも病気で先立たれています。

 愛妻の馬皇后は病に倒れたとき、名医が来ても診察を断り、薬も飲まずに死にました。




 これには理由があります。




 もし治らなければその医者が殺されるので、医者に診せなかったのです。

 日ごろより洪武帝の残虐さを諫(いさ)めていた皇后の最期の思いやりだったのでした。




 妻と皇太子の墓に参拝しては、一人で涙を流す日が多くなりました。




 「王朝の基礎はゆるぎないものになった。

  しかし・・・ああ・・・



 いつのまにかみんないなくなってしまった。

 今や私は一人ぼっちだ」




 猜疑心が招いた悲劇ですね。




 権力を握れば握るほど猜疑心に悩まされ、無実の人々もことごとく殺しつくしました。





 自らの差別意識に気づき、そこから解放されていれば、洪武帝の最期の到達点、「孤独死」は防げたのではないでしょうか。




 精神的な解放で、もっと豊かな人生を送る手立てがあったと僕は考えています。







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